【横田一の現場レポート】菅政権を揺さぶる「菅官房長官の不在」と独裁者気質
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菅総理には菅官房長官がいない
新型コロナ禍に代表される日本が直面しているほぼすべての問題について、菅義偉首相の後手対応が批判されている。当初は7割を超えた内閣支持率も急落、これは菅政権がそもそも「何もしていない」ことに原因がある。新型コロナ感染拡大の第3波では、小池百合子都知事との責任なすりつけ合いでGoToキャンペーン見直しが遅れに遅れ、結局、年末年始の感染拡大を招いた(本サイト1月19日公開記事「コロナ第三波、菅首相・小池知事の“A級戦犯コンビ”を問いただす」で紹介)。
しかも緊急事態宣言発令は年明けにずれ込み、共同責任を負うべき“A級戦犯コンビ”の小池知事らの要請後となったため、菅首相に批判の矛先が向かう羽目になった。総務省出身の山田真貴子・内閣広報官の辞職も、いったん決めた続投方針が党内外から批判噴出で撤回に追い込まれ、傷口を広げることになった。7万円を超える高額接待が発覚した2月22日の時点ですでに辞職必至の情勢だったのに、菅首相は「そのまま続投してほしい」と語り、山田氏も辞職を否定して同調。さらに山田氏が司会をする首相会見を囲み取材に変更もしたが、これが「山田広報官隠し」の批判を呼び込み、結局、山田氏は3月1日に体調不良を理由に退職をした。党内からも「早く辞職させるべきだった」という声が出たのはこのためだ。
政権運営に悪影響を与える危機的状況を回避できないのは、総裁選当時から懸念されていた「菅総理には菅官房長官がいない」(安倍前首相)という問題が未解決のために違いない。安倍政権時代には官房長官だった菅氏が事態悪化の予兆を察知して素早く手を打ってきたが、現在の菅政権にはこうした危機管理に秀でた“番頭役”が不在なのだ。
菅政権崩壊の遠因は自業自得の「独裁者気質」
「負けたら『安倍首相では選挙は戦えない』という見方が党内に広がって、直後の総裁選勝利に黄信号が灯る」と言われた2018年6月の新潟県知事選で菅官房長官(当時)は、自公推薦の花角英世候補(現・知事)の危機的状況回避に貢献していた。創価学会で選挙を仕切る佐藤浩副会長(当時)と自民党新潟県連幹部との関係が悪化、自主投票寸前となった際、菅氏が県連幹部を呼びつけて謝罪させた結果、関係修復が一気に進んで創価学会がフル稼働することになったというのだ。
3月2日の文春オンラインが「創価学会の選挙担当が辞めた――菅・佐藤“SSライン”消滅の大波乱」と報じた「菅首相と佐藤浩副会長のSSライン」は、その後の政権運営を左右する重要選挙で絶大なる力を発揮してきたが、新潟県知事選でもしっかりと機能していたのは間違いない。しかし首相となった菅氏には、第二次安倍政権時代の自身と同じような役割をこなす“番頭役”がいない。これは、指示通りに動くイエスマンは優遇するが、意見を言う官僚は冷遇するという「スガーリン」こと菅首相の独裁者的姿勢が遠因になっている可能性がある。
東北新社の外資規制違反(放送法違反)問題を“発掘”するなど、総務省接待問題の追及を続ける元総務官僚の小西洋之参院議員(立民)はこう話す。
「ふるさと納税の問題点を述べた総務官僚(平嶋彰英・立教大教授)が左遷されたのが典型ですが、菅首相は自分の言うことを聞く人間は出世させ、言うことを聞かない人は更迭する。まさに恐怖政治です。菅首相の長男から接待を受けた総務官僚は多数いますが、断る選択肢はない。上司に相談したとしても、その上司も接待を受けていますし」
菅政権(首相)が陥った後手対応スパイラルは、危機管理能力に秀でた番頭役の不在と、意見具申を躊躇(ちゅうちょ)させる“スガーリン恐怖政治”が二大要因といっていい。
【ジャーナリスト/横田 一】
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