コロナ禍で台湾が世界への協力をアピール!~Taiwan Can Help, Taiwan is helping.(2)
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新型コロナウイルス感染症対策で、台湾は世界でトップクラスの優等生である。マスク着用やソーシャルディスタンスなどの衛生管理は徹底されているが、テレワーク、オンライン授業もほぼ行われておらず、社会はコロナ前とほとんど変わらずに動いており、経済も好調である。この成功を受けて蔡英文総統の支持率は20%近く上昇した。
台湾在住歴13年の山本幸男 (一財)台湾協会 台湾連絡事務所長(元 台北市日本工商会・台湾日本人会 総幹事)に台湾の今を聞いた。(一財)台湾協会 台湾連絡事務所長 山本幸男氏
IMDランキングで世界第14位、内需、輸出とも好調
――新型コロナウイルス感染症対策の成功を背景に、台湾経済は好調と聞いています。
山本 2020年のGDP成長率は中央研究院(中研院)経済研究院の当初の見込みでは2.38%でしたが、1月末の政府発表では2.98%と大幅にアップしています。加えて、四半期でみると、成長が急速に加速しています。21年の見込みは、現時点で3.7%となっていますが、さらに上乗せできるのではないかと言われています。
中国本土のGDP成長率は、20年が2.3%で、21年は8.2%と予測されています。そのため、台湾の新聞では20年は「30年ぶりにGDP成長率で中国本土を抜いた」という報道までありました。20年の台湾経済界は、コロナに打ち勝って、景気もよかったといえます。失業率も3.8%と悪くなく、スイスのIMD(国際経営開発研究所)による国際競争力ランキングでも、14位(日本は34位)になり、内需、輸出とも好調でした。
とくに半導体産業が、台湾経済の牽引力となっています。今、アメリカ、日本、ドイツなどを中心に、世界の自動車産業は半導体不足で大きな影響が出ているため、台湾に注目が集まり、協業要請などの話も多く来ています。半導体受託製造で、台湾最大手のTSMCが筑波市に工場を建設するというニュースも流れています。組立やテストなど後工程分野の開発拠点を日本に設ける見通しで、将来的には量産工場の建設も視野に入れています。
国際的なデジタル企業、Googleやマイクロソフトなども、台湾への投資を増やしています。この分野では、台湾は世界の集積地になるのではないかと思っています。台湾政府は、中国本土への依存度を下げて台湾回帰、また東南アジアへの南向政策を推進しています。
経済振興策として「消費振興三倍券」を発行
――20年度は世界からの台湾への入境者が激減しました。観光関連産業の現状はどうですか。
山本 世界中で、インバウンドが前年比9割以上、減少しています。台湾もその例外ではなく、旅行社、ホテル、マッサージ店、土産物屋などは苦境にあり、経営が懸念されています。そこで、観光関連産業は、外国人客から台湾人客に重点を移し、ファミリー向けプランの企画、価格低減などのアイデアで対応しています。高級ホテルのレストランでは、ファミリー向けのメニューを加え、弁当販売まで始めており、出前配達のオートバイで街中が賑わっています。
台湾政府は20年7月、経済振興策として、「消費振興三倍券」を発行しました。利用期間は20年7月15日~12月31日で、1,000元を出せば3,000元の商品券がもらえるという政策です。購入できるのは1人1回だけですが、台湾人のみならず、配偶者や永久居留証があれば、外国人も購入可能でした。加えて、それぞれの商店街が独自のアイデアを同時期に追加したので、さまざまなサービス商品が登場しました。インターネット販売は対象外ですが、鉄道や飲食店、文化施設などで200元または500元単位で使うことができたため、市民にとても人気でした。
本来であれば、年間で約500万人の台湾人が訪日していました。台湾人のなかには日本ファンもたくさんいます。そこで、台湾内の百貨店では今、日本フェアが行われており、日本の土産物がとても人気です。一方、日本でも、大阪の近鉄グループの百貨店、あべのハルカス近鉄本店が「台湾フロア」を21年4月のオープンに向けて準備しているとの新聞報道もあります。
富士山上空まで飛んで、そのまま帰ってくるツアーも人気
山本 台湾人の国内旅行として人気があるのが、「離島」(澎湖諸島など)旅行です。離島旅行では、飛行機や船で台湾域内を旅行しながら海外旅行気分を味わえるため、コロナ禍の海外旅行欲を満たす旅行スタイルとして人気を集めました。
また、日本愛を自負する台湾人「哈日族(ハーリーズー)」の間では、海外旅行ができなくなった今、飛行機で富士山上空(北海道上空、九州上空など)まで飛んで、そのまま帰ってくるツアーが人気です。飛行機のなかでは、日本の土産物(絵葉書、地方の特産品など)を購入することができます。
大手の旅行会社などは、社員研修、ECコマースの開発や、アイデア旅行の企画書づくりにこの機会に取り組んで急場を凌いでいます。一方で、台湾の旅行会社の多くは中小規模なので、コロナ禍が長引いていることが懸念されます。すでに、多くの旅行代理店、観光関連業者が廃休業に追い込まれ、外国人観光客で有名な士林夜市の一部はシャッター通りです。ただし、社会全体としては景気が悪くなく、株価も上昇しています。そのため、旅行業を廃業してほか職種への切り替えも増えています。日本と違い、敗者復活がある程度許される風土なので、決して暗くなっているわけではありません。
(つづく)
【金木 亮憲】
<プロフィール>
山本 幸男氏(やまもと・ゆきお)
(一財)台湾協会 台湾連絡事務所長。台日産業技術合作促進会 諮詢委員、台湾大学日本研究中心 外部支援コーディネーター、台日文化経済協会理事などを兼任。
1948年、大阪生まれ。71年、大阪大学経済学部卒業後、三井物産(株)に入社。主に本店非鉄金属部門で中国ビジネスを担当後、79年に会社派遣で北京語言学院に留学。留学後、中国(広州、北京)に着任3回、通算15年間、中国滞在。2008年に台北市日本工商会、台湾日本人会の初の専属総幹事に就任。元(公財)日本漢字能力検定協会 ビジネス日本語能力テスト台湾アドバイザー。関連記事
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