2024年12月31日( 火 )

企業倒産を追う「グリーンインフラレンディング」~再生可能エネルギー事業で資金を集め、目的外に流用する魑魅魍魎たち(中)

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 ソーシャルレンディングとは、「ネット上でお金を借りたい人、企業」(ボロワー)と、「ネット上でお金を貸したい人、企業」(レンダー)を結び付ける融資仲介サービスである。ネットを介して小口投資できる手軽さから市場は年々拡大。新しい制度が導入されるとき、必ず利権が発生する。再生可能エネルギー事業の名目で資金を調達し、目的外に流用する魑魅魍魎たちが群がった。

JC社と細野議員をつなぐ黒幕は大樹総研の矢島正也氏

 JC社の中久保氏と細野議員をつないだ黒幕は、政治系シンクタンク・大樹総研(株)(東京・中央区)の矢島義也氏だという。世間にはほとんど名が知られていない謎多き人物だ。

 『週刊新潮』(20年10月15日号)の特集『「菅首相」を抱き込む「令和の政商」』の記事は矢島氏を取り上げ、「細野豪志5,000万円事件」で特捜部のターゲットになったと報じた。

大金 イメージ 「政商」としての矢島氏の力を示したのは、16年5月に開かれた彼の「結婚を祝う会」だ。『週刊新潮』によれば、主賓は当時、官房長官だった菅義偉氏。二階俊博・自民党政務調査会長(当時)が乾杯の音頭を取り、安倍晋三首相もビデオメッセージを寄せた。

 現職閣僚の林幹雄、遠藤利明、加藤勝信の各氏も出席し、さらに野党からも野田佳彦・元首相や安住淳、細野豪志、山尾志桜里の各氏が顏をそろえた。福田淳一・財務事務次官や黒川弘務・法務省官房長ら、後にセクハラや定年延長問題で世を騒がせた高官も並んだ。永田町や霞が関の事情通をうならせる顔ぶれだ。

 大樹総研が営むコンサルタント事業は、その与野党を問わないネットワークが動力源。その暗部が露呈したのがJC証券から細野議員に対しての裏金疑惑。『週刊新潮』は、全国紙社会部の記者の話を伝えている。

 「JT証券」の親会社の「JCサービス」は太陽光事業などを手がける名目で投資家から200億円余りの金を集めたものの、事業は頓挫し、投資被害が発生。この「JCサービス」は矢島氏のコントロール下にある企業で、業務委託費などの名目で大樹総研に約5億円を支払っていた。この件には東京地検特捜部も興味をもち、一時は本気で捜査していました。

    当時、東京地検特捜部がJC社に対する捜査を本格化させ、関係者の事情聴取を行ったと報じられた。ところが突然捜査は中止。捜査がストップしたのは菅官房長官の存在があるとの見方がされている。細野氏の件があってから、菅氏は矢島氏と距離を追いているという。

口利き商売と補助金ビジネス

 大樹総研の創設は07年。矢島氏が、静岡で昔からの友人関係のあった鈴木康友氏(元民主党衆院議員、現・浜松市長)が選挙に落選して浪人中だったため、同じように落選して充電中の政治家が、しっかり勉強できるようなシンクタンクをつくろうということで立ち上げた会社だと言われている。旧民主党系の政治家らとの関係が深いのは、総研設立以来のこうした経緯があるからだ。

 どういった事業をやっているのか。事業については、会員制情報誌『選択』の、18年8月号の『政官界に浸透する「大樹総研」 細野豪志も堕ちた「謎のコンサル」の実態』、同9月号『当今『政官ブローカー』の生態 繁盛する「大樹総研型」の口利きビジネス』に詳しい。

 それによれば、このグループは政界と官界に人脈を張りめぐらし、「口利き商売と補助金ビジネスを売り物にしている」のだという。「補助金という名の血税を巧みに吸い込み、濾過するするビジネス」を得意とするグループだ、と断じている。

 このグループのしたたかさは、民主党政権から自民党・安倍政権になってからも、「再生可能エネルギー関連のビジネス」をテコとして、さらに政官財とのパイプを太くしていった点だ。いわば、自民党の不得意の分野で活路を切り拓いていったという。

再エネ事業を進めると称して、投資家から巨額資金を集めたグリーン社

 大樹総研の矢島会長が口利きしたのが中久保氏だ。中久保氏が経営する、エネルギー開発会社JC社は13年に鹿児島県で太陽光発電の蓄電池を活用するモデル事業を計画し、環境省から補助金を得た。しかし、ろくに事業も進めず、18年に補助金2億9,600万円の返還と加算金1億3,600万円の支払いを命じられた。

 子会社のグリーン社は、再生可能エネルギー事業を進めると称して投資家から巨額の資金を集めたものの、資金の一部が不正に流用されたとして、資金の募集停止に追い込まれた。

 中久保氏も謎多き人物だ。1965年生まれ。兵庫県庁職員だった中久保氏は阪神・淡路大震災に遭遇・多様なエネルギーインフラの必要性を感じて独立。報道によると、96年に(有)クオリティライフを設立したが、2000年に負債3億円で倒産。01年に(株)ジャパンコストプランニングを設立したが、これまた07年に負債60億円で倒産したという。

 03年3月に設立していた子会社JC社で再起を図る。12年に電力会社が全量を固定価格で引き取る固定価格買い取り制度がスタート。これが追い風になる。

 信用力のなさを補うように、人脈づくりに励む。行き着いたのが、人脈商売で永田町と霞が関に隠然たる勢力を誇る大樹総研の矢島氏だった。同時に、中久保氏が金融面で頼ったのが、ソーシャルレンティング事業を展開するマネオである。

(つづく)

【森村 和男】

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