2024年11月23日( 土 )

次期衆院選野党共闘勝利の方程式

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「何としても菅内閣の退場と新政権の樹立を実現しなければならない」と訴えた5月17日付の記事を紹介する。

朝日新聞の最新世論調査で菅内閣の支持率が33%に急落した。不支持率は47%。世論調査結果は報道機関によってばらつきがあるが、ほぼすべての調査で菅内閣の支持率が急落し、不支持率が支持率を上回った。

内閣支持率は30%を割り込めば政権持続への赤信号になる。菅内閣はKO寸前の状況にまで追い込まれている。菅内閣が発足して8カ月が経過したが、失点だけで得点がない。このまま内閣総辞職に追い込まれるのが順当な流れ。

2021年は衆院総選挙の年。この選挙で日本の主権者が政権を刷新すべきだ。主権者が正当に権利を行使して日本政治を良いものに変える。これが民主主義制度の正しい生かし方。

12年12月の第2次安倍内閣誕生から8年半の時間が経過した。日本政治の劣化は著しい。日本の主権者は日本政治刷新を望み続けてきた。それにもかかわらず、その希望が実現していない。

大きな原因が対抗勢力の弱さにある。現政権に対するもう1つの選択肢。代替し得る新しい政権の姿が鮮明に浮かび上がることが政権刷新を促す。この部分が欠けてきた。

安倍内閣も悪行三昧を積み重ねた。特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認、戦争法制、共謀罪、TPP、種子法廃止、種苗法改定、水道法改定、漁業法改定、働かせ方改悪など、悪行を積み上げた。それだけではない。森友、加計、桜を見る会など、政治私物化の悪行をも積み重ねた。こんな内閣が8年近くも続いたことが七不思議。

政治権力がメディアと刑事司法を不当支配してきたことが、いびつな現状をもたらす大きな原因になった。安倍内閣下で発生した政権幹部の汚職事件などはほぼすべてが無罪放免にされた。検察、裁判所勢力が政治権力に不当支配されるとともに、社会の木鐸であるべきメディアが権力の手先として行動してきたことが大きい。

菅内閣に移行して与党関係者の犯罪が立件される傾向を示している。次から次に自民党国会議員などが逮捕、起訴される。政治腐敗の現状は目を覆うばかりだ。それにもかかわらず、菅内閣がいまなお存続している。

その菅内閣発足後の政策運営が失態続きである。国民の最大関心事はコロナ感染の収束。ワクチンに関心が逸らされているが、日本のコロナ対応が稚拙を極めてきたことが問題。感染症対策の基本は「検査と隔離」。この基本が守られてこなかった。検査を十分に行わないから感染者を特定できない。特定されない感染者が感染を広げる。コロナ収束を実現できないことは自明だった。

不幸中の幸いで東アジアのコロナ被害が著しく軽微だった。この「ファクターX」によって運よく日本政府の失態が全面的にクローズアップされなかっただけのこと。この状況下で菅義偉氏はGoTo事業を主導した。感染収束が求められているときに感染拡大を推進する政策に邁進した。その結果が第3波と第4波の感染爆発だ。

さらに重大な過ちが変異株対応。英国変異株、インド変異株が確認された段階で再強度の水際対策が必要だった。これを怠り、国内流入を許してしまった。結果として日本全体に危機的状況が発生した。その危機的状況下で外国人を10万人規模で流入させる東京五輪開催を強行しようとしている。災厄が広がる恐れが強い。

何としても菅内閣の退場と新政権の樹立を実現しなければならない。4月25日の国政三選挙で菅自公は全敗=三敗=惨敗した。一気呵成に政権交代実現の狼煙を掲げるべき局面。しかし、政権交代への気運が高まらない。

最大の要因は野党第一党である立憲民主党代表・枝野幸男氏の不人気だ。17年10月の衆院総選挙で枝野新党が一躍浮上した原点を見つめ直すべきだ。

枝野新党が急浮上した背景は2つ。第1は旧民進党が分裂し、「隠れ与党勢力」と分離するかたちで立憲民主党が創設されたこと。日本の主権者は自公と変わらぬ民進党「隠れ与党勢力」に対する不信と不満を強めていた。私は「水と油の同居体」と表現してきたが、旧民主党、旧民進党には「革新勢力」と「守旧勢力」が同居していた。

09年に樹立された鳩山内閣は日本政治刷新を目指す「革新政権」だった。この「革新政権」を破壊したのは民主党内に潜伏していた「隠れ与党勢力」=「守旧勢力」である。

「守旧勢力」とは
1.米国による日本支配を容認する
2.大企業による日本政治支配を容認する
3.官僚機構による日本支配を容認する
勢力のこと。

鳩山内閣は、この3つの日本政治構造を刷新しようとした。そのために総攻撃を受けたのだが、この攻撃に民主党内の守旧勢力=隠れ与党勢力が加担した。革新性をもつ鳩山内閣は民主党内に潜伏する守旧勢力によって破壊されてしまった。

旧民進党の最大の課題は「水と油の分離」だった。守旧勢力と革新勢力の同居を解消し、純化された革新勢力が分離、独立することが求められた。小池百合子氏が「排除の論理」を示したために、予期せぬかたちで旧民進党の分離・分割が生じた。このとき、革新勢力の分離・独立の結果として誕生したのが立憲民主党だと受け止められた。日本政治刷新を求める主権者によって枝野新党が躍進できた。

第2の要因は、この選挙で日本共産党が立憲民主党を支援したこと。この支援がなければ当選できなかった候補者が多い。日本共産党は革新政党としての立憲民主党を支援した。この経緯を枝野幸男氏は忘れるべきでない。

日本における革新政権樹立を何としても阻止しようとしているのが米国である。正確にいえば米国を支配する支配勢力=ディープ・ステイト(DS)だ。DSは日本における革新政権樹立を阻止するために、野党勢力のなかに「守旧政党」を創設した。これが1960年創設の民主社会党。支援母体になったのが大企業の御用組合連合である「旧同盟」。この役割を継承しているのが現在の国民民主党と連合六産別だ。

彼らのミッションは日本に革新政権を樹立しないこと。この点を踏まえれば、日本政治刷新を求める主権者が取るべき正しい行動は、野党共闘から「守旧勢力」を外すことになる。DS支配下にある国民民主党と大企業御用組合を共闘の枠組みから取り除くことが重要だ。

連合傘下組合のうち、大企業御用組合である六産別系組合が6割程度を占める。構成員は約400万人。この400万人組合員に後ろ髪を引かれて、革新勢力純化による野党共闘が明示されない。そのために、政権交代の気運が盛り上がらないのだ。総選挙の投票率が5%上昇すれば連合六産別の支持を失っても穴埋めできる。連合六産別の影響力を過大評価すべきでない。

枝野立憲民主党が自公政治を刷新する「たしかな野党」による野党共闘体制構築を明確に宣言することが、日本政治刷新の最重要要件になる。


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