テスラは電気自動車の最後の勝者になれるのか?
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
二酸化炭素の排出抑制など、環境への配慮を優先する機運が高まり、自動車業界でも電気自動車へのシフトが本格化している。そのような状況下で、新型コロナウイルスによるパンデミックは、電気自動車の普及をより一層促進させ、内燃機関車の終焉を早める結果となっている。現在はテスラの独走が続いているが、今後はどのような展開になるだろうか。
電気自動車の急激な市場拡大を予想
1月4日に発表された電気自動車の市場調査会社EV-volumesの集計によると、昨年の世界の電気自動車販売台数は313万台を上回った。この数字にはプラグインハイブリッドも含まれている。
EV-volumesの統計によると、内燃機関車の販売台数は前年同期比で15%以上減少している反面、電気自動車の販売台数は約38%も増加したことが明らかになった。電気自動車の普及が加速すると、電気自動車は今後10年で全自動車販売シェアの50%を占めることが見込まれている。
電気自動車市場では、テスラがこのまま独走を続けるのか、それとも形勢が逆転して既存の自動車メーカーに軍配が上がるのか、多くの人々が固唾を飲んで今後の推移を注視している。今後2、3年が世界各国の電気自動車メーカーにとっては、成敗を分ける大事な時期となる。各社は、電気自動車専用のプラットフォームを開発するなど、競争優位を保つため全力投球している。
電気自動車の急激な市場拡大が予想される理由としては、3つの地域で、電気自動車に有利な政策が推進されているからだ。まず、EUでは2030年まで電気自動車を3,000万台普及させるという具体的な目標が掲げられている。米国では、新しく大統領に当選したバイデン新大統領が電気自動車時代の到来を早めたいと言っている。加えて、電気自動車で世界1位の座を狙っている中国にとっては、電気自動車の普及が政策の目玉になるのは間違いない。実際に、中国は25年までに電気自動車の比重を25%に高めるという目標を掲げており、これが実現されると中国市場は年間700万台の規模となる。
テスラの独走
このように電気自動車市場が急速に成長しているなか、テスラはさらに成長を続けている。昨年、テスラは世界で49万9,550万台の電気自動車を販売し、当初の目標をほぼクリアした。テスラは18年には25万台の販売実績、19年には27万台の販売実績を出し、結果的に2年間で販売台数を2倍に拡大した。
テスラは他社の追随を許さず、生産量をさらに増やし、価格をさらに下げようとしているようだ。テスラは中国での生産能力を2倍に拡張し、中国市場で順調に成長している。テスラの快進撃で同社の株価も連日、高騰していた。昨年7月にはテスラの株価は上昇を続け、米国株式市場で時価総額が2,105億ドルとなり、トヨタ自動車の時価総額を抜いたことが報道され、話題となった。テスラの株価はその後も上昇を続け、今年1月7日にはニューヨーク証券市場で前日比7.94%も急騰し、816.04ドルの値を付けた。これによってテスラの時価総額は7,735億2,500万ドルに膨らんだ。
ところが、最近になって4週間連続でテスラの株価は下落し、3カ月ぶりに600ドルを下回る展開になっている。これほど株式市場でテスラに注目が集まっている理由は、テスラがこれから本格化する電気自動車時代に業界をリードする会社になる可能性があるという期待感であろう。加えて、CEOであるイーロン・マスク氏のファンが多く、マスク氏のリーダシップと革新性への期待が数字に織り込まれているだろう。
一方、テスラの株価に対するバブルを警戒する声も少なくない。自動車市場全体でシェア1%にも満たない実績であるテスラに対して、現在の評価は高すぎるという指摘だ。電気自動車は内燃機関車に比べて部品数も減り、作りやすくなったとはいえ、自動車の製造は長年の蓄積された経験が必要となるので、結果的には既存の自動車メーカーに有利になるとみている向きもある。
ただし、既存の自動車メーカーは既存の販売網で電気自動車にシフトすると、自分で自分の首を絞める結果となる「しがらみ」が多すぎる反面、そのような制約がないテスラに分があるとするなど、今のところ、その展望はわかれている。
テスラに対抗する既存の自動車メーカー
既存の自動車メーカーでは、ドイツのフォルクスワーゲングループの動きがもっとも目立っている。フォルクスワーゲンは電気自動車専用のプラットフォームである「MEB」をベースにした2世代目の電気自動車である「ID.4」を発売予定である。
最初の電気自動車モデルとなった「ID.3」を昨年9月に発売して以来、ヨーロッパ市場において販売台数で1位、2位を争っている。ID.4が成功すると、フォルクスワーゲンは電気自動車市場でテスラについで2位の座を占めることになるだろう。
一方、韓国の現代自動車や日本のトヨタ自動車(株)も今年、電気自動車専用プラットフォームをベースに製造した電気自動車を市場に投入する予定である。現代自動車は専用プラットフォームである「E-GMP」をベースに製造した電気自動車を発売し、同分野で世界5位に入ることを目指している。今までハイブリッドに力を入れていたトヨタも、昨年の年末に電気自動車の専用プラットフォームである「e-TNGA」をお披露目した。ドイツのベンツやBMW、 アメリカのゼネラルモーターズ(GM)など、世界自動車各社は電気自動車の真剣勝負に備えて、その準備に余念がない。
電気自動車のコア部品である電池の開発も、競争力の確保には欠かせない。テスラを始め、電気自動車メーカーは電池メーカーから電池を購買していたが、電池の内製化も進めている。とくに、次世代電池と言われている全固体電池の開発においては、各国の熾烈な競争が繰り広げられている。
今後もテスラの電気自動車市場での独走が続くのか、それともテスラの独走は終わり、新しいステージの展開になるのか、その動向が全世界で注目されている。裾の広い自動車産業において、電気自動車時代にはどのような変化が待ち受けているのか、興味が尽きない。
(了)
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