ポスト・コロナ時代をどう生きるか?変化する国家・地域・企業・個人、そして技術の役割(6)
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ポスト・コロナ時代に、バイデン新政権下での米国、中国、ミャンマー、台湾、韓国、北朝鮮、中東などの国際情勢はどう動き、日本はどのような役割をはたすべきなのか。さらに、管理社会化が進むなか、国家や企業、個人は新しい時代をどのように切り開いていくべきなのか。国際政治経済学者・浜田和幸氏、元公安調査庁第2部長で現アジア社会経済開発協力会会長・菅沼光弘氏、経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦氏が鼎談(ていだん)を行った。
永遠の生命をもつ「サイボーグ」時代が到来?
浜田 コロナは世界のパワーバランスが変わる引き金になり、米国、中国、ロシア、ベトナム、ミャンマーは混乱のなかで新しい権力構造を生みつつあります。個人の持つ感性やコミュニティーの大切さが見直される一方、個人の健康や行動、発想のデータを富を生む源泉にする動きもあります。
プーチン大統領は特殊な延命装置を開発し、トランプ前大統領の主治医が「トランプ氏は200歳まで生きるようにしている」と発言するなど、人は永遠の生命をもつ「サイボーグ」に向かうのではないでしょうか。記憶や感情をデジタル化して無限の生命をもつロボットに埋め込む時代になれば、SFの世界が現実のものになるかもしれません。オリンピックでも、米国や中国、ロシアも人の肉体改造に踏み込んでおり、人とロボットの境界があいまいになるなか、技術と人の関係をとらえ直すべきです。どうすれば、人らしい生命を大切にできるのでしょうか。
菅沼 人体に機械を埋め込んでロボット化しても、「サイボーグ」の世界にはなりません。人は知性を過大評価していますが、この地球に生命が生まれてから38億年のなかで、さまざまな予期せぬことが起こっており、自然には人の力はおよばないからです。人間の知性が考え出したものには限界があります。パンデミックは、自然や生命の姿を見つめ直す機会と感じています。
藤 2040年代には、AIが人の知能を超えるシンギュラリティが起こると言われています。しかし、しっかりとした人間観を有する人であれば、人間はアルゴリズムだけで動くとは考えません。今の人類は分類や抽象化など一部の能力は100年前より発達していますが、身体能力は衰え、脳は縄文時代より小さくなったと言われています。
AIのアンドロイドに人の記憶データを移しても、不老不死にはなりません。人はコンピューターなど、自らつくり出したものから影響を受けすぎではないでしょうか。リモートワークや外出自粛、会食禁止などでコロナうつが広がっており、人間味あふれる活動ができない社会は、人の生き方として無理があることが明らかになっています。「生き生き」という雰囲気はAIには表現できず、感情は人の財産でもあります。論理だけでなく、生命観や人間観をしっかりと考える時代になってほしいと考えています。
菅沼 紀元前の縄文土器や殷の時代の青銅器を見ていると、造形や色、大きさの完成度が高く、その美的感覚は今より優れているほどで、人の感性は時代を経ても進歩しないのだなと感じます。技術が進歩しても、この地球の自然や歴史から謙虚に学び、傲慢になりすぎないことが大切ではないでしょうか。
(了)
【石井 ゆかり】
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。菅沼 光弘(すがぬま・みつひろ)
アジア社会経済開発協力会会長。東京大学法学部卒業。1959年に公安調査庁入庁。入庁後すぐにドイツ・マインツ大学に留学、ドイツ連邦情報局(BND)に派遣され、対外情報機関の調査に携わる。帰国後、対外情報活動部門を中心に、元公安調査庁調査部第二部長として旧ソ連、北朝鮮、中国の情報分析に35年間従事。世界各国の情報機関との太いパイプをもつ、クライシス・マネジメントの日本における第一人者。主な著書に『この国を脅かす権力の正体』(徳間書店)、『日本人が知らない地政学が教えるこの国の針路』(KKベストセラーズ)、『ヤクザと妓生がつくった大韓民国』(ビジネス社)、『米中新冷戦時代のアジア新秩序』(三交社)など。藤 和彦(ふじ・かずひこ)
(独)経済産業省経済産業研究所コンサルティング・フェロー。1960年生まれ、愛知県名古屋市出身。早稲田大学法学部卒。84年通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギーや通商、中小企業政策などの分野に携わる。2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、16年から現職。主な著書に『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』(PHP研究所)、『石油を読む―地政学的発想を超えて 』(日経文庫)、『原油暴落で変わる世界』(日本経済出版社)など。関連キーワード
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