2024年12月23日( 月 )

コロナ禍深刻化五輪は中止が妥当

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「東京五輪中止決定とともに菅義偉内閣退場の実現を目指す必要がある」と訴えた4月6日付の記事を紹介する。

菅義偉氏の得意技は「後手後手・小出し・右往左往」。

4月5日の参議院決算委員会で菅義偉氏は
「現時点で第4波ではないが強い警戒感をもって対応する必要がある」
と述べた。

大阪府では連日、過去最高の新規陽性者数が確認されている。
明らかに第4波が生じている。
この段階で抜本策を取らないから感染が著しく拡大する。
対応が遅れる。
しかも小出しの対応。

感染推進策から感染抑制策に一気に振り子が振れる。
そして、また、安心できる状況でないのに警戒を解除してしまう。
挙句の果てにGoto再開まで言い始める。

「後手後手・小出し・右往左往」でどれだけの損失を生み出しているか。
菅義偉氏は責任を痛感して職を辞すのが適正だ。
本人が自発的に動かぬなら主権者である国民が菅義偉氏を更迭することが正しい対応。

菅義偉氏は昨年9月の自民党党首選で
「私ども(政治家は)選挙で選ばれている。
何をやるという方向を決定したのに、反対するのであれば異動してもらう」
と述べた。

その菅義偉氏に私たちは次の言葉を伝える必要がある。
「私どもは日本の主権者である。
私たちが方向を決定したのに、反対するのであれば異動してもらう」

私たちは現時点の最重要政策課題はコロナ感染収束であると判断している。
感染抑止と感染拡大推進の間で右往左往する菅内閣の行動は国民の意思に反するもの。
菅首相更迭に値する。

すでに第4波が日本を襲っているのに、「第4波でない」と言い張り、抜本策を取ろうとしない。
感染拡大が本格化するのを待っているようにしか見えない。

誰の目にも感染爆発がはっきりした時点で、慌てふためいて緊急事態宣言を再発出するのだろう。
同じ愚を繰り返すのはやめていただきたい。
ほとんどの国民がこの思いだろう。

変異株が国内に流入した責任も菅義偉氏にある。
昨年12月中旬に英国で変異株が確認された。
直ちに入国規制の厳格化が必要だった。

ところが、菅首相は12月28日に表明した入国規制強化策をザル対応にした。
入国の太宗を占めるビジネストラック、レジデンストラックによる入国を停止しなかった。
「対象国で変異株の国内感染が確認されたら止める」
の対応を主張した。

最悪の危機管理。
対象国で変異株の国内感染が確認されてからでは手遅れなのだ。
「水際対策」の意味すら理解していない。
変異株の流入を防ぐには、最初の段階で外国人の入国を止めなければならない。

菅内閣がビジネストラック、レジデンストラックの入国を止めたのは1月13日。
2週間の遅れが致命的だった。
変異株が完全に日本国内に流入した。

北朝鮮が東京五輪不参加を公表した。
「政治的背景がある」との主張が流布されているが、北朝鮮の決定は極めて合理的だ。

日本はいま感染第4波の入り口にいる。
変異株の感染急拡大が想定されている。
ワクチン対応も決定的に遅れている。

まともな判断力を持つ国は東京五輪への参加を取りやめるだろう。
「追い込まれ中止」になる前に日本政府は東京五輪断念を判断すべきだ。

五輪組織委員会は利権五輪を強行するためにアスリートを政治利用している。

昨年11月の体操国際大会閉会式で体操選手の内村航平氏が
「『できない』ではなく、『どうやったらできるか』を皆さんで考えて、どうにかできるように、そういう方向に変えてほしい」
と発言した。

この内村発言が五輪組織委員会に利用された。

森喜朗五輪組織委元会長が2月2日に
「コロナがどのようなかたちでも必ず(五輪を)やる」
と述べた背景に組織委による内村発言利用の基本路線があったと見られる。
しかし、森喜朗氏発言はオリンピズムの根本原則に明らかに反している。

オリンピズムの根本原則2に次のように記されている。
「オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである」

五輪は、「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会」を推進するためにスポーツを役立てることを目的としており、その逆ではない。
「世の中がどうなろうと必ず五輪を開催する」というのは、オリンピズムの根本原則を踏みにじる暴論そのもの。

森氏の暴言によって内村氏の発言は効力を失った。

アスリートの気持ちを代弁した内村氏の心情は十分に理解されるが、組織委員会が五輪開催ありきのスタンスを示すことは完全なる誤りだ。

利権五輪開催強行を目指す組織委と菅内閣は、新たに池江璃花子氏を政治利用している。
池江氏の努力と成果は見事なものだが、池江里佳子氏を利用して五輪開催強行を正当化することは適正でない。

国際水泳連盟は日本で開催予定の3つの大会を中止する可能性を示している。
日本のコロナ対応に問題があることを理由としている。
しかし、メディアはこの重大事実を大きく報道しない。

コロナ感染第4波が始動するなかで、聖火リレーを強行することも適正でない。
聖火リレーの実態は商業イベントそのもの。
島根県知事が聖火リレーについて、スポンサー車列の排除を提言したが、当然の正論だ。

スポンサーの大型車列が大音響を鳴り響かせて実施する聖火リレーはオリンピズムの根本原則の対極にあるもの。
五輪が商業イベントであることを高らかに宣言するものになっている。

その聖火リレーが感染を促進している。
五輪組織委が強行している聖火リレーは商火リレーであり、オリンピズムの崇高な精神も国民の平和と幸福を目指す理念のかけらもない醜悪なもの。

適正な判断力を有する諸外国が北朝鮮に続いて東京五輪への不参加を次から次に表明することが望まれる。

五輪は人間の尊厳に重きを置く平和な社会の推進のために実施されるもの。
人間社会が疫病で困難に直面しているときに、その困難を増幅させてまで実施すべきものでない。

このような基本すら理解しない、五輪の政治利用、五輪の利権追求だけを求める勢力による商業五輪強行に対して、主権者である国民が明確なNOの意思を突き付けるべきだ。

菅内閣は3月21日をもって緊急事態宣言解除を強行したが、この時点ですでに感染は再拡大していた。
首都圏よりも先に制限を緩和した関西圏はいま、第3波のピークを上回る感染拡大に直面している。

政策の不完全さ、右往左往の対応が事態悪化に拍車をかけている。
第4波到来が明確であるのに第4波到来を認めず、感染抑止策発動が遅れて感染拡大が一段と深刻化する。

取り返しのつかない事態が生じて初めて第4波到来を認める愚行が繰り返されることを主権者国民は放置すべきでない。
東京五輪中止決定とともに菅義偉内閣退場の実現を目指す必要がある。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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