2024年11月27日( 水 )

【参院広島再選挙】25日決戦に向けてネガキャンも 保守王国・広島の有権者はどう動く?

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宮口候補はこれからの母親モデル~嘉田由紀子参院議員

宮口はるこ候補と街頭演説する、前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員(右)
宮口はるこ候補と
街頭演説する、前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員(右)

 『週刊文春』発売2日前の4月13日、本サイト記事「【STOP!文春砲】参院広島選挙区再選挙でネガティブ・キャンペーン?」が公開された。野党批判が目立つツイッター「永田の住人(@sabakuinu)」でウェデイングドレス姿の宮口はるこ氏と地元国会議員秘書との写真を掲載、「本当にシングルなの…?」「シングルマザーが売りだったですけど…。入籍してないだけかな(笑)」と疑問呈示。まるで「シングルマザーとしての子育て経験を語るのなら、未来永劫、新しいパートナーにも子育てを手伝ってもらうのは罷りならぬ」と言わんばかりネガキャンが始まり、しかも告示後初の週末の街頭演説では文藝春秋の記者を目撃した。そこで、「永田の住民」の発信内容を膨らませた週刊誌報道を想定。「まったく問題ないし、問題にする方がおかしい」と呆れていた前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員のコメントを文春発売日の前に紹介したのだ。

「シングルマザーが別れた夫と共同親権で子育てを手伝ってもらうことも、新しく付き合い始めた男性に子育てを手伝ってもらうこともまったく問題がない。『シングルマザー=母親1人で子育てをする』とは限らないし、それにとらわれる必要もない。いろいろな人に力を借りて子育てをすることの何が悪いのか。海外では当たり前のことです」(4月13日の本サイト記事再掲)

    11日に広島駅前で宮口候補の応援演説をした嘉田氏は、同日のうちにフェイスブックで先のコメントと同様の発信を熱っぽくしていた。

「海外ではそもそも『ひとり親』という概念はほとんどありません。親は必ず2人存在する。離婚、再婚をくりかえしながらも『ステップファミリー(義理親を含む家族)』として多様な家族の幸せのかたちを模索している宮口候補には、その経験をぜひとも国政での子育て・女性・家族政策に活かしていってほしいです」

    元夫が支える共同親権も嘉田氏は紹介、「今の時代にふさわしい、これからの母親モデル」と絶賛した。

「18歳になる双子の子どもさんふたり、1人は強度の発達障害をかかえている。年子の3人目の子どももいる。それで政治に出るの? 80歳になる両親は『あなたのできることをやりなさい、応援するよ』と支えてくれている。3人目の子どもさんは『お母さん早くかえって』と寂しがるときにはしっかり抱きしめ応えてあげる。3人の子どものお父さんは医師ということですが理由あって離婚をした。でも子どもの世話、とくに障害をもった長男さんの世話には元夫にもささえてもらい『離婚後の共同養育』を実践している。日本の民法が、単独親権ではなく、共同養育·共同親権になってほしいと訴えていました。そしてシングルマザーだが、実質的に再婚を考えている人もいる。多くの人に支えられながら、政治家への挑戦を覚悟したという。

懐が深くあっぱれです。既存の家族、親子の在り方にとらわれずに、自分が直面した現実から、周囲の人たちを巻き込み、まさに多世代のど真ん中の責任世代として、また責任母親として、子ども育ての基盤を崩さず、ふんばって前に進む。子どもの幸せを第一に優先して、周囲の人たちと〈新しい拡大家族〉をつくる。父子、親子分断ではなく、離婚後の父子交流も繋げながら、今の時代にふさわしい、これからの母親モデルだ、と思います」(嘉田氏のFB)

ネガティブ・キャンペーンは投票行動に影響を与えるか

 この発信から4日後の15日、海外では笑い物になりそうな古臭い見方に基づく記事を出したのは文春砲ではなく、週刊新潮だった。タイトルは「参院広島再選挙『シングルマザー』候補に『疑惑の角隠し』写真」で、先の「永田の住人」の発信を膨らませたような内容。同じ写真も掲載、「なるほどシングルマザーとは見えない」と疑問視もした。

 悪意に満ちた記事でもあった。「本人は“受かっても1期だけ”と周りに公言している。担ぎ出されただけで、そもそも志があるのかどうか」という宮口氏の知人のコメントを紹介しているが、保守王国・広島で参院広島選挙区(定数2)を与野党が議席を分け合ってきたことに注目すれば、「1期だけ」と覚悟するのは当たり前のことだ。

森本しんじ参院議員(左)と宮口はるこ候補(中)、立憲民主党の佐藤公治参院議員
森本しんじ参院議員(左)と宮口はるこ候補(中)、
立憲民主党の佐藤公治参院議員

 というのは、自民党の河井案里参院議員の失職にともなう今回の再選挙で宮口氏が当選した場合、通常では考えられない野党2議席独占となる。しかし4年後の参院選では再び与野党で議席を分け合って現職の森本氏か新人の宮口氏のどちらかが落選する可能性が極めて高い。宮口氏が1期で議員人生を終えると覚悟するのはごく自然であり、志の有無ではなく、選挙区事情から出た常識的発言といえるのだ。

自民党の岸田文雄前政調会長(左)と西田ひでのり候補
自民党の岸田文雄前政調会長(左)と西田ひでのり候補

 また森本参院議員の秘書が宮口氏の新しいパートナーであることから「身びいきではないか」との指摘もあるが、これも保守王国・広島の状況に目を向けると現実離れした虚構にすぎない。森本氏の議席維持という観点からすると、与党系候補と互角の勝負をする宮口氏の出馬はマイナス要因となる。野党2議席独占となれば自らの議席を失うリスクが生じるためだ。しかし森本氏は秘書を通じて、宮口氏の出馬に反対することはしなかった。それどころか選対幹部となって街宣の司会役を買って出てもいる。国会議員ポスト死守が最優先の人から見れば、「自分で自分の首を絞める自虐的行為」にも映るだろうが、自らの保身よりも全国が注目する広島再選挙での勝利を重視しているといえる。褒められることはあっても批判されることとは言い難いのだ。

 宮口候補落選(=西田候補当選)を意図しているように見える「永田の住民」や、後追いをしたように見える週刊新潮のネガティブ・キャンペーンがどこまで投票行動に影響を与えるのか。4月25日の結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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