2024年11月23日( 土 )

【自分ファースト】小池都知事が税金を使った露骨な千代田区長選対策 直系候補を視察に同伴

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千代田区長選~小池チルドレンの候補者が勝利

 菅義偉首相との「責任のなすりつけ合い」で新型コロナウイルスの第三波感染爆発を招いた小池百合子都知事が1月22日、公務の千代田区保健所視察に千代田区長選候補の樋口たかあき(38)・前都議=国民民主支持=を同伴させ、税金を使った露骨な「千代田区長選」(1月31日投開票)の選挙対策をした。結果は、樋口候補の初当選。23区の現役最年少区長となった。

 菅首相との不仲説が流れる小池知事だが、無反省ぶりと五輪強行姿勢は共通。1月22日の都知事会見でも、イギリスのタイムス紙が「日本政府が非公式ながら中止せざるを得ないと結論づけた」と報じたことについて朝日新聞の記者が質問すると、小池知事は「一切聞いていない」「抗議を出すべきではないだろうか」と強調。五輪中止論の火消し役を買って出たのだ。

 しかし感染拡大が収束しないままでの五輪開催は「第四波」を招きかねず、都民の命を脅かすリスクがある。自らの怠慢で招いた感染拡大で医療現場は崩壊寸前なのに、さらに危機的状況に陥る恐れは十分にある。そこで会見終了直後、この日も質問者として指されない記者排除への抗議も兼ねて、「五輪開催で変異種(感染拡大)のリスクがあるのではないか。『都民の命二の次』で『五輪ファースト』か」と小池知事に問い掛けをしたが、一言も発することなく立ち去った。

千代田区長選出馬の樋口たかあき候補と共に千代田区保健所を「行政視察」した小池知事。税金を使った選挙対策を兼ねていたのは明らか
千代田区長選出馬の樋口たかあき候補と共に
千代田区保健所を「行政視察」した小池知事。
税金を使った選挙対策を兼ねていたのは明らか

 この日は午後2時からの定例会見後、午後5時から「行政視察」の名目で千代田区保健所視察が予定されていた。現地で他のメデイア関係者と一緒に小池知事の到着を待ち構えていると、なんと千代田区長選の候補者である樋口たかあき・前都民ファ都議と並んで登場したのだ。小池知事と直系候補のツーショットが映像や写真に撮影される場面設定となっていた。

 囲み取材でも、税金を使った露骨な選挙対策を目の当たりにした。保健所長らとの意見交換を終えた後の囲み取材では、小池知事の隣に樋口候補が立ってテレビカメラに映り込むような位置設定だったのだ。

 そんな直系候補の広報宣伝を兼ねた行政視察でも、都合の悪い質問には一切答えない記者排除は徹底していた。囲み取材で1問目の幹事社質問が終わった後すぐに、「五輪開催で(千代田区保健所などの医療保険機関の)負担増をさらに強いることはどう思うのか」と質問をしたが、小池知事は私の質問にはまったく答えずに別の記者を指した。そこで2問目の質疑応答直後、「五輪で(医療保険機関の)負担増になることについてはどう考えるか。菅さんとの責任なすりつけ合いで感染爆発を招いた責任は謝罪しないのか」と再質問をしたが、小池知事は取材終了を宣言して無言のまま退出を始め、同時に都職員が「取材は以上で終了です」などと叫んで私の声掛け質問を聞こえにくくした。

 2度も無視されたので、4階の会場から階段を駆け下りて出口付近で小池知事を直撃しようと試みた。しかし複数の職員に行く手を阻まれたので、立ち去る知事に向かって職員ごしに「知事、五輪について一言、(医療保健機関の)負担増を招くのではないか」と3度目の声掛けをしたが、小池知事は立ち止まることも一言も発することなかった。

丸山・島根県知事はメディアの姿勢も批判

1月22日の都知事会見でも五輪開催強行の姿勢を露わにした小池知事。菅首相との不仲説が流れる小池知事だが、五輪開催では足並みをそろえる
1月22日の都知事会見でも
五輪開催強行の姿勢を露わにした小池知事。
菅首相との不仲説が流れる小池知事だが、
五輪開催では足並みをそろえる

 樋口候補はその後、ネット上で小池知事と並んだ写真を掲載し、都とのパイプの太さを強調した。知事直系候補へのテコ入れを兼ねた「行政視察」となっており、「税金を使った選挙対策」と批判されても仕方がない。

 この日の「行政視察」は、江東区保健所と中央区保健所と千代田区保健所の3カ所だったが、江東区と中央区は取材不可で、千代田保健所のみ取材可能。そこに、小池知事が衆議院時代にインターンを経験した愛弟子の樋口候補とともに保健所に入り、囲み取材でも隣に立つという“小池劇場”をメデイアに見せつけたのだ。世論工作に長けたポピュリストとしか言いようがないが、「自分(選挙)ファースト」を貫いたともいえる。

 なんとしても千代田区長選に勝利したいという小池知事の心情はわからないでもない。2017年の千代田区長選では、小池知事が支援した区長がトリプルスコアで圧勝、同年夏の都議選で自民党を惨敗に追い込む発端となった。そんな千代田区長選で直系候補が敗北すれば、都民ファースト凋落、ひいては自らの政治力低下が可視化されてしまう。そうした事態は避けたいというわけだ。

 千代田区長選投開票2日前の1月29日には、都知事会見で再び五輪開催について声掛けをした。小池知事が五輪関連予算約4,000億円を含む令和3年度東京都予算を説明したのを受けて、次のように聞いたのだ。

 ――五輪中止で4,000億円をコロナに回さないのか。五輪ファーストか。公務で保健所視察(選挙対策)していいのか。直系愛弟子の樋口候補が同伴していたではないか。税金使って選挙対策をするのか。

 小池知事 無言のまま立ち去る。

 午後3時からは一都三県知事とのテレビ会議があったが、五輪開催の可否についての議論はまったくなし。そこで会議終了直後、小池知事に向かって「知事、なぜ五輪を議論しなかったのか。『五輪ファースト、都民の命二の次』か。安心安全な開催の条件を(菅政権に)求めないのか」と大声を張り上げたが、ここでも小池知事は無言のまま立ち去った。

 菅首相とともに第三波感染爆発を招いた“A級戦犯コンビ”である小池知事が、五輪開催強行をする恐れは十分にある。そんななか、県内の聖火リレーを中止することを検討していると発表した島根県の丸山達也知事(50/福岡県八女郡広川町出身)は、2月10日の定例会見で千代田区長選にも言及していた。

「お仲間の当選のためにこういう行動をされていることも信じがたい。これが大きな問題になっていないことも二重に信じがたい」

 こうした丸山知事の発言を受け、19日の小池知事会見では以下のような声かけ質問をした。

 ――島根県知事は千代田区長選の密集街宣も問題にしていますよ。密状態を認めないのか。嘘八百を通すのか。(丸山知事は)都へのメデイアチェックが効いていないと言っていますよ。ちゃんと10日の(丸山)知事会見を読んだのか。嘘八百言わないでくださいよ。

 小池知事 無言で退出

 丸山知事は、無批判に「小池劇場」を垂れ流すだけのメディアについても舌鋒鋭く批判していた。

「都に対する社会的チェックがまったく効いていないということをメデイアとかを含めて反省すべきだと思う」(定例会見で)

 大手メディアは本当に「仕事」をしているのか。あえて問いたい。

【ジャーナリスト/横田 一】

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