2024年11月20日( 水 )

相次ぐ大型受注で韓国造船業界が活況に(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 今年に入り、ワクチン接種による消費心理の回復で需要が増加したことや、海洋にも環境規制が強化され、LNGタンカーやLNG燃料船の発注が増加したことから、韓国の海運業界をはじめ造船業界、鉄鋼業界など従来の重厚長大産業が活況となっている。

LNG船の発注増で13年ぶりに活況

LNG船 イメージ 韓国の造船産業や、それと密接につながっている海運、鉄鋼産業などは、中国の低価格攻勢を受けて苦戦を強いられていた。その状況下で、韓国の造船、海運、鉄鋼業界は、新型コロナショックがまさに弱り目に祟り目となり、かつてないほどの大きな危機に見舞われていた。

 韓国の造船業界は、コロナ禍に見舞われた昨年の上半期に軒並み赤字に喘ぎ、この危機を乗り越えるために大規模なリストラと現代重工業や大宇造船海洋の合併などが進められていた。海運業界でも、市況の予測を誤った韓進海運は業界から姿を消し、韓国唯一の大手海運会社となったHMMも業績が振るわず、暗いトンネルのなかにいた。

 その状況のなかで、韓国の造船会社は従来のバルク船やコンテナ船などで中国と競争しても勝ち目がないと判断し、バルク船の3倍ほどの価格である高付加価値のLNGタンカーやLNG燃料船の建造に将来を託すようになった。景気回復の兆しともいえる貨物量の増加と、世界的な環境規制が強化されることによって、LNG船の発注が増えていき、技術力を認められた韓国の造船会社はその半分以上を受注するようになった。今では、韓国造船業界は13年ぶりに活況を呈している。

まず海運業界が好況に

 海運業界の業況が好転し始めたのは、昨年の年末からである。昨年の上半期は新型コロナウイルスの感染拡大で世界の工場が稼働中止に追い込まれ、輸出が大幅に落ち込んでいたが、下半期になって少しずつ回復に転じ、それにともない輸出も徐々に回復した。

 この背景には、米国など世界各国で景気浮揚策が行われ、需要が喚起されたことがある。需要の増加は輸出の増加につながり、その結果、貨物を積み込む船腹が足りなくなり、運賃が高騰するようになった。

 運賃の高騰指標の1つである、上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI)は、2020年4月末には818.16であったが、21年4月の1週目には2585.42に上昇している。

 韓国の代表的な海運会社であるHMMの実績も、順調に伸びている。HMMの19年度の売上高は5兆5,130億ウォン(約5,330億円)であったが、20年度の決算では売上高は6兆4,133億ウォン(約6,201億円)と前期比16%も伸長した。同期間の営業利益は2,996億ウォン(約290億円)の赤字から9,807億ウォン(約948億円)の黒字に転じ、業績は大幅に改善されている。HMMにとっては、10年ぶりの黒字転換であるとともに史上最高の実績となっている。

(つづく)

(後)

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