ポスト・コロナ時代をどう生きるか?変化する国家・地域・企業・個人、そして技術の役割(1)
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ポスト・コロナ時代に、バイデン新政権下での米国、中国、ミャンマー、台湾、韓国、北朝鮮、中東などの国際情勢はどう動き、日本はどのような役割をはたすべきなのか。さらに、管理社会化が進むなか、国家や企業、個人は新しい時代をどのように切り開いていくべきなのか。国際政治経済学者・浜田和幸氏、元公安調査庁第2部長で現アジア社会経済開発協力会会長・菅沼光弘氏、経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦氏が鼎談(ていだん)を行った。
世界を覆い尽くすフェイクニュース
浜田 新型コロナウイルスは、ワクチンの有効性や安全性に関する賛否両論が渦巻き、PCR検査の陽性率を意図的に高めているという話もあるなか、SNSではフェイクニュースが瞬く間に拡散しています。コロナで恐怖心を煽って世論を誘導し、ワクチン接種を義務化することを目指しているように感じます。
既存メディアが影響力を失う時代では、企業や個人はどのような発想で情報と向き合えば、真実を見分けて、大切な社員や家族、そして自らを守ることができるのでしょうか。また、新型コロナウイルスは中国・武漢の海鮮市場のコウモリから発生した単なるウイルスなのか、それとも人工的な生物化学兵器としての狙いがあってつくられたのか。これらの状況について、どう受け止めていますか。
菅沼 このような状況を正しく判断することは、国家レベルでも非常に難しいです。私は公安調査庁でインテリジェンスに長く関わってきました。インテリジェンスとは、相手国の政治情勢などを探って知らせる情報活動で、「スパイ活動」も含まれます。公安調査庁の情報機関としての体制づくりのため、1960年代に西ドイツの連邦情報局(BND)に派遣されました。当時は冷戦の真最中で最大のターゲットはソ連でした。BNDは、第2次世界大戦中にドイツの対ソ連のスパイ活動を主導した「影のリーダー」の伝説をもつラインハルト・ゲーレン将軍が初代長官です。
私の経験を踏まえると、世の中に出回っている情報は大なり小なり「フェイクニュース」です。たとえば中国を知ろうとするとき、最高の情報資料は中国共産党機関誌『人民日報』です。しかし、『人民日報』は中国共産党宣伝部が、中国に対して世界が抱いてほしいイメージを基に編集されており、ある種の「宣伝」資料ともいえます。メディアを見るときには、裏に隠されている事情や政策目的を見極めることが大切です。
私は在職当時より、公開されている情報から中国共産党の真意を探ってきました。かつて米国のCIAで中国問題を分析していたエズラ・ヴォーゲル氏は、米国中国国務院が作製している莫大な資料を毎日、在上海米総領事館から米国に送らせて調査・分析し、中国政府の動向をよく知っていますが、中国共産党は情報統制が行われており、内部文書がまったく表に出ていないため、その動きは正確にはよくわからないと述べていました。
66年の文化大革命で、紅衛兵の若者が、鄧小平氏などを攻撃するために党政治局会議での発言を壁新聞などで暴露しました。当時、日本人読者だけが漢文を読むことができたので、中国共産党の実相の一端を初めて知ることができました。
中国は78年の改革開放で、以前よりもオープンな国になりましたが、今日でも、たとえば中国共産党の政治局常務委員会で議論されている内容などはまったく表に出ません。そのため、米国では公開情報から実情を探る「オープンソースインテリジェンス」の分析方法を改良し、アングロサクソンの機密情報共有機関「ファイブ・アイズ」で盗聴などを行って真相に迫ろうとしていますが、成功していません。
米国務省は「武漢ウイルス研究所からウイルスが流出した」と発表し、中国は「米国がウイルスを中国に持ち込んだ」と報道しており、正反対の情報が飛び交っています。両国の情報戦争であり、どちらが正しいかどうかを判断するのは個人の力ではできないでしょう。
もし、人工ウイルスが開発されているとすれば、38億年にわたる地球上の生命の歴史で自然を冒涜することになり、そのうちしっぺ返しを受けるのではないでしょうか。突然変異もあるコロナウイルスをワクチンで絶滅させることは、もはや不可能です。人が本来持つ免疫力や生命力を信じて共存していくしか方法はありません。
(つづく)
【石井 ゆかり】
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。菅沼 光弘(すがぬま・みつひろ)
アジア社会経済開発協力会会長。東京大学法学部卒業。1959年に公安調査庁入庁。入庁後すぐにドイツ・マインツ大学に留学、ドイツ連邦情報局(BND)に派遣され、対外情報機関の調査に携わる。帰国後、対外情報活動部門を中心に、元公安調査庁調査部第二部長として旧ソ連、北朝鮮、中国の情報分析に35年間従事。世界各国の情報機関との太いパイプをもつ、クライシス・マネジメントの日本における第一人者。主な著書に『この国を脅かす権力の正体』(徳間書店)、『日本人が知らない地政学が教えるこの国の針路』(KKベストセラーズ)、『ヤクザと妓生がつくった大韓民国』(ビジネス社)、『米中新冷戦時代のアジア新秩序』(三交社)など。藤 和彦(ふじ・かずひこ)
(独)経済産業省経済産業研究所コンサルティング・フェロー。1960年生まれ、愛知県名古屋市出身。早稲田大学法学部卒。84年通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギーや通商、中小企業政策などの分野に携わる。2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、16年から現職。主な著書に『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』(PHP研究所)、『石油を読む―地政学的発想を超えて 』(日経文庫)、『原油暴落で変わる世界』(日本経済出版社)など。関連記事
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