L452R変異株+銭ゲバIOC=五輪終
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「『後手後手・小出し・右往左往』の菅内閣と銭ゲバIOC&東京五輪組織委のコラボレーションが、五輪開催を強行すれば圧倒的多数の人々が五輪に背を向けるだろう」を訴えた5月7日付の記事を紹介する。
ワクチン接種による発症化を防ぐ効果、重症化を防ぐ効果が期待されているが、ワクチン接種によって感染そのものを抑止する効果は定かでない。
IOCが五輪に参加する選手にワクチン接種を行う方針を示した。
しかし、ワクチンを必要としている人はほかに存在する。
重要なことは正しく優先順位を設定すること。
人の命に関わる問題だ。現時点でも毎日1万3,000人以上の人がコロナ感染で死亡している。
インドでは感染が急拡大し、死者も急増している。
とりわけ、基礎疾患を持つ人、高齢者が重篤化しやすいとされてきた。
ワクチン接種の能力がある場合、五輪選手よりも高い優先順位を付与されるべき人々が存在する。日本でも高齢者の接種が進まず、医療従事者への接種すら進んでいない。
もちろん、安全性が確認されていないワクチンを忌避する多数の人々が存在することも事実。
mRNAワクチンもウイルスベクターワクチンも新種のワクチン。
安全性が十分に確認されていない。今回のワクチンにおいては第三相治験が省略されている。
一定の時間をかけて確認しなければならない安全性が確認されていない。
従って、非常に多数の人々がワクチン接種そのものを忌避している。
賢明な姿勢だ。だが、感染が急激に広がり、重大な生命の危険が迫っている場合には、直面するリスクを低減させるため、そのリスクより低いと考えられるワクチン接種を選択することには合理性がある。
この意味で、ワクチン接種という「医療資源」の配分において、適正な優先順位を設定することが重要になる。
五輪開催を強行するため、五輪参加選手に対するワクチン接種を優先する主張は正当化されない。
IOCのバッハ会長が世界のメディアから批判を浴びるのは当然のこと。バッハ会長が「コロナがどんな状況であっても必ず五輪をやる」とのスタンスを示す理由は「カネ」である。
五輪を開催すれば莫大な放映権料が入る。
この「カネ」を得るために、人命無視、人の迷惑をかえりみないバッハ会長は「銭ゲバ」の正体をむき出しにしたもの。五輪参加選手のなかにもワクチン忌避の考えを持つ人が存在するだろう。
しかし、ワクチン接種をしなければ五輪に出場させないとの脅迫が行われることになるのだろう。しかし、ワクチン接種をしたからといって、日本における感染拡大リスクは排除されない。
ワクチン接種は発症、重症化リスクを減じると期待されているものの、感染そのものを排除する効果を有するかは不明なのだ。
感染者を無症状化させ、この感染者が日本で感染を拡大させる可能性が排除されない。IOCと東京五輪組織委は「バブル方式」採用を唱えている。
外国人を厳正な検査を行ったうえで入国させ、一般市民などの外部との接触を遮断して日本に滞在させたうえで出国させるというもの。
しかし、この「バブル方式」がすでに破綻している。5月5日、五輪会場となる東京・海の森水上競技場で開催中のボート・アジア・オセアニア予選で、スリランカのチーム関係者1人がコロナ陽性と判定された。
出国72時間前までに行ったPCR検査や5月1日に日本に入国した際の抗原検査、さらに4日の抗原検査でも陰性で、自覚症状もなかったが、陽性判定とされた。
空港検疫にもいえることだが、抗原検査の精度はPCR検査よりも低く、感染者が陽性と判定されない場合がある。五輪組織委員会は選手に対して「原則として」毎日抗原検査を行うとしている。
しかし、「原則として」の言葉は必ず検査を行うわけではないことを意味するもの。
しかも、精度の低い抗原検査ではコロナ感染者を厳正に識別することができない。丸川珠代五輪担当相は五輪選手に対するワクチン接種は「別枠」だと述べた。
「別腹」の類義語といえるが、医療崩壊が生じている日本で「別腹」は容認されない。IOCの銭ゲバ体質が鮮明に浮かび上がる。
五輪開催を強行すれば圧倒的多数の人々が未来に向けて五輪に背を向けることになるだろう。
正当性のない五輪開催強行が五輪終をもたらす。日本における感染第4波が収束しない。
菅首相は4月25日からの緊急事態宣言の期限を5月11日に設定した。
5月17日のIOCバッハ会長来日日程に合わせたもの。その緊急事態宣言が中途半端の塊だった。
東京に発出しながら千葉、神奈川、埼玉に発出しない。
東京都から川1つ隔てた千葉にある東京ディズニーリゾートでは、連日4万人を集客して多人数による会話をともなう飲食が繰り広げられた。東京都内の飲食店では酒類の提供ができないから、人々は隣県に繰り出した。
菅首相は人流が減ったと主張するが、人流は大きく減少しなかった。アップル社が公開している人の移動指数では5月2日、3日の自動車による人の移動が3月26日のピークを超えて跳ね上がった。
全国各地の観光地にも大規模な人流が流入した。この失態を隠蔽するために、人流および入込人数について、2019年比で減少したことが強調されるが、重要事実は20年比である。
新幹線の利用客数など、前年比10倍近くに跳ね上がった事実も存在する。菅内閣は緊急事態宣言を発出しながら、五輪聖火リレー実施を強行。
札幌では市街地を用いてのマラソンレースまで実施した。
この状況を見て、人々が行動を強く抑制するわけがない。人の移動指数データはこのことを如実に物語る。
人流水準は昨年のGW比で約3倍に膨張した。
この人流水準が3週間後の新規陽性者数に反映される。関西での感染拡大をもたらしたN501Y型のウイルス変異株が感染の中心に置き換わった。
英国由来のウイルスだ。
昨年12月中旬に英国で確認された。直ちに水際対策を強化しなければならなかったが、菅内閣が抜本策を講じたのは本年1月13日。
菅首相は昨年12月28日に水際対策を発表したが、外国人入国の太宗を占めるレジデンストラック、ビジネストラックを停止しなかった。菅首相が強硬に主張して水際対策をザル対策にした。
その結果として英国由来の変異株が国内に流入。
あっという間に感染の中核を担うようになった。コロナウイルスの特徴は変異スピードが速いこと。
変異が進むとさまざまな問題が生じる。感染力が強くなる。
毒性が強くなる。
若年層にも感染が広がり、若年層でも重症化する事例が生じる。
それだけではない。ワクチンの有効性が低下する可能性も指摘されている。
いま、もっとも問題が拡大しているのがインド。
新たな変異株としてE484Q型とL452R型の二重変異株が確認されている。
このウイルスによってインドで急激な感染拡大、死者増大が報じられている。この変異株が確認されたのが3月末のこと。
直ちに水際対策を厳正にする必要があった。
しかし、菅内閣がインドからの入国規制を強化したのが5月1日である。
「後手後手、小出し、右往左往」の菅コロナ三原則が猛威を奮っている。インド変異株のL452R型には重大な問題が指摘されている。
このウイルスが人の免疫能力を構成する白血球抗原の一種を無効化する可能性が指摘されている。
無効化される白血球抗原はHLA-A24というもので、この抗原を日本人の6割が有しているとされる。これまで東アジアのコロナ被害は格段に低かった。
確定されていない要因を山中弥教授が「ファクターX」と表現した。インフルエンザなどの罹患が多く、東アジアの人々が交差免疫を有しているとの見方、BCG接種により、結核菌などの呼吸器系疾患に対する「訓練免疫」があるという見方が指摘されている。
このため、ワクチンのような「獲得免疫」がなくてもコロナ被害が軽微に抑えられてきたと見られている。しかし、インド変異株のL452R株はアジア人の免疫能力を無効化する可能性があると指摘されている。
このため、これまでコロナ被害が小さかったモンゴルでも、急速に状況の悪化が観察されている。「後手後手・小出し・右往左往」の菅内閣と銭ゲバIOC&東京五輪組織委のコラボレーションが最悪の事態をもたらす可能性が高まっている。
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