2024年11月23日( 土 )

2021東京変異株博覧会の開催

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「世界各地の変異株が日本に持ち込まれるリスクを冒して五輪を開催することに正当性がない」を訴えた3月5日付の記事を紹介する。

後手後手・小出し・右往左往
菅三原則は健在。
右往左往の典型事例はGoToと緊急事態宣言の循環。

昨年11月に感染第3波が鮮明になった。
菅内閣は10月1日からGoTo全面推進に突き進んだ。
11月21日からの3連休直前が方針転換のラストチャンスだった。

「英断を心からお願い申し上げる」の言葉を振り切り、菅首相は12月28日までGoTo推進で突っ走った。
その結果としての感染爆発、緊急事態宣言再発出だった。
GoToにブレーキをかける方法は「小出し」の連続。
最後には全面撤退・敗走に追い込まれた。

12月中旬に英国で変異株が確認された。
直ちに水際対策を強化すべきだった。
菅首相は12月28日に入国規制強化を発表したが実態はザル対策。
水際対策強化に強硬に反対し続けたのが菅首相だった。

1月7日の緊急事態宣言発出時点でも入国規制強化を排除。
ようやく1月13日になってレジデンストラック、ビジネストラックの入国を止めた。
間違いを正すことができず、最後は全面撤退に追い込まれる。
現代版インパール作戦が展開されている。

東京五輪組織委員会の森喜朗会長が2月3日に女性蔑視、女性差別の発言をした。
森氏は翌日の謝罪会見で逆ギレ。
質問する記者に対して「面白おかしくしたいから聞いてんだろ」とすごんだ。

この言動に対する萩生田光一文科相のコメントが目を引いた。
「『反省していないのではないか』という識者の意見もあるが、森氏の性格というか、今までの振る舞いで、もっとも反省しているときに逆にあのような態度を取るのではないか」

ここまで来るとギャグとしか言いようがない。
萩生田文科相はウケを狙ったのか。

権力者がいて、取り巻きがおべんちゃらを並べ立てる。
正論を吐く者がいれば、正論を述べる者を叩く。
これが「わきまえた者」の模範的行動だ。

新しい組織委会長を選出する際、「透明なプロセス」を重視して、選考検討委員会メンバーを非公表にし、討議を非公開にした。
橋本聖子氏を会長に選ぶことをあらかじめ確定して形式だけを取り繕った。

森喜朗氏、橋本聖子氏、丸川珠代氏、萩生田光一氏のすべてが自民党清和政策研究会=旧森派・現細田派所属。
もちろん安倍晋三氏も清和研所属だ。
清和研の清和研による清和研のための五輪であることが誰の目にもはっきりとわかる。

森会長辞任問題でも菅首相対応は後手後手に終始した。
そして、総務省接待汚職疑惑事件対応も最悪の展開をたどっている。

コロナ感染が広がるなかでの東京五輪。
速やかに中止を決定すべきだ。
判断が遅れれば遅れるほど経費がかさむ。

コロナ新規陽性者数は人の移動変動に連動する。
人の移動変動から3週間遅れて新規陽性者数変動が生じる。
2月中旬以降、人流が明らかに拡大に転じた。
その影響で新規陽性者数の減少が止まりつつある。
4月から5月にかけて感染第4波が発生する兆候が見え始めている。

東京五輪組織委員会が女性理事の数を増やした。
女性比率を40%に高めて、女性差別問題への取り組みをアピールしたいということなのだろう。

しかし、表面だけ取り繕っても無意味だ。
「仏作って魂入れず」である。
「わきまえる女」だけを選んで数だけ増やしたと判断される。
山口香JOC理事をなぜ組織委理事に登用しないのか。

メディア世論調査が森会長後任に最適人物として山口香氏を摘示した。
正論を堂々と述べる山口氏を組織委理事に登用しなかったことがすべてを物語る。

日本でワクチン接種は夏までに大きな進展を見ない。
そもそも、危険極まりないワクチンを喜んで接種しようと考える人が多くはないだろう。
ワクチン接種後の死亡事例が多発している。
政府は因果関係を否定するが、因果関係がないとの証明は示されていない。

ワクチンの通常認可手続きが省略されている。
ワクチンメーカーは重大事故を発生させても責任を負わない。
正当性のない免責条項が付与された。

ワクチン企業のワクチン企業によるワクチン企業のためのワクチン接種。
莫大なワクチン利権が発生している。
世界規模でワクチン利権を刈り取る行動が進行している。
コロナパンデミック自体がワクチン利権を目的とする壮大な人為の産物である疑いを払拭できない。

五輪を開催する場合、選手と関係者だけで1万5,000人以上の外国人が入国することになる。
世界各地で種類の異なる変異株が生まれている。
その変異株が日本に持ち込まれることになる。

東京五輪は「変異株博覧会」の様相を示すことになる。
五輪の宴が終わった後、日本国内で壮絶な地獄絵図が展開されないとの保証がない。
このリスクを冒して五輪を開催することに正当性がない。

2月20日のG7首脳声明で、今夏の東京五輪について
「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証しとして今年の夏に開催するという日本の決意を支持する」
との文言が盛り込まれたことを菅首相は強調する。

しかし、表現を注意深く見る必要がある。
G7首脳が東京五輪開催を支持したわけではない。
G7首脳が支持したのは「東京五輪を開催するという日本の決意」を支持しただけ。
「よくやるね」というだけのこと。

米国のバイデン大統領は開催可否を「科学的に」判断する必要があるとの基本スタンスを変えていない。
日本で感染が再拡大し、日本でのワクチン接種が進展しなければ、主要国が東京五輪開催を支持しないに変化することは十分に考え得る。

コロナで国民の命と暮らしが危機に晒されている。
このなかで国民の8割以上が今夏に東京五輪を開催すべきでないと判断している。
民主主義国家における国民8割の判断は重い。

JOCの山口香理事はこの点を重視する。

「国民は疲弊し、医療現場はひっ迫…昨年よりも状況が悪くなっているという実感です。
世論調査によると、国民の約8割が『五輪を開催すべきではない』と考えています。
このことは重要視すべきです」

「IOCのバッハ会長は『選手の安心・安全は担保します』と言っていますから、アスリートたちにはリスクが少ないかもしれない。
でも、五輪後の日本は、どうなるのでしょうか。
変異種を含めたウイルスが一気に持ち込まれて、冬に向かって感染が再拡大する可能性も十分に考えられます。
そうした事態をみんなが恐れていて、そのことが世論調査『反対8割』として表れているんだと思います。
現時点で『開催国・日本の立場に寄り添う』という発想がIOCは希薄です。
だから日本も、そのことをしっかりと訴えていく必要があります」

この山口香氏を五輪組織委理事に登用しないことが、組織委取り繕いの裏側にある無反省を鮮明に物語る。


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植草一秀の『知られざる真実』

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