コロナ禍で進む企業の選別 顧客とより多く話し、関係を強固に(前)
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税理士法人アップパートナーズ
代表社員税理士 菅 拓摩 氏九州最大規模の税理士事務所である税理士法人アップパートナーズ。新型コロナウイルス感染拡大のなかでも顧客の倒産を出さず、経営状態を守るとともに、新規顧問先を増やしている。これらを実現している背景には、同社が昨年の早い時期から顧客に融資を受けるように勧めてきたこと、税務にとどまらず、経営コンサルティングなどのサービスもワンストップで提供してきたことがある。
(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)
先々の動向を睨んで対応
――2020年は新型コロナウイルスの感染拡大という特殊な1年でした。
菅拓摩氏(以下、菅) リーマン・ショックのときも同様でしたが、税理士業界では影響が間接的に出てきます。21年は減益になる可能性を想定し、早くから予測を立て、種まきをしました。顧客を増やすこと、新しい事業を始めることが必要と考え、実行した1年でした。
3月には「これはとんでもないことになる」と感じ始めて、顧客には「借りられるだけ借りましょう」とアドバイスしました。まずプロパー融資、そして半民間の商工中金のような政府系金融、コロナ対策融資です。顧客には3階建て、4階建てで行きましょうと話をして、総額で300億円近くの融資のお手伝いをしました。1件あたり平均5,000万円を超えています。
当社の主な顧客が医療機関ということもあり、幸いなことに事業停止に陥った顧客は1つもありません。うまくしのぐことができたと思っていますが、問題は今年です。損益を実際に回復させていくのは本当に難しい作業であり、どこまで達成できるのか考えて行わねばなりません。
――日本は数回金融危機を経験し、一定程度の経験値が溜まっていたため、政府は金融面のサポートについて比較的上手に行ったと思います。
菅 政府は非常に早く行動しており、頑張ったと評価しています。助成金については多くの不備が見られたものの、従来にないスピードで次々と政策を実施しました。税理士業界では、たとえば雇用調整助成金などの計算の仕方について、このように変わってほしいというイメージをもっていたところ、実際に概ねその方向に変わっています。
――現在の政府のスタンスは、金融に目詰まりを起こさないように、緩和してお金を市中に出すというもので、今後コロナが落ち着いていくと実情を回復させる必要があります。
菅 今後、本当の意味で企業の選別が行われていくのだと思います。コロナ前まではインバウンド客が多くきていて、ある意味で昇りのエスカレーターに乗っているような雰囲気が見られました。それがいったんなくなると、本当に必要な企業とは何なのかが問われていきます。飲食店を例にとると、三ツ星を取るような店はかたちがしっかり出来上がっており、現在もほぼ満席状態です。一方、海外顧客に頼っていた店は非常に苦しんでいます。
政府はこのような選別がある程度進むのを予期していると見て取れます。というのは、企業を救う意思があれば、劣後債をもっと強力に推し進めるはずですが、実際のところ中小企業に対して劣後債の利用を明確に打ち出している政府系金融は国民生活金融公庫ぐらいで、利率も高いです。これらを総合すると、融資を返済できない企業には退場してもらうというのが政府の現在のメッセージなのでしょう。
デジタル化の進展には経営者の想いが大事
――コロナ禍で生産性の問題がよりクローズアップされており、デジタル化を進めないと生き残れないという雰囲気があると思いますが、中小企業のデジタル化の進展はいかがですか。
菅 進んでいません。経理部門を例にとると、統一した規格のようなものが今なお存在しません。たとえば領収書1つを取っても、サイズがばらばらで、対応するスキャナーがありません。このような些末なところでデータ化が非常に遅れています。進展といえば、消費税についてようやくインボイスという統一規格が実施されることになったくらいでしょうか。
また、税務行政も遅れています。政府はつい先日まで紙ベースでの保存を強く打ち出していました。データベース化を進めるかと思えば、タイムスタンプを押すなどのいろいろな要件を求めていて、かえって手間がかかるものとなっています。このような要件を求められては、中小企業が乗り越えるのは大変です。
日本では、企業は政府からやれと言われたらやります。電子申告などがよい例であり、法人税についてはほとんどの企業が採用しています。日本人はきちんとやる人たちであり、良くも悪くも政府が主導して良い制度を整えれば、デジタル化は一気に進んでいくでしょう。
(つづく)
【文・構成:茅野 雅弘】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:菅 拓摩
所在地:福岡市博多区博多駅東2-6-1
設 立:2008年9月
グループ資本金:1億5,600万円
売上高:(20/12)約25億円
<プロフィール>
菅 拓摩(すが・たくま)
1973年4月生まれ、福岡県出身。立命館大学大学院経営学研究科修了。父の事務所を継承した後、2008年に内田延佳税理士事務所と経営統合し、税理士法人アップパートナーズを設立。同事務所代表社員税理士に就任。法人名
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