2024年11月24日( 日 )

重要な岐路を迎える自治体のRDF発電~家庭ごみ処理施設、廃棄物発電はどうなる?(前)

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 家庭から出るごみの有効活用を目的に生まれた廃棄物発電。1990年代に「ダイオキシン問題」で焼却炉の排出基準が大幅に強化され、ごみ処理の広域化からRDF(ごみ固形燃料)発電所がつくられた。RDF発電はごみの長距離輸送を容易にし、安定発電できるメリットがあり、石川、・広島・福岡で稼働しているが、一方で重要な岐路を迎えている。

ダイオキシン排出基準の強化でごみ処理が広域化

福山リサイクル発電(株)
代表取締役社長の佐藤吉秀氏

 1990年代に、ごみ焼却炉から出るダイオキシンが大きな社会問題となり、ダイオキシン排出基準が強化された。そのため、人口の少ない市町村の小規模なごみ焼却炉は基準をクリアできず、多くの自治体は「ごみ処理ができない」という事態に直面した。

 そこで、ごみ処理の広域化への対応に向けて、家庭ごみを固形にして効率的に運搬できるRDFを用いて、ダイオキシン排出量を低減できるように建設されたのがRDF発電所だ。RDF発電では、RDFを燃やして発電した電気の売電収入で、参画市町が負担するごみ処理費を減らすことができる。

 ごみ処理施設建設の主要シェアをもつJFEエンジニアリング(株)が設計・建設・運転保守管理を行い、経営参画する広島県のRDF発電所を運用する福山リサイクル発電(株)。同社は、福山市、府中市、神石高原町、庄原市、尾道市、世羅町、三原市、廿日市市、大竹市が参画して2000年5月に建設され、04年4月に運転を開始した。資本金は16億円。JFEエンジニアリング(株)、広島県、(一財)広島県環境保全公社と福山市など9市町が出資している。1日当たり314tのRDFを処理し、最大2万1,600kWの電力を発電する。この電力はJFEエンジニアリング、福山市、広島銀行が出資して設立した福山未来エナジー(株)が購入し、福山市の施設に供給している。

 福山リサイクル発電事業の計画は、福山市がごみ焼却工場を更新するときに、広島県が話をもちかけたことがきっかけとなった。福山リサイクル発電(株)代表取締役社長の佐藤吉秀氏は、「福山市は人口が多く、市単独でダイオキシン排出基準をクリアできるごみ焼却炉を建設することも可能であったが、広島県の要請もありRDF発電事業に参画した」と話す。

RDFを利用した広域処理システム

広島県下4市町がRDF製造 

 福山リサイクル発電所に現在RDFを搬入しているのは、広島県下4市町(図の緑色の地域)だ。18年度まで搬入していた5市町(図の黄緑色の地域)は、19年度から既設のごみ処理施設またはごみ処理施設を新設して処理を行っている。

 自治体が集めた家庭ごみは、「福山市ごみ固形燃料工場」などの各自治体の施設でRDFとして製造される。福山リサイクル発電所では、RDFを溶融してできた廃熱ガスを利用してボイラーで約450℃の高温高圧蒸気を発生させてタービンを回し、発電している。

 福山リサイクル発電事業では、RDF運搬費について統一仕様書を作成して入札することでコストダウンを図る。施設計画時の評価では、参画市町の施設建設費、維持管理費などを年間で計画比1億7,500億円低減できたと報告されている。

 また、廃棄物リサイクル事業として、コークス(石炭)や石灰石とともにRDFを高温で 溶融する「ガス化溶融炉」を用いて、溶融残渣である鉱物成分のスラグや合金のメタルを取り出している。スラグは福山市の上下水道工事で配管のクッション材として利用され、メタルは「くず鉄」として利用される。佐藤氏は「スラグやメタルは生産量が制限されるため、販路の開拓が厳しい。リサイクルで収益を確保することよりも、資源を有効利用し廃棄物を出さないことが目的」と説明する。

 一般廃棄物発電は、バイオマス成分が含まれるため、FIT(固定価格買取制度)が適用される期間は高い料金で電力の買い取りが行われ、ごみ処理費用を軽減できるが、FIT期間の終了後は市場価格での買い取りとなり、自治体はごみ処理費用の負担が必要となっている。

参画市町とRDF処理体系

(つづく)

【石井 ゆかり】

(後)

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