2024年11月24日( 日 )

日米首脳会談で五輪中止仰天シナリオ

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「4月16日の日米首脳会談で菅首相が東京五輪の中止を提言して、バイデン大統領がこれに同意するとの仰天シナリオが隠されている可能性を否定できない」と訴えた4月15日付の記事を紹介する。

菅内閣を誕生させたキーパースンである二階俊博自民党幹事長が、東京五輪について
「何が何でも開催するというのは違う」
「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなきゃいけない」
と述べた。

日本の権力中枢が五輪中止の可能性について明言した影響は大きい。

世界的に東京五輪開催に否定的な世論が圧倒的多数を占める。
海外の市民の声を調査する世論調査では、中止、延期など、今夏の東京五輪開催を否定する者が7割を超えている。
日本国内でも同様。

コロナ感染が第4波に移行している。
第4波の中心は英国由来(ブラジル、南アフリカ由来もあり)のN501Y型ウイルスが中核になっている。
N501Y型ウイルスはこれまで関西で主流を占めてきたが、関西以外でも感染の主流になりつつある。

4月15日の東京都新規陽性者数が729人になった。
1,000人を超えるのは時間の問題と考えられる。
感染拡大は人流拡大から時間差をともなって表面化する。

菅内閣は3月21日をもって緊急事態宣言解除を強行した。
しかし、すでにこの時点で新規陽性者数は再拡大に転じていた。
季節的に人流が拡大するタイミングで緊急事態宣言解除を強行すれば、人流が激増することは明白。
そのタイミングで緊急事態宣言を解除し、予想通り人流の急拡大を招いた。

3月26日に人流拡大がピーク値を記録したが、4月15日前後の新規陽性者数は3月26日前後の人流拡大を背景にしている。
新規陽性者が新たな感染をもたらすから、当面は新規陽性者数の増加が続く。

日本のワクチン接種は著しく遅れている。
しかも、ワクチン接種には重大なリスクが付随する。
ワクチン接種後に脳出血で死亡する事例が報告されている。
政府は因果関係を速やかに認めない。

「因果関係」の有無は「人為的に」判断される。
「因果関係はない」と主張し続けることは可能だ。

福島の原発事故後に子どもたちの甲状腺がんが急増しても、
「因果関係はない」
と主張し続けられるのと同じ。

国連に関連した機関が人為的判断で「因果関係がない」と主張すれば、それが錦の御旗のように用いられる。
本当は因果関係があるのに、因果関係がないことにされてしまう事例は枚挙にいとまがない。
因果関係の有無は「人為的な」判断によって白にも黒にも変わるが、時系列関係の事実は客観的に確定する。

ワクチン接種の数日後に脳出血で死亡した。
しかも、基礎疾患はなく、体調も悪くなかった。
これは客観的事実。

「福島原発事故の後に子どもの甲状腺がんが多数確認された」というのも客観的な事実。
白にも黒にもなる「因果関係」よりも、客観的に確定される時系列関係の事実がはるかに重要だ。

ワクチン接種には重大リスクが付随する。
高齢でない健常者はコロナ感染で重篤化するリスクが低い。
従って、高齢でない健常者はワクチンを接種する合理性が乏しい。
ワクチン接種者が少数にとどまる可能性が高いと考えられる。

安倍内閣、菅内閣が繰り返し「緊急事態宣言」を発出し、さらに「まん延防止等重点措置」を発動してきたのは、政府がコロナ感染拡大を重大な事態であると認識していることを示している。
そのコロナ感染が感染第4波に移行している。
医療崩壊の危機も迫っている。

従って、「これ以上とても無理だ」という状況は目前に迫っている。
菅内閣を発足させた最高実力者が東京五輪中止に言及したことで、東京五輪中止に向けての流れが一気に加速することになると考えられる。

東京五輪中止は正当な判断。
五輪放送の放映料を支払う最大手メディアである米国のNBCが東京五輪組織委員会による聖火リレー強行を批判した。
日本の五輪組織委が何としても五輪を開催したいと考えるなら、五輪開会日程まで、感染抑止に最善を尽くすべきである。

聖火リレーは人為的に密集、密接を生み出すもので、感染拡大を推進するもの。
NBCは五輪組織委員会による感染拡大推進策遂行を批判したのだと思われる。
常識の範疇に入ること。

英国やイスラエルはワクチン接種を急ピッチで進展させて、新規感染者数減少を実現している。
ただし、ウイルスの変異スピードは速く、ワクチンが有効でないウイルスが感染の中心に代わる可能性はある。
また、ウイルスには重大なリスクが付随しており、そのリスクをどう捉えるかとの問題は残る。

リスクを承知の上で積極的にワクチンを接種すると考える国民が多数の国もあるかもしれない。
英国やイスラエルのように目先ではあっても新規感染を抑止できているなら、五輪開催などを検討する余地は生じるかもしれない。

しかし、日本の現状は真逆。
東京五輪までに進捗するワクチン接種は微々たるもの。

東京五輪はワクチンなしが前提になる。
このなかで、N501Y型ウイルスの感染が急拡大している。

大阪は先行して3月1日に緊急事態宣言を解除した。
飲食店等の営業時間短縮を緩和した。
季節的に人流が拡大する3月に合わせるかのように緊急事態宣言を解除して、結果として日本最悪の感染拡大を誘発してしまった。
完全なる人災だ。

大阪での感染急拡大をもたらしたのがN501Y型ウイルスとみられるが、これが関東でも感染拡大の中心に置き換わりつつある。
当面、新規陽性者数の拡大が持続する可能性が高い。

感染者数が急増すれば病床が不足する。
日本の病床数そのものが少ないわけではないが、安倍内閣、菅内閣はコロナ感染症対策としての病床確保を疎かにしてきた。
国公立病院、国公立大学病院における病床確保がまず優先されるべきだが、内閣は指導力を発揮できずにきた。

そのために、新規感染者数増大にともない医療崩壊のリスクが現実のものになる。
結局、緊急事態宣言の再発出に追い込まれる公算が高い。

政府分科会の尾身茂氏は第4波が到来しているとの認識を示しているが、菅首相は
「全国的な大きなうねりとまではなっていない」
と言い張っている。

GoTo事業が感染拡大を推進したことは明白だが、菅首相は
「Gotoトラベルが主要な感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」
と言い張ってGotoトラベルを12月28日まで推進し続けて感染爆発を引き起こした。

「後手後手・小出し・右往左往」が菅コロナ三原則だが、この対応で感染第4波の山が著しく高くなる可能性が高い。

そうなれば、二階俊博氏が主張するように
「スパッとやめなきゃいけない」
ということになる。

しかし、次のシナリオに警戒する必要がある。
4月16日の日米首脳会談で菅首相が東京五輪の中止を提言して、バイデン大統領がこれに同意するとの仰天シナリオが隠されている可能性を否定できない。

菅首相が東京五輪中止を主導して決断。
バイデン大統領の了解を取り付けると内閣支持率が急反発する可能性がある。
その場合は、感染低減を待って衆院総選挙ということも考えられる。

東京五輪中止は正しい判断だが、危機を逆手に取る驚きの政局シナリオには警戒する必要がある。


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