2024年12月24日( 火 )

元福岡市長の故・山崎広太郎氏追悼(4)「住民自治の理想を追い求めた政治家」貞刈厚仁氏・博多座代表取締役社長

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住民自治の理想を追い求めた政治家だった

【談話】貞刈厚仁氏 (株)博多座代表取締役社長

 私はこれまで進藤一馬さん(25~28代)から桑原敬一さん(29~31代)、山崎広太郎さん(32~33代)、吉田宏さん(34代)、そして現市長である高島宗一郎さん(35~37代)の5人の市長に仕えてきました。ただし、進藤さんのときは私がまだ若手の時なので仕事であいさつしていただく程度。桑原さんのときは係長時代で、直接一緒にお仕事をする機会こそあまりありませんでしたが、少しずつ市長との距離が近づいていたころです。

 山崎市長時代は私が都市開発部長のときでした。ちょうど博多リバレインの後始末をやっていたときです(博多リバレインは02年に運営会社破綻で一時閉鎖)。企画調整部長時代はオリンピックの時ですか。あのころは財政再建の時代だったので、残念ながら前向きな仕事をどんどん進めるという雰囲気ではなかったですね。バブルが崩壊した後に土地開発事業がおかしくなって、諸々の後始末がメインの仕事だったりしました。

 山崎さんは福岡市議会議長もして国政にも出られたので、良く存じていました。桑原さんが「都市・福岡」の基礎をつくられて、そのときに山崎さんが議長もされていたので当時は2人が両輪のようなイメージでした。だから国政から戻ってこられて桑原さんの対抗馬になったときには少し複雑な心境というか(笑)。

 時代背景もあるのでしょうが、山崎さんは都市開発よりも住民自治のほうに大きく舵を切られた。住民自治を大きく変えなければいけないと、公務員のDNA運動()など、組織内改革に力を入れていました。当時は時代背景的になかなか都市開発の話ができない時代になっていたこともあって、方向性としては私とは少し違うのかなという印象はありました。

貞刈氏の著書『Ambitious Cityー福岡市政での42年』(松影出版/2020年2月発刊)
貞刈氏の著書『Ambitious Cityー福岡市政での42年』
(松影出版/2020年2月発刊)

 オリンピック招致は多少唐突でしたが、山崎さんから相談されたこともあって「やれるのなら、ぜひやりたい」という話をしたことを覚えています。オリンピックは山崎さんが市長として初めて大きく打ち出す全国区の企画でした。都市政策的にみればそれまでもイベント・コンベンションをやってきたので、もしオリンピックを呼ぶことができれば大きく飛躍できるという思いがありました。桑原さんのときにユニバーシアードをやったのは、当然先々にオリンピックをやりたいという思いがあったのでしょう。ただし、福岡市の財政状況で本当に開催できるのかという声が地元経済界の一部にはありました。当時は国が補償することはないという話だったので、財政的補償もなしで市の単体でできるのかと。やると決めてからは経済界の皆さんに協力していただきましたが。

 バブルがはじけた後で、財政再建ありきの時代に市長に就任されたのが山崎さんでした。議会のたびに「債務をどれくらい下げるのか」「財政再建はどうなっているのか」と、そんな後ろ向きのことばかり話題になる時期でしたので、さまざまな方面で軋轢はあったのかもしれません。山崎さんがやられたことは自治協議会の導入で、それぞれの校区を自治協議会方式にしてより自治制を高めるかたちにしようとされた。きちんと機能すればそのこと自体は決して悪いことではないと思います。プラス面、マイナス面をきちんと評価すべきでしょうね。

 山崎さんを仕事で評価するとすれば「住民自治の理想を追い求めた方」ということでしょうね。ただ少し、実務的なことだけは苦手だったのかな。市長職というのはやることがものすごく多いので、なかなか理想だけを追い求めるわけにはいかなかったかもしれません。山崎さんにはもう少し、福岡市がどう発展していくのかを見ていてほしかったですね。ご冥福をお祈りします。

註=市職員の意識改革運動の1つ。「DNA」は、D「できる」から始める、N「納得できる仕事」をする、A「遊び心」を忘れない、の略称 ^

<プロフィール>
貞刈 厚仁
(さだかり・あつひと)
1954年生まれ。77年に九州大学経済学部を卒業して福岡市役所入庁。桑原市政の89年に開催されたアジア太平洋博覧会では企画運営に携わる。九州大学統合移転では伊都キャンパスの買収担当主査。博多リバレイン・スーパーブランドシティ破綻問題では都市開発部長として事態収拾に奔走。高島市政では8年間、総務企画局長・副市長。19年6月から現職。

【データ・マックス編集部】

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