2024年12月04日( 水 )

コロナ禍で進む企業の選別 顧客とより多く話し、関係を強固に(後)

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税理士法人アップパートナーズ
代表社員税理士 菅 拓摩 氏

 九州最大規模の税理士事務所である税理士法人アップパートナーズ。新型コロナウイルス感染拡大のなかでも顧客の倒産を出さず、経営状態を守るとともに、新規顧問先を増やしている。これらを実現している背景には、同社が昨年の早い時期から顧客に融資を受けるように勧めてきたこと、税務にとどまらず、経営コンサルティングなどのサービスもワンストップで提供してきたことがある。

(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)

コロナ禍での組織づくり

 ――優秀な人材を育てていますが、彼らは同時に他社でも活躍できる人材です。そのような人材に自社で働いてもらうために、どのようなことを意識していますか。

 菅 拓摩 代表

 菅 人によって会社に求めるものは、仕事のやりがいであったり、待遇であったりと異なっています。税理士は独立する人が比較的多いのですが、当社では幸いに離職率は低く、独立したのは1人だけです。中途採用のほうが定着していますが、世代的な要素を考慮すると新卒も育てる必要を感じています。とはいえ、募集には苦労しており、採用と教育には労力が要ります。なお、一度退職したものの、戻ってきてくれる社員も多いです。彼らはほかの会社で役職に就いて修羅場を経験し、スキルを磨いてきており、それが会社の地力になっています。

 当社はベンチャー気質が残っており、各自が自分の城をもてるようにと考え、がっちりした組織をつくっていません。全員に代表や別会社の社長になるチャンスがあり、その意味で、どこまで出世できるのかという天井が見えていないようなものです。

 役員に給与を自身で定めるように指示したところ、皆遠慮がちに提示してきます。なかには、コロナ禍で来期の業績見通しが厳しいため減額という人もいますが、私としてはむしろ増額する方向で自身にプレッシャーをかけてほしいと思っています。プレッシャーがかかるのであれば、そんなに要りませんと考える人は意外に多いです。しかし、役員が給与を下げるよりも、必死で頑張ってくれる方が会社にとってはプラスです。

 実は私も何度か給料を下げたことがありますが、それで皆がありがたがってくれるわけではなく、あまり意味がなかったです。給与を下げるのは最終手段だと思います。顧客の中小企業の社長にも、給与減額という提案はお勧めしていません。尊厳を失うことにつながる行為には慎重になっていただければと思います。

 ――現在の新卒の20代前半くらいですと、動画編集の経験がなくても自身で方法を調べて編集をやってのけます。従来、動画編集を特別なスキルとして扱ってきましたが、彼らにとってはWordなどとあまり変わらない感覚であり、この感覚の違いは大きいです。

 菅 根本的に仕事のやり方も変わっていきますね。若い人ほど変化に適応できて、かつそれが早いと思います。とはいえ、現在の大学卒の世代の下には、デジタル教育をがっちり受けてきて、語学も堪能であるなど優秀な世代がいて、これから社会に出てくるでしょう。現在の大学卒の世代もその下の世代との比較でいえば、上の世代との中間です。

 ――21年はどのような年になりますか。

 菅 今年は顧客が経営的に苦しくなり、行き詰まる可能性を織り込みながら対応していく必要があります。コロナ対策で、再生関連業務が増えていくことが予想されますが、着実に行っていきます。

 また、税理士事務所の選別も進んでいくという心構えでいます。実は、昨年は顧客がもっとも多く増えており、顧客がこのコロナ禍で当社に相当な期待を抱いて依頼してきてくれたものと思っています。それは、逆に選ばれなくなってしまえば同様の顧客数が減る可能性があるという緊張感をもちながら、顧客に引き続き選んでいただけるよう、関係を構築するために密に連絡を取っていくつもりです。

(了)

【文・構成:茅野 雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:菅 拓摩
所在地:福岡市博多区博多駅東2-6-1
設 立:2008年9月
グループ資本金:1億5,600万円
売上高:(20/12)約25億円


<プロフィール>
菅 拓摩
(すが・たくま)
1973年4月生まれ、福岡県出身。立命館大学大学院経営学研究科修了。父の事務所を継承した後、2008年に内田延佳税理士事務所と経営統合し、税理士法人アップパートナーズを設立。同事務所代表社員税理士に就任。

(中)

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