【企業研究】オリックスが得意のM&Aで誤算~水虫薬に睡眠導入剤成分混入の「小林化工」を連結子会社にしたばかりだった!(5)
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ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの小林化工(株)が製造した水虫薬に睡眠導入剤成分が混入し、健康被害が相次いだ。同社の筆頭株主は、総合リース大手のオリックス(株)。2020年1月、小林化工の株式の過半数を取得し、連結子会社化して取締役2人と監査役を送り込んだばかりだった。得意のM&A(合併・買収)でつまずいた。
社会の大きな流れを見て、先手を打って進出
オリックスのM&Aは、社会の大きな流れを見て、既存事業から隣の事業に進出するのがセオリーだ。ヘルスケア事業は、そのセオリーに従った。
オリックスは、医療法人向けのリースやファイナンス、医療機器のレンタルを行っていたが、2016年からヘルスケア事業の強化に乗り出した。16年4月に動物用ワクチンの国内最大手である(株)微生物化学研究所(京都府宇治市、通称・京都微研)を買収した。牛や豚などの家畜、ペット向けに感染症予防のワクチンを製造・販売し、牛用ワクチンにおいては、60%を超える国内販売シェアをもつ。
同年7月には動物向け医薬品を製造・販売するフジタ製薬(株)(東京・品川区)の全株式を取得した。牛・豚・鶏などの家畜やペット用の犬猫向けの医薬品の開発から販売まで手がける。動物用のジェネリック医薬品を扱う。
オリックスは両社の買収で、治療薬から予防薬まで一貫製造する動物薬企業グループを誕生させた。環太平洋経済連携協定(TPP)が発効すれば、国内畜産の大型化が進み、家畜が感染症にかかるリスクが高まる。動物薬事業が拡大するとみて、先手を打った。しかし、微生物化学研究所は、買収した翌17年、農水省から製品承認を受けるうえで、試験データを改ざんしたとして40日間の業務停止命令を受けた。
後発薬企業の再編は必至とみて、先手を打ち小林化工を子会社化
ジェネリック医薬品(後発薬)メーカー、小林化工を子会社化したのも、同じ発想だ。
医療費抑制のため、政府がジェネリック医薬品の使用割合を80%とする政府目標は、20年にほぼ達成した。これで国内では後発薬企業の成長期は終焉した。多すぎるといわれる後発医薬品業界の再編は必至だ。
後発薬企業の再編は、大手が中堅企業を買収すると見られていたが、オリックスは先手を打った。業種の枠を超えたM&Aで、小林化工を傘下に組み入れた。その先には、大京が(株)穴吹工務店を買収して合併したように、小林化工を通じて中堅の後発薬企業を買収することを視野に入れていた。
オリックスは、これまで原薬商社にも出資しており、小林化工を核として、原薬から製造・販売まで、ジェネリック医薬品業界の一角を占める企業グループにする青写真を描いていたのである。
小林化工の買収は、オリックスの投資事業本部が担当。出資後、事業投資本部所属の三宅誠一氏と早川英二氏が社外取締役に名を連ねた。オリックス=小林化工連合が船出した直後に、大量の薬害被害で座礁事故を起こした。微生物化学研究所を買収した直後に、業務停止処分を受けたのと、まるっきり同じ。オリックスにとって、薬品事業への投資は鬼門なのだ。
全国で過去最長となる116日間の業務停止処分を受け、小林広幸社長以下経営陣は総退陣する。睡眠剤混入薬の被害者からは、会社と旧取締役は集団訴訟を起こされるだろう。
親会社のオリックスが前面に出てこざるを得ない。投資会社のオリックスは、M&Aは得意だが、事業会社の経営は得手とはいえない。小林化工の敗戦処理をどうするのか。きっちり説明すべきだろう。
(了)
【森村 和男】
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