2024年12月21日( 土 )

相次ぐ大型受注で韓国造船業界が活況に(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 今年に入り、ワクチン接種による消費心理の回復で需要が増加したことや、海洋にも環境規制が強化され、LNGタンカーやLNG燃料船の発注が増加したことから、韓国の海運業界をはじめ造船業界、鉄鋼業界など従来の重厚長大産業が活況となっている。

造船も2008年以降で最も活況に

 韓国の造船会社は2008年以降、最高となる好況を享受している。イギリスの造船・海運の市況分析会社であるクラークソンズ・リサーチによると、今年第1四半期の船舶の発注量は1,024万CGT(標準貨物船換算トン数)と前年比4.3倍に増加している。

 このなかで、韓国は532万CGTを受注して世界シェアの半分以上(52%)を得て、世界1位となった。昨年の船舶受注量(55万CGT)と比較すると、約10倍に増加しており、造船業界がいかに好況に沸いているかということがわかる。

LNG船 イメージ 韓国の造船3社は、今年に入り大型案件の受注が相次いでいる。受注案件のほとんどはLNGタンカーやLNG燃料船で占められていることが特徴である。サムスン重工業は今年に入ってから合計42隻、51億ドル(約5兆7,100億ウォン、約5495億円)の受注に成功し、年間受注目標78億ドル(約8,404億円)の65%をすでに達成している。

 受注残高は3月末で254億ドル(約28兆4,400億ウォン)となり、ここ5年間で最も高い。サムスン重工業は今年3月に台湾・エバーグリーンから1万5,000TEU級コンテナ船20隻を一度に受注し、単一案件としては世界最大受注記録を塗り替えた。

造船好況の背景

 現在、世界的に環境問題への関心が集まっており、環境汚染で大きな割合を占めている海洋分野も例外ではない。海洋の汚染防止は、国連下部組織である国際海事機関IMO(International Maritime Organization)によって管理されている。この組織は船舶の航行や事故による海洋汚染の防止を目的として、有害物質や大気汚染物質の排出規制などを定めている。

 IMOは、今年1月から世界のすべての海で航行している船舶の燃料に含まれている硫黄酸化物の含有量を現在の3.5%から0.5%まで引き下げる規制を導入したが、既存の船舶では環境規制に対応できないためにLNG船への切り替えが進んでいる。

 そのため、韓国の造船会社は、LNG船分野の造船技術において競争相手である中国企業を圧倒し、韓国造船産業が造船の世界王者に返り咲く久々のチャンスが到来している。IMOは25年までに、船舶の温室効果ガス排出量を08年比30%以上削減する目標を掲げている。このような政策はLNGタンカーだけでなく、LNGを船舶の燃料とするLNG燃料船の増加も促すことになり、韓国造船業にとって、またとないチャンスを迎えている。

鉄鋼業界も期待に脹らんでいる

 鉄鋼業界は中国産鉄鋼の供給過剰で苦しんでいた上に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が重なり、韓国最大の製鉄会社であるポスコまでが赤字に陥っていた。ところが、韓国造船会社の大型受注により、船舶の建造には多量の鉄板などが必要になるため、鉄鋼会社の実績が改善することが期待されている。

 世界鉄鋼協会は、今年の鉄鋼需要が17億9,500万トンにおよぶだろうと予想している。この数値は新型コロナウイルス発生前の需要を上回るものであり、ここ20年間のなかでは最高だとされる。加えて、米国では景気浮揚策の一環として大規模なインフラ投資も予定されており、世界的に鉄鋼の需要増加が見込まれている。韓国の造船業界は、韓国の経済を下支えする1つの柱になりつつある。

(了)

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