【IR横浜誘致】カジノに頼らず地域のことは地域で〜横浜未来構想会議議長、菅首相と対決も辞さず
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カジノに反対する横浜未来構想会議が誕生
「カジノに頼らない横浜」を掲げた新たな運動体「横浜未来構想会議」が5月22日に発足、同じくカジノ抜きの計画を提案する「横浜港ハーバーリゾート協会(YHR)」の藤木幸夫会長(90)が議長に就任した。
発足記念講演で藤木氏は、「山下ふ頭は地球そのものの『ダイヤモンド』。横浜の将来をどうするか日本の将来をどうするか、それを占う場所でもある」と切り出した後、秋田から上京して横浜で秘書や市議を経て国会議員となった菅義偉首相(神奈川2区)を「旅人」とたとえつつ、次のように痛烈に批判した。
「今、それ(横浜の将来)を『こうしよう』『ああしよう』と決めているのは誰ですか。旅人ですよ。今ここにきて横浜で一晩泊まって、明日からどっかへ行ってしまう訳のわからない人です。横浜の人ではない。日本人ではない。誰かに後ろでピストルを突き付けられてしゃべっている」。
「旅人」が菅首相を指すことは、4月19日のYHRの全体集会で藤木氏から同じ主旨の発言を聞いていたので瞬時にわかった。会見で筆者が「プレゼンのなかに『菅さんは秋田の人で横浜の人ではない』というふうに書かれていた」と聞くと、藤木氏は次のように答えた。
「あの人は旅人なのだよ。横浜で生まれて横浜で育っても旅人みたいなことをいう人はいるが、とにかく世の中は旅人と住民、ムラ人しかいないんだよ。俺なんかムラ人なんだ。責任をもたないといけない。(略)旅人は旅人でいなさい。だから横浜のこと、余計なことをいうなということです」。
横浜へのカジノ誘致をめぐる対立を「旅人(菅首相)対ムラ人(藤木会長)」と表した発言が脳裏に焼き付いていたので、1カ月後に“旅人発言”を聞いた途端、「旅人=菅首相」であり、「日本人ではない」と“非国民(国賊)認定”をした心情もすぐに理解できた。
菅首相は官房長官時代からカジノ誘致の旗振り役であり、海外カジノ業者に日本の国富流出を招く賭博場開設を認めようとしてきたからだ。横浜も有力な候補地で、菅首相直系の林文子・横浜市長のカジノ誘致表明に対して、藤木氏は「命を張ってでも反対する」「俺は最後までどかない」と徹底抗戦を表明していたのだ。
記念講演後、藤木氏を直撃し、4月に続いて今日も「旅人」と表した菅首相について聞いてみた。
――林(文子・横浜)市長の背後霊とは菅さんのことですか。背後で動かしているのは。
藤木幸夫会長(以下、藤木) 個人的なことは言わないのだよ。
――(今日も菅首相を)「旅人」とおっしゃっていたものですから。
藤木 ダメな野郎はダメなんだから。嘘つきは。
――旅人はやっぱりダメですか。
藤木 ダメに決まっているだろう、そんなことは。旅人に(横浜の未来の)絵を描かれたら困るだろう。常識だよ。
藤木氏、菅政権と全面対決の様相
NetIB-Newsの昨年9月13日付記事「【自民党総裁選】第二の故郷・横浜を平気で裏切る『ミスター叩き上げ』菅義偉官房長官の正体」で紹介した通り、地盤も看板もカバンもない横浜で菅首相が市議時代から支援を受けてきた大恩人が、「横浜(ハマ)のドン」こと藤木氏だった。
しかし菅首相は、第2の故郷・横浜がカジノ業者の賭博場となることに大恩人が猛反対しても、“米国腰巾着アベ政治”の継承を訴えて総理ポストを手にした。藤木氏が「旅人」と菅首相を表したのは、世話になった恩人や地域を裏切った冷徹非情ぶりを目の当たりにしたために違いない。
菅首相が強行する五輪に対しても、藤木氏は異議申立を行っていた。講演参加者に配布された資料には、「東京オリンピック・パラリンピックの中止を求める・アピール」と銘打った藤木議長名の文書が入っており、講演前に代読されたのだ。
コロナウイルスの勢いが衰えず、ワクチン接種も始まったばかりであることから、五輪開催でさらなる感染拡大や医療崩壊のリスクがあると指摘し、こう結論づけていた。
「こうした状況を踏まえ、私たちは、オリンピック・パラリンピック組織委員会、東京都、日本政府に対してオリンピック・パラリンピックの中止を決断すべきことを要請するものである。勇気ある『撤退』こそ最善な選択である」。
藤木氏が菅首相を「日本人ではない」と非国民(国賊)扱いしたのは、「ぼったくり男爵」ことバッハIOC会長の言いなりで「日本国民の命を守る責務を放棄している」と見なしたのも一因ではないか。
次回の横浜未来構想会議は7月中旬に開催する予定。8月の横浜市長選でカジノ反対の市長を誕生させることも活動目標であるため、候補者を紹介する場となる可能性は十分にある。一方、菅首相にとっても、自らの選挙区(神奈川2区=横浜市西区・南区・港南区)を含む横浜市の市長選で敗北すれば、「菅首相では選挙は戦えない」と見なされて“菅降ろし”を招きかねない。カジノ誘致や横浜市長選、五輪開催をめぐって、菅政権(首相)と全面対決の状態となった藤木氏の言動から目が離せない。
東京オリンピック・パラリンピックの中止を求める・アピール
東京オリンピック・パラリンピックの開催が近づいているが、報道各社の世論調査によればオリンピック・パラリンピックの「延期または中止」とする回答が過半数を大きく超えている。オリンピック・パラリンピック中止を求める「オンライン署名」は、35万人を超えている。現時点では、国内世論は「開催中止」に傾いている。
その背景には、「新型コロナウイルス」の勢いが衰えず、終息の気配が見えないこと。コロナ禍による日本の感染者数は68万人余り、死者数は1万人余り、世界の感染者数は16憶人余り、死者数は338万人余りで今なお増え続けている。期待されていた国内における「ワクチン」の接種は始まったばかりで進まず、「特効薬」の開発も見通せない状態にあること。そうした中で、オリンピック・パラリンピックの開催によって、来日する競技者・関係者からの感染、競技者・関係者の感染のリスクが高まっている。また、感染リスクにより医療資源が割かれ、不足する医療体制がさらに逼迫することへの危惧・不安がある。繰り返される緊急事態宣言、増え続ける重傷者と死者の数を前に、国民がオリンピック・パラリンピックの開催に危惧・不安を抱くのは当然なことである。
こうした国民の声に対して、菅首相は「安全・安心な大会の開催」としか語らないばかりかオリンピック・パラリンピックの「観客の有無」をはじめ全容が今もって明らかにされていない。そもそも、東京オリンピック・パラリンピック開催の意義は、当初は「東日本大震災からの復興」であった。それがいつの間にか「コロナに人類が打ち勝った証」に変わった。にもかかわらず、現状はみたとおりである。このままでは、平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックの理念が損なわれ、後世に大きな負の遺産を残すことになる。
こうした状況を踏まえ、私たちは、オリンピック・パラリンピック組織委員会、東京都、日本政府に対してオリンピック・パラリンピックの中止を決断すべきことを要請するものである。勇気ある「撤退」こそ最善な選択である。
2021年5月22日
横浜未来構想会議
議長 藤木 幸夫【ジャーナリスト/横田 一】
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