2024年12月21日( 土 )

コロナ禍で台湾が世界への協力をアピール!~Taiwan Can Help, Taiwan is helping.(4)

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 新型コロナウイルス感染症対策で、台湾は世界でトップクラスの優等生である。マスク着用やソーシャルディスタンスなどの衛生管理は徹底されているが、テレワーク、オンライン授業もほぼ行われておらず、社会はコロナ前とほとんど変わらずに動いており、経済も好調である。この成功を受けて蔡英文総統の支持率は20%近く上昇した。
 台湾在住歴13年の山本幸男 (一財)台湾協会 台湾連絡事務所長(元 台北市日本工商会・台湾日本人会 総幹事)に台湾の今を聞いた。

(一財)台湾協会 台湾連絡事務所長 山本幸男氏

日本から台湾への留学生は10年前に比べ5倍に増えた

 ――教育界はいかがですか。日本の大学では、ほぼオンライン授業が普通になっています。

 山本 大学の授業は、基本はすべて対面で行われています。ただし、政府の教育部からは、教員に対して、資料の作成、設備の使い方の習得などを行い、緊急時にはオンラインでも対応できる準備をしておきなさいという通達が出ているようです。また、学会関係は、海外の教員とのリアルな交流は途絶え、ほとんどすべてがオンラインです。学会や国立大学を中心に公立大学では、中国資本が入ったZoomではなく、他のアプリを使いなさい、という通達も出ています。ただし、台湾の一般市民の間では、Zoomの人気が高く、多く使われています。

 昨年、NHKで報道されましたが、日本から台湾への正規留学生は、10年前に比べると5倍に増えています。今、正規の日本からの留学生が約1万人います。2021年も入境時に隔離がありますが、日本から台湾の大学への留学生も増えるのではないかと聞いています。今年の成人式には、日本に帰国できない留学生に対して、台湾の現地で成人式を開催した大学もありました。

 日本より台湾の方が、AIプログラミング授業は先行していることも、台湾留学のアピールになっています。ただし、台湾は、英語と中国語の両方が公用語であり、それらを留学前に確実に習得しておかないと授業についていけません。台湾も少子化で大学生の数が減っており、中国本土からの留学生も見込めないなかで、日本や東南アジアからの留学生に期待しています。

オードリー・タン大臣を中心に、SDGsに真剣に取りむ           

 ――蔡英文総統とデジタル大臣であるオードリー・タン氏()とが推進する“Taiwan Can Help, Taiwan is helping.”(台湾は助けることができる、助けている)について、解説をいただけますか。

オードリー・タン大臣と竹中温雄氏(キャラ作成者)

 山本 オードリー・タン氏は無任所大臣で、デジタル分野の専門家です。彼女がもっとも関心を持っているのはSDGsの普及促進です。台湾は国連メンバーではありませんが、今の世界の関心ごとを圧縮した目標であるSDGsに一生懸命取り組んでおり、トップランナーとしてその成果を世界に還元できるとしています。その標語が、“Taiwan Can Help, Taiwan is helping.”です。これは蔡英文政権のスローガンでもあり、台湾が置かれた立場から、世界に台湾の存在意義を強くアピールするものです。

 今では、オードリー・タン氏は、政府広報官的な役割もはたしています。最近は日本のバラエティー番組にも登場し、台北の日本人学校でも講演を行っています。とても人気があり、この講演では生徒約500名、父兄500名の約1,000名が参加しました。さらに、20年11月16日には、日本の九州の高校生との対話も行われました。今は止まっていますが、コロナ収束後には、日本の高校生の台湾への修学旅行が増えるのではないかと思っています。

オードリー・タン大臣と九州の高校生の対話

 オードリー・タン大臣と九州の7県の高校生(熊本高校、東筑高校、佐賀西高校、長崎西高校、宮崎西高校、大分上野丘高校、鶴丸高校)によるシンポジウムが20年11月16日、「世界的なデジタル社会でどう生きていくか、高校生が何をすべきか」をテーマに開催された。このシンポジウムは、熊本県立熊本高等学校と(一社)台湾留学サポートセンターが主催しており、それぞれの県の教育委員会などを通じて、九州地域以外の高校生にも視聴された。

(つづく)

【金木 亮憲】

※:漢字の名前は、唐 鳳。1981年生まれ。台湾デジタル担当大臣。政治家、プログラマー。台湾のコンピュータ界における偉大な10人のなかの1人といわれる。2016年10月に台湾の蔡英文政権において35歳の若さで行政院に入閣し、無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)を務める。 ^


<プロフィール>
山本 幸男氏
(やまもと・ゆきお)
(一財)台湾協会 台湾連絡事務所長。台日産業技術合作促進会 諮詢委員、台湾大学日本研究中心 外部支援コーディネーター、台日文化経済協会理事などを兼任。
 1948年、大阪生まれ。71年、大阪大学経済学部卒業後、三井物産(株)に入社。主に本店非鉄金属部門で中国ビジネスを担当後、79年に会社派遣で北京語言学院に留学。留学後、中国(広州、北京)に着任3回、通算15年間、中国滞在。2008年に台北市日本工商会、台湾日本人会の初の専属総幹事に就任。元(公財)日本漢字能力検定協会 ビジネス日本語能力テスト台湾アドバイザー。

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