大和力を、世界へ。コロナ禍のなかでアートにできること(2)
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神獣に代表される日本古来の文化をモチーフに、現代的な瑞々しい感性で作品を送り出し続ける、アーティストの小松美羽さん。「見えない世界、神々と人をつなぐことが私の役割。役割をまっとうするために、作品を見てもらいたい。牙がある画家になりたい」と話す小松さん。コロナ禍のただ中にある世界で、何を感じているのか。
会えなくても「思い合う」ことで乗り切る
――いま世界はコロナ禍のただなかにあります。小松さん自身の生活に影響は。
小松 長野にも仕事場があるんですが、これまでは長野と東京などの都会を行き来することで自然とバランスをとっていたところがあって、それができなくなったので最初のころは大変でした。あとは予定していたアートフェアが開催できなくなったり、作品を発表する場所や機会が、とくに海外の予定がほとんどなくなってしまって。ただ、銀座のホワイトストーンギャラリーで個展や広島のウッドワン美術館での展覧会「自然への祈り」など、そこに集中できるようになったのは運命だったのかなと思います。多くの方にきていただきましたから。
――小松さんご自身が、人との出会いを非常に大切にされているなか、社会的にはコロナ感染を防ぐために接触を忌避するような風潮が蔓延しています。
小松 人と触れ合うことができなくなっ多分、逆に人同士が「思い合える」ようになったと思います。昨年、3度もイタリアに行かせていただいたのですが、今回のコロナ禍ではイタリアの医療崩壊のニュースとかが入ってきて、すごく心配していたんです。でもそんななかでもイタリアのほうがコロナに向き合いながら、私が描いた作品や「24時間テレビ」でのライブペイントを見ていただいたりして、自分の国だけにフォーカスするんじゃなくて、同じ地球の同じ人間なんだって共感していただいて。
あとはアート熱のすごく高い台湾の方がオンラインインタビューなどで取材してくださったり、数年間かけて出会った多くの方とつながっていることを実感することができました。コロナ禍のなかでもお互いのことを感じ取りながら、愛情を感じることができるって、改めて人間ってすごいなって。肉体的に触れ合うことができないぶん、思い合う力が逆に強くなっている。
――外出自粛などが要請された期間もありました。表現活動に影響や変化は。
小松 これまでは未来に向かっていく感じでしたが、培ってきた多くの経験や見聞きした風景、臭いなどを思い起こして記憶のレイヤー(階層)に抽象的に向かっていく、っていうのは今回のステイホームで起こった現象ですね。
ライブイベントもかなり影響があって、「24時間テレビ」は国技館で無観客でやりましたし、広島でのライブペイントは関係者だけでやって映像を流すだけでした。――今回のコロナ禍をテーマにした作品などは。
小松 人間って戦争の時代でも生活していましたよね。日本はいま平和かもしれないですけど、兵役がある国もたくさんあります。戦争が起きたり貧困に多くの人があえぐなか、それでも芸術がなくならないのは、芸術が人の心や魂の「薬」だからだと思うので、経験を創作活動に落とし込むことが大事だと思っています。こういった時代だからこそ精力的に絵を描くべきで、いつ海外に行けるようになるかわかりませんが、アートが必要とされるときが必ず来ます。そういうときに発表できるようにしていたいです。
(つづく)
<PROFILE>
小松 美羽(こまつ・みわ)
現代アーティスト。1984年長野県坂城町生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。20歳のときに制作した銅版画「四十九日」が好評を博してプロ活動へ。2014年、出雲大社へ絵画「新・風土記」を奉納。15年、有田焼の狛犬「天地の守護獣」が大英博物館日本館に永久展示される。16年から「The Origin of Life」が4 World Trade Center(ニューヨーク)に常設展示。19年、VR作品「INORI~祈祷」が第76回ヴェネチア国際映画祭VR部門にノミネート。20年、日本テレビ系「24時間テレビ」の〈チャリTシャツ〉をデザイン。著書に『世界のなかで自分の役割を見つけること』(ダイヤモンド社刊)など。
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