2024年07月18日( 木 )

国民の多数が五輪開催に反対の意味

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、五輪開催を断念してコロナの収束に全力を注ぐべきだと訴えた3月9日付の記事を紹介する。

国民の税金を投入して、ワクチンメーカーに巨大な利益を供与する必要があるか。

ワクチンの安全性は十分に確認されていない。通常のワクチン認可を得るには第3相治験が必要不可欠だ。しかし、コロナワクチンでは第3相治験が省略されている。第3相治験がもっとも困難なハードルで、これをクリアできなければ開発費用を回収することはできない。第3相治験が省略されれば、開発メーカーは濡れ手に粟の巨大利益を獲得できる確率が格段に高まる。

コロナウイルスの変異スピードは速い。流行の中心が、ワクチンが有効でない変異株に代替される可能性は低くない。この場合、ワクチンは無用の長物になる。

ワクチンによるアナフィラキシー反応が報告されている。すでに国内で17例も確認されている。オーストラリアではワクチン接種後に死亡する事例が確認された。日本でもワクチン接種後の死亡事例が報告されている。もとより、若年の健常者の場合、コロナに感染しても重篤化する確率は著しく低い。リスクのあるワクチンを接種する積極的理由が見当たらない。

ワクチンよりも検査を優先すべきだ。検査を拡充して陽性者を徹底的に洗い出す。その陽性者が感染を拡大させない措置を徹底する。

医療崩壊を防ぐには病床数を確保することが重要だ。宿泊療養施設の確保も重要である。日本は人口あたりベッド数が多いにもかかわらず、コロナで医療崩壊が生じた。コロナ病床を十分に確保してこなかったからだ。

政府が国立病院、公立病院、大学病院のコロナ病床を確保するべく指導力を発揮すべきだった。巨額の補正予算を計上したのであるから、予算での補償が十分に可能である。これを疎かにしたために医療崩壊が生じた。

同時に、検査拡充を行わなかったから、感染を収束させることができない。逆に菅内閣はGoToで感染を拡大させる愚策を実行した。このために、日本は東アジアで最悪のコロナ被害を発生させた。

菅内閣はこの右往左往のコロナ対策を続ける下で、東京五輪を開催しようとしている。世界の笑いものになっている。

新規感染者数が1月8日をピークに減少してきたが、減少傾向が鈍っている。人の移動は昨年末から1月末まで抑制されていたが、2月に入った後、明確に増加に転じた。世界的に感染第3波は1月にピークを迎えて2月末までに減少したが、3月に入った後に増加に転じている。

菅内閣は緊急事態宣言を順次解除し始めており、3月末にかけて、日本全国で人の移動が急拡大する可能性が高まっている。こうなると、4月から5月にかけて感染第4波が顕在化する可能性が高まる。

3月25日から予定されている聖火リレーも人々の密集をもたらすもの。二兎を追う者は一兎をも得ない。コロナ収束と五輪開催は真逆のベクトルを有している。五輪開催はコロナ収束放棄を意味し、コロナ収束優先は五輪開催断念を意味する。子どもでもわかるロジックを理解すべきだ。

菅内閣は昨年12月28日までGoToトラベルを止めなかった。感染が拡大している東京都などをGoToから除外したが、東京着を止めただけで東京発を止めなかった。

ウイルスを日本全国にまき散らす意味で、より影響が大きいのが大都市発のGoToトラベルだ。GoTo再開などという悪い冗談が検討されていると報道されるが、菅内閣はこれ以上、利権優先の行動を取るべきでない。菅内閣の倫理観の欠落が惨事を招く主因になっている。

若年の健常者がコロナで重篤化するリスクは低いことが明らかになっているが、基礎疾患をもつ人、高齢者への影響は異なる。

今年1月、コロナでの1日当たり死者数が100人を大幅に超えた。年率換算で4万人の死者発生の事態は深刻だ。決して「ただの風邪」ではない。国の政策として、コロナ収束が最優先であるべきことは間違いない。

コロナ収束を実現するには、検査の拡充と感染者の隔離が必要不可欠。この2点を疎かにしてきた点に菅内閣の罪がある。

感染収束を目指さずに、利権追求に走った。GoToトラベルへまっしぐらは利権優先の典型事例だ。検査拡充を疎かにし続けてきたのは感染研ムラ、検査利権ムラの利権体質が主因だった。「検査と隔離」の基本を無視し、感染拡大策を併用するからコロナ収束を実現できない。

そこに五輪開催強行という天下の愚策が加わる。支離滅裂、右往左往内閣による行政の采配下に置かれる日本国民は不幸である。国民が声を上げて内閣の失態を是正しなければならない。

利権体質が染みついたマスメディアが偏向報道を繰り返す。五輪開催に国民の8割以上が反対しているときに、五輪開催を無観客にするか有観客にするかを聞いても意味はない。わずか1割の五輪開催派のなかの一部が有観客を希望しているに過ぎない。国民主権の国において、国民の8割から9割が五輪開催に反対しているという事実は決定的に重要だ。

橋本聖子五輪組織委員会会長は五輪開催ありきでないことを強調している。橋本会長は、少なくとも国民の過半数が五輪の今夏開催に賛成する状況を生み出すことが必要だ。これを実現できなければ五輪開催中止を判断すべきだ。

日本各地で予定されていた各国選手団の事前合宿については、キャンセルの打診が相次いでいる。変異株が広がるなかで、遅ればせながら日本も1月13日から水際対策を強化した。外国人の入国が厳しく制限されている。この状況下で外国人の入国は困難を極めるから事前合宿どころでない。選手選考大会も開催が危ぶまれている。五輪開催強行論は利権確保以外の何の意味ももたない。

その一方で、五輪開催は日本への変異株持ち込みという重大リスクをもたらす。日本への訪問者もそのウイルスを自国に持ち帰ることになる。

菅首相は「人類がコロナに打ち勝った証としての東京五輪を開催する」と宣言したが、東京五輪までに「人類がコロナに打ち勝つ」可能性はゼロになった。日本ではワクチン接種も遅々として進まない。日本の国民の多くはワクチン接種を忌避する賢さを備えているとみられる。

五輪を早期に断念して、早期にコロナを収束させることに全力を集中すべきだ。これが日本の主権者・国民の総意である。

#東京五輪の中止を求めます
の運動を国民運動に発展させることが求められる。


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植草一秀の『知られざる真実』

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