市町村大合併を拒否、過疎化でも村の地場産業を復活(後)
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市町村大合併を住民の6割が拒み、単独で生き残る道を選んだ岡山県西粟倉村。過疎化に負けず、村の資源を生かした地場産業の林業を復活させた。さらに、過疎地で深刻な問題となっている介護や子育てなどについては、地元のローカルベンチャーが行政と連携してサポートする。独自の村おこしを追った。
地場産業を復活
西粟倉村では、地域資源の木材を村内で内装材や家具に加工し、工務店や家具工房、個人客に直接販売している。木材をそのまま市場に出荷すると1m3あたり1万円前後であるが、付加価値を付けると収益は20~30倍にもなり、川上の林業の経営強化にもつながる。
西粟倉百年の森林(協)が木材の丸太を引き受けて流通・販売を管理し、(株)西粟倉・森の学校、(株)木の里工房・木薫、(株)ようびなどが住宅用内装材や家具に加工。端材は合板工場や市場に供給するほか、(株)sonrakuが薪やチップにして、温泉や公共施設の熱供給またはバイオマス発電に利用している。
また、遠方の都市に住み、手入れができない山林所有者が多いことから、三井住友信託銀行と提携して国内初の森林商事信託事業を開発した。山林を集約して、所有者の代わりに管理する体制も構築している。
今後の課題に、山の尾根など搬出コストがかかり生産に適さない場所の利活用がある。豪雨時の山腹崩壊を防ぐために、土壌の保持能力が高い広葉樹などの環境林に転換することもその1つ。また、麓の民家の近くでメープルシロップを生産するなど、短い周期で収益が上がる「アグリフォレスト(森林農業)」に切り替えて、木材生産にとどまらず、森林の価値を最大化していくことも計画している。
移住者が多い西粟倉村
西粟倉村は都会からの移住者が多く、住民の1割を占める。その背景には、すでに多くの移住者がいることから新たに来た人もコミュニティーに入りやすいことや、交通の利便性が良くて帰省しやすいことがある。
保育園は日曜日を除く午前7時から午後7時まで、待機児童なしで子どもを預けられる。子育て環境を整えているため、「自然のあるところで幼少期の子どもを育てたい」と移住するケースも多い。
また、西粟倉村と関わる人を増やすために、エーゼロが運営する地域メディア「Thorough Me(スルーミー)」や「西粟倉アプリ村民票」で、起業支援など村の取り組みに関する情報を発信している。
西粟倉村役場地方創生推進室長・上山隆浩氏は、全国の過疎地の村おこしについてこう語る。
「地域の本質的な課題や地域の資源を生かすことから目を背ける事例が多いように感じます。成功している自治体は、使われていない地域資源を生かして地域内で経済をどう活性化するかを議論しています。西粟倉村でも取り組んでいる水力発電などの再生可能エネルギーも、その1つですね」。
上山氏は全国の過疎地に向けて、「こんな地域になればいいねというビジョンはどこでも掲げていますが、具体的なプロジェクトが動いていないことが多く、誰がどう実行するのかまでは見えていません。こんなビジョンをもつ村に移住すれば、このプロジェクトでチャレンジできるという情報を共有し、共感して参加できるというイメージを描ければ、移住者も入りやすいはずです」とアドバイスしている。
(了)
【石井 ゆかり】
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