【企業研究】オリックスが得意のM&Aで誤算~水虫薬に睡眠導入剤成分混入の「小林化工」を連結子会社にしたばかりだった!(3)
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ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの小林化工(株)が製造した水虫薬に睡眠導入剤成分が混入し、健康被害が相次いだ。同社の筆頭株主は、総合リース大手のオリックス(株)。2020年1月、小林化工の株式の過半数を取得し、連結子会社化して取締役2人と監査役を送り込んだばかりだった。得意のM&A(合併・買収)でつまずいた。
自己資本比率88.8%。財務内容抜群の優良企業
後発医薬品業界には、追い風が吹いた。医療費抑制の一環として、政府は2002年から後発薬の普及目標を段階的に引き上げていったのだ。これを受けて、医療現場では先発薬から後発薬への置き換えが進んだ。02年から現在までに後発薬の数量割合は2倍に急拡大した。
政府が主導した後発薬使用促進策の流れに乗り、小林化工は急成長を遂げる。「02年当時の売上高は30億円程度でしたが、継続した政府の後押しもあって、10倍以上の370億円に伸ばすことができました」(小林広幸社長)と語る。売上増で得た収益は工場での増産体制の整備に投資。それが増収につながる好循環をもたらした。
20年3月期の決算公告は、貸借対照表のみ開示されている。純利益57億円、利益剰余金715億円。無借金で、自己資本比率は88.8%。財務内容抜群の超優良企業である。
政府は後発薬の使用割合を20年までに80%に引き上げる目標を設定。20年9月時点での後発薬の数量シェアは78.3%とほぼ目標に達した。後発薬市場は成熟期を迎え、成長に陰りが出はじめた。
さらなる成長を目指し、オリックスの傘下に入る
国内が頭打ちになれば外に目が向き、後発薬企業の海外展開が本格化した。日医工、沢井製薬、東和薬品の国内専業大手は、欧米の後発薬企業を買収し、欧州や米国の市場に進出した。小林化工が選択したのは、オリックスと組んで海外事業を展開することだった。
前出の「JAPIC NEWS」のインタビューに戻る。小林社長は「日本の医薬品市場は、不透明な激動の時代に入ってきていると感じている」「単独で事業を展開できる時代ではなくなってきているという感覚がある」として、オリックスの傘下に入った理由を語っている。
新型コロナウイルス感染症もそうですが、リスクは読み切れません。ただ、リスクが顕在化したときに、より強力なしっかりしたバックボーンがあれば、社員の安心感につながります。一時は上場も検討しましたが、オリックスがパートナーとあれば、強固な信頼関係のもとでサポートを受けつつ、さまざまな課題を解決していけると判断し、資本業務提携のスキームを組みました。
オリックスからは過半の出資を受け入れていますが、相手がファンド系の企業や外資系企業だと、絶対にそのような選択はしませんでした。同業他社からも声がかかりましたが、今後の当社の発展には、オリックスの信用力やネットワークが必要だと判断しました。
このインタビューの直後に、予期せぬリスクが顕在化した。水虫などの皮膚病用の飲み薬に睡眠導入剤の成分が混入し、多数の健康被害が生じた。会社の存亡に関わる危機である。
(つづく)
【森村 和男】
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