コロナとニューヨーク~そして、春がまたやってきた(前)
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大嶋 田菜(ニューヨーク在住フリージャーナリスト)
今年の1月と2月のニューヨークはいつもより寒かった。雪はたっぷり降った上に、積もった雪も1カ月近く融けずに残った。北極からの冬風が普段より強くアメリカの東海岸まで吹き出したため、ニューヨークでは最高気温が0度を越えない日が2週間ほど続いた。
そんな寒さのなかでも、ニューヨーク人は喜んだ。もちろん地下鉄が停止したり商店が休業したりと面倒なこともあったが、今のパンデミック時代では慣れきっていることだ。それより、町が真っ白に輝いていることのほうが大事だったのだ。
気温が−7度という寒い日でも、どの公園も混み合った。人々は、1mほど積もった雪のなかで写真を撮ったり、雪文字を書いたり、スキーをしたり、雪だるまをつくったり、雪合戦やソリ遊びなどをした。白いキノコのような雪だるまがいくつも町中に現れた。道端に駐車してある自動車の上、曲がり角、木の枝の間にも、小型の雪だるまがきれいにつくられていた。朝一番から路面に積もった新雪は除雪トラックにより道路脇に除雪されたが、高さ1mを越したその脇に積もった雪が泥や犬の尿、鳥の糞で汚れる前に、大人は急いで雪だるまをつくっていた。
そのような冬が続くなか、突然にして春の気配が訪れた。まだ気温は低いのであるが、陽光の強さ、空の色、音の響き具合、鳥の鳴き方はたしかに春らしくなっている。もういくら冬に戻ろうとしても戻れない。いくら寒くても、この春の「生命力」は誰にも止められない。
2月2日の朝、ペンシルバニア州のパンクサトーニで飼育されているジリスの一種であるグラウンドホッグの「フィル」君が小屋から出てきて、自分の影が冷たい地面の上に映っているのを見た。空はきれいに晴れていた。
冬眠から目覚めたグラウンドホッグの行動から春の訪れを占うという19世紀に生まれたこの伝説は、アメリカ中で知られている。グラウンドホッグが自分の影を見たという行動から、今年は冬がまだあと6週間続くと予報されたのだ。昨年2月2日は曇っていて、フィル君の影は地面に映らなかった。それは春が早く来るという知らせだった。もちろん、これはただの伝説であり、ほとんどの場合、その予報は当たらない。今年も春はすでにやってきていて、あたりそうにない。
(つづく)
※画像は著者撮影、提供
<プロフィール>
大嶋 田菜(おおしま・たな)
神奈川県生まれ。スペイン・コンプレテンセ大学社会学部ジャーナリズム専攻卒業。スペイン・エル・ムンド紙(社内賞2度受賞)、東京・共同通信社記者を経てアメリカに渡り、パーソンズ・スクールオブデザイン・イラスト部門卒業。現在、フリーのジャーナリストおよびイラストレーターとしてニューヨークで活動。関連キーワード
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