2024年11月22日( 金 )

【企業研究】オリックスが得意のM&Aで誤算~水虫薬に睡眠導入剤成分混入の「小林化工」を連結子会社にしたばかりだった!(4)

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 ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの小林化工(株)が製造した水虫薬に睡眠導入剤成分が混入し、健康被害が相次いだ。同社の筆頭株主は、総合リース大手のオリックス(株)。2020年1月、小林化工の株式の過半数を取得し、連結子会社化して取締役2人と監査役を送り込んだばかりだった。得意のM&A(合併・買収)でつまずいた。

オリックスの後押しで売上高500億円を目指す

 オリックスは20年1月14日、小林化工を子会社化すると発表した。小林化工の発行済み株式の過半数を取得するが、出資比率や株式取得額は非公開。小林化工の現経営体制を維持し、代表取締役の変更はない。社外取締役2人と監査役にオリックス社員が就任した。小林化工の経営陣は引き続き経営や運営を担い、オリックス側は経営戦略や財務基盤の強化をサポートする。

 オリックスが医療用医薬品事業を獲得するのは初めてだ。プレスリリースに、こう記した。

 「医療法人向けのリースやファイナンス、医療機器関連のレンタルサービスの提供のみならず、これまで原薬商社、医療機器販売会社、動物薬メーカーに出資するなど、ヘルスケア業界に注目して幅広い事業を展開しています」。今回の小林化工の連結子会社化は、ヘルスケア事業の強化が狙いだ。

 一方、小林化工は「オリックスの国内外のネットワークの事業基盤と連携し、さらなる品質向上、安定向上を図りたい」。海外進出を目的としている。

 オリックスは世界37カ国・地域に置く拠点を活用し、海外展開の加速を担う。とくにアジアには13カ国に現地法人を置いており、小林化工が本格進出する際に、協業する現地企業を選定し、海外での販売を後押ししていきたいとの考えを表明している。

 小林社長は、オリックスの傘下入りが決定したことを受けて、業界紙の日刊薬業(20年2月7日付)に「がん領域の新製品開発や海外展開に注力し、早期に売上高500億円達成を目指す」と意気込みを語っている。

 だが、今回の事件で、創業家3代目の構想は水泡に帰した。「リスクが顕在化したとき、強力なバックボーン」として期待されるオリックスの出番だ。オリックスは1月20日、福井新聞の取材に「出資者として誠に遺憾。小林化工が社会的な責任を少しでも早く全うすることができるように、最大限のサポートを行っている」とコメントした。

オリックスはM&Aで巨大化した

 オリックスの最高実力者は、シニアチェアマンの宮内義彦氏である。1964年の創立メンバーで、80年の社長就任以来、会長、グループCEOを33年間務めた。

 宮内氏は「ぎりぎりまでトップに居続けることは、その後を考えると無責任という考えに変わった」として、14年5月に退任。シニアチェアマンという肩書になったが、事実上の院政だ。創業者でもオーナーでもないのに、絶対君主として君臨する怪物経営者である。

 宮内氏といえば、小泉純一郎首相の構造改革において、牛尾治朗氏や竹中平蔵氏とともに規制緩和の旗振り役を続けてきた人物だ。規制改革で風穴を開けた分野にオリックスが進出して、規制改革を利権にした“政商”と非難された。

 規制改革の旗手。これが、宮内氏が長期政権を続けてきた大きな要因であった。リース会社として出発し、今では連結会社869社、関連会社232社の巨大のオリックス・グループを形成した。その原動力になったのは、活発なM&A(合併・買収)だ。M&Aで発展してきた会社なのである。

 金融やリースを軸に、不動産や再生可能エネルギーなどに進出。「ライオンズマンション」で知られる(株)大京(現・(株)大京穴吹不動産)を買収、マンション業界の大手の一角を占めるまでになった。このようにオリックスの実態は、事業会社を傘下に組み入れる投資会社だ。

(つづく)

【森村 和男】

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