コロナ禍で台湾が世界への協力をアピール!~Taiwan Can Help, Taiwan is helping.(5)
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新型コロナウイルス感染症対策で、台湾は世界でトップクラスの優等生である。マスク着用やソーシャルディスタンスなどの衛生管理は徹底されているが、テレワーク、オンライン授業もほぼ行われておらず、社会はコロナ前とほとんど変わらずに動いており、経済も好調である。この成功を受けて蔡英文総統の支持率は20%近く上昇した。
台湾在住歴13年の山本幸男 (一財)台湾協会 台湾連絡事務所長(元 台北市日本工商会・台湾日本人会 総幹事)に台湾の今を聞いた。(一財)台湾協会 台湾連絡事務所長 山本幸男氏
県人会、大学同窓会などが、以前より盛ん
――台湾の日本人社会の今に触れていただき、日台関係の未来について日本の読者にメッセージをください。
山本 日本からの駐在員の大半は、コロナの影響も当然ありますが、台湾の景気が相対的に悪くはないので、ほぼ通常に近いビジネス活動をしています。日本との往来はほとんど止まっているので、よほどの緊急のことでなければ帰国されません。
オンライン会議にも慣れてきたと思いますが、やはり、リアルな会議も重要であり、今後はオンラインとリアルのどちらでも対応できることが基本だと考えています。オンラインの普及で時間と出張費も節約できて、空いた時間や節約できたお金を使って、現地職員の研修などに力を入れている企業もあります。
台湾では、テレワークはほとんどなく、仕事上の打ち合わせや接待なども普通に行われているようですが、二次会は減っていると思います。一方、駐在員の週末のゴルフは、ストレス発散の意味も含めて、以前より盛んになっています。公的イベントでは人数制限などの規制が厳しいですが、仕事以外の付き合い、県人会、大学同窓会などは以前より盛んになっています。そういう意味では、人的ネットワークは広がっているともいえます。
選挙では、留学生も自費で出身地の故郷に帰って投票
山本 私は日本人の台湾についての理解は、まだ限定的ではないかと感じています。今回のコロナ騒動は、「台湾」について理解を深めていただけるいい機会となりました。台湾が向かっている方向性も30年前とは大きく異なっており、ここ30年の台湾の変化を日本人にもっと知っていただきたいと思います。
私は、台湾は直接民主主義のようなかたちで、自由と民主と人権を大事にするコンパクトな姿を目指しているのではないかと思っています。加えて、多様な価値観の尊重、少数派への寛容(同性婚など)を大事にしています。これらの実現のために、ITやAIデジタルを駆使した市民参画型の社会変革を進めています。
日本と比較して、若者の社会改革への参加の意欲がとても強いです。前回の総統選では、海外の留学生なども、自費で出身地の故郷に帰って投票しました。日本のような不在者投票や現住所での投票は制度上、ありませんが、投票率は75%にも上ります。学生は声を掛け合って投票を呼び掛けています。それだけ、自分たちの将来について、真摯に考えています。
強みは、蔡英文総統に代表される3人の女性リーダー
山本 台湾の強みは女性リーダーの存在です。今、3人のリーダー、蔡英文総統、オードリー・タン大臣、蕭美琴 駐米台北経済文化代表処代表(※)が注目を集めており、3人ともすごい活躍ぶりです。オードリー・タン氏は有名ですが、彼女も含めて台湾で興味深い点は、女性ビジネスウーマンのプロフィール写真はだいたい腕組みをして自身満々であることです。日本ではなかなか見かけないポーズです。
ビジネスでの台湾の特徴は、起業家として意欲の強い若者が多く、市民も皆、彼・彼女らを応援していることです。私が所属するロータリークラブなども積極的に応援しています。そして、ある程度の敗者復活が許される社会、1回の失敗は皆で応援しようとする社会風土も長所の1つです。
日本とは逆に、個人情報を積極的に公開し、利便性を向上
山本 また、台湾は「フェイスブック」の普及率が世界一であることに表れているように、人と人のネットワークがとても強いです。日本ではフェイスブックは個人情報の漏洩などの点で危険だと言われていますが、台湾ではそのことを承知の上で、子どもから年寄りまで、使いこなしています。同じく「ライン」も手軽にネットワークをつくるために便利なので、積極的に連絡先を交換しています。台湾は「個人情報の公開を避ける」日本とまったく逆で、個人情報を公開して利便性を高めています。
台湾では、小さい子どもでもYouTuberデビューを目指しており、他の人から注目されたいという意識も強いです。日本では子どものころから「他人に迷惑をかけてはいけない」と教えられますが、台湾人は「相互援助」「お互い様」という気持ちが強くあります。日本と違って海外志向もとても強く、人口が2,300万人と多くはないので、常にビジネスの目線も海外に向いています。従って、またリスク分散の本能も生来的に備えています。
日本はこの30年間、とても内向きだったと思います。海外に出て外から日本を見直すとさまざまなヒントが得られます。日本のパスポートは世界一だと思いますが、利用率は低く、宝の持ち腐れのように見えます。日本も台湾もお互いに少子化といった問題を抱えています。もっと人の往来を自由にして、相互でいい面を発揮できることを期待しています。
(了)
【金木 亮憲】
※:1971年生まれ。台湾の政治家(民進党)。出生地は日本(兵庫県神戸市)で、父は台湾人、母はアメリカ人。80年代に発足した民進党において、外交および国家安全保障を含む政策と党務の国際化(とくに対米外交)に大きく貢献。陳水扁政権で中華民国総統府顧問として中央政界入り後、のべ4期にわたる立法委員と総統府国家安全会議諮詢委員を経て、蔡英文政権2期目発足にともない2020年夏より、駐米台北経済文化代表処代表(駐米大使に相当)に就任。台湾では初の女性駐米代表。アジア初となった台湾の同性婚合法化過程で初期の立法化を推進した人物でもある。 ^
<プロフィール>
山本 幸男氏(やまもと・ゆきお)
(一財)台湾協会 台湾連絡事務所長。台日産業技術合作促進会 諮詢委員、台湾大学日本研究中心 外部支援コーディネーター、台日文化経済協会理事などを兼任。
1948年、大阪生まれ。71年、大阪大学経済学部卒業後、三井物産(株)に入社。主に本店非鉄金属部門で中国ビジネスを担当後、79年に会社派遣で北京語言学院に留学。留学後、中国(広州、北京)に着任3回、通算15年間、中国滞在。2008年に台北市日本工商会、台湾日本人会の初の専属総幹事に就任。元(公財)日本漢字能力検定協会 ビジネス日本語能力テスト台湾アドバイザー。関連記事
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