2024年11月26日( 火 )

IOC・組織委・菅内閣の反社性

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「利権五輪開催を強要する菅政治にNOを突き付けなければならない」を訴えた4月30日付の記事を紹介する。

緊急事態宣言が発出されているが緊張感がない。
4月29日の東京都新規陽性者数が1,000人を超えた。

感染の中心は変異株に転換している。
E484K、N501Yが感染の中心に置き換わった。
インドでは2つ以上の変異を併せもつウイルスも確認されている。

N501Yウイルスでは基礎疾患のない若年者が重症化する事例が確認されている。
感染は若年層で拡大しており、各地の高校でのクラスター発生も確認されている。

人流変化と新規陽性者数確認との間には約3週間のタイムラグがある。
緊急事態宣言発出の効果が表れるのに時間を要するが、問題は政府措置によっても人流の急激な低下が生じていないこと。

菅内閣の「後手後手・小出し・右往左往」3原則が強く影響している。
最大の問題は「右往左往」。
コロナ感染を抑止するのか、感染拡大を推進するのか、はっきりしない。

コロナ被害が著しく小さい東アジアで最悪のコロナ被害を発生させているのが日本だ。
菅コロナ大失政の結果である。

最悪の政策がGoToトラブル事業。
昨年7月22日にGoToトラベルを強引に始動させた。

昨年11月21日からの3連休前にGoToトラベルを完全停止すべきだった。
しかし、菅首相はGoToトラベルを12月28日まで強硬に推進した。
GoTo推進の首謀者が菅義偉氏と二階俊博氏。

警戒されたのが変異株出現。
12月中旬に英国で変異株が確認された。
直ちに水際対策を強化する必要があった。

菅首相は12月28日に対策を発表したものの、外国人入国の太宗を占めるビジネストラック、レジデンストラックの入国を停止しなかった。
産業利権を優先して水際対策を骨抜きにした。

菅内閣がビジネストラックとレジデンストラックを止めたのは1月13日。
変異株は易々と日本に流入した。

11月から12月末にかけてコロナ感染が急拡大した。
しかし、菅首相は機敏に対応しなかった。
12月28日までGoToトラベルを推進していたのだから当然のことかも知れないが、1月7日になって、首都圏4知事の要請に押し切られるかたちでようやく緊急事態宣言を発出した。

この緊急事態宣言を3月21日に解除した。
すでに感染は再拡大に転じ、新規陽性者数の先行指標である人の移動指数は明確な増加を示していた。

3月25日に五輪聖火リレーが開始する予定になっていた。
これに合わせて強引に緊急事態宣言を解除した。
国会では「いま解除して本当に大丈夫なんですか」の追及があったが、菅首相は「大丈夫だと思います」と答えて解除を強行した。

それからわずか1カ月。
菅内閣は再び緊急事態宣言発出に追い込まれた。
しかし、すべてが中途半端。
中途半端ぶりが半端ない。

東京都に緊急事態宣言を発出しても隣県3県に発出しなければ東京都から隣県に人流があふれかえる。
TDR(東京ディズニーリゾート)は入場者数を1パーク5,000人にすると発表しているが実態は違う。

1パーク2万人のチケットを完売している。
TDRだけで1日4万人の集客を行う方針を変えていない。
しかも、訪問を取りやめる消費者にチケット払い戻しも行わない。
千葉県には新しい知事が就任したが、大資本が運営する巨大テーマパークには指導力を発揮できないようだ。

大都市圏から全国各地への自前GoToトラベルも野放しである。
変異株が急速な勢いで日本全国に拡散される。
「後手後手・小出し・右往左往」のコロナ対策ではコロナ問題は拡大、長期化するばかりだ。

緊急事態宣言が発出されたが、人々の行動抑制は強化されない。
それもそのはず。
菅内閣の腰が定まっていない。

政府の最大の使命は国民の命と健康を守ること。
「緊急事態宣言」
とは、国民の命と健康に危険が迫っていることについてのアラーム、警告シグナルだ。
政府は国民の命と健康を守ることに全力を注ぐべきだ。

ところが、その政府が、この目的と真逆の行動を並走させている。
東京五輪開催強行に向けて支離滅裂な行動を続けている。
その象徴が五輪聖火リレー。

五輪聖火リレーの実態は五輪スポンサーの大宣伝行列。
コカ・コーラ、日本生命、NTT、トヨタ自動車の巨大宣伝カーが大音響をまき散らしながらパレードする。
これが五輪聖火リレーの実態だ。

五輪開催が推進されている唯一にして最大の動機は「営利=利権」。
IOCは五輪を開催すると巨大なテレビ放映権料が入る。
日本がどうなろうが、日本人の生命と健康がどうなろうが、自分の利益のために五輪開催を強行しようとしている。

菅内閣はどうか。
コロナ大失政だけでない。
学術会議会員任命拒否問題、五輪組織委混乱、総務省長男違法接待問題、政治とカネをめぐる公選法・政治資金規正法違反事件など、不祥事と政策失敗のオンパレードだ。

4.25政治決戦では全国3選挙区で全敗=惨敗した。
コロナ大失政は目を覆うばかり。

この上、五輪開催中止に追い込まれれば命運は尽きる。
何が何でも五輪開催を強行し、その勢いで衆院総選挙、自民党総裁選を乗り切ろうとしている。
しかし、為政者としてこの姿勢は間違っている。

五輪組織委員会は五輪開催のために看護師500人の提供を協会に求めたという。
菅内閣がコロナ感染拡大に対する準備を怠ってきたために、すでに医療崩壊が発生している。

コロナ感染が確認されながら適切な医療を受けることができずに死亡する国民が再び多発し始めている。
菅内閣の責任は重大だ。
今後、訴訟が提起されることになるだろう。

この非常事態、緊急事態下で、五輪に医療資源を回す余裕はない。
看護師自身から五輪への看護師派遣要請に対して強い反対の声が挙がっている。
当然の反応だ。

ブラック・ボランティア』(角川新書)
著者の本間龍氏は、五輪組織委員会がボランティア不足に直面して、ボランティア業務を有償アルバイトで募集する活動を行っていることを伝えている。
あっせんを行う事業者はかのパソナである。

同じ仕事をタダで強要される者と正規の時給が支払われる者が執行する巨大矛盾。
利権まみれの五輪。
五輪組織委員会関係者と電通は五輪から濡れ手に粟の巨大利益を獲得する。
この巨大利権事業の手伝いを一部の国民に無償で強要する。
補助金行政で政治権力の支配下に置かれる大学は学生に対して単位付与の恩典を与えてタダ・ボラ強制労働事業に加担する。

NHK解説者は五輪を国威発揚の機会だと述べた。
「国威発揚、滅私奉公、学徒動員」が東京五輪の基本。
利権まみれ、国民の命と健康を犠牲にする「東京汚リンピック」を開催させないために日本の主権者が行動すべきときだ。

利権五輪開催を強要する菅政治にNOを突き付けなければならない。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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