2024年11月21日( 木 )

企業倒産を追う「グリーンインフラレンディング」~再生可能エネルギー事業で資金を集め、目的外に流用する魑魅魍魎たち(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 ソーシャルレンディングとは、「ネット上でお金を借りたい人、企業」(ボロワー)と、「ネット上でお金を貸したい人、企業」(レンダー)を結び付ける融資仲介サービスである。ネットを介して小口投資できる手軽さから市場は年々拡大。新しい制度が導入されるとき、必ず利権が発生する。再生可能エネルギー事業の名目で資金を調達し、目的外に流用する魑魅魍魎たちが群がった。

ネットを通じてお金の出し手と借り手を仲介するマネオ

ネット お金 イメージ 2016年9月、グリーン社はマネオのプラットフォームを利用して投資家から金集めを開始した。ネットで投資家を募り、10%前後の高配当を約束する貸し付け型のクラウドファンティングだ。

 マネオはネットを通じてお金を出し手と借り手を仲介する「ソーシャルレンティング」と呼ばれる事業者の草分け的存在とされる。

 マネオ社長・瀧本憲治氏は1972年生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業。さまざまの職業を渡り歩き、2005年に投資会社UBI(株)に入社。取締役として、経営難に陥っていたマネオを買収して社長に就いた。社名のmaneoは、お金(money)に関する新しい(neo)ビジネスモデルを意味する。

 ソーシャルレーティングは、借り手保護の観点から投資家には概要しか開示されない。しかし、匿名で調達できる点に目を付けた企業に悪用される例が出てきた。目的外使用や詐欺的な勧誘につながり、その発覚が相次いで2,000億円に達し、ソーシャルレンティング業界全体の問題につながった。JC社もその一社だ。

金融庁はマネオに業務改善命令、JC証券の登録取り消し

 18年7月6日、証券取引等監視委員会は、マネオを行政処分するよう金融庁に勧告した。投資家に事実と異なる説明をして資金を集めた金融商品取引法違反行為が見つかったため。再生可能エネルギー事業に使うとして集めた資金のうち、2億5,000万円は、細野議員に5,000万円を融通したJC証券にわたっていた。

 7月13日、金融庁はマネオに業務改善命令を出した。

 7月24日、金融庁はJC証券の証券会社としての登録を取り消した。細野議員への資金提供をめぐるずさんな経緯も、金融庁は問題視した。JC証券の取締役には、財務省出身で、元衆院議員・田村謙治氏、松田学氏、和田隆志氏の3人が就いていた。いずれも細野議員の「お仲間」だ。

 マネオは金商法上のファンド販売事業者(第二種金融商品取引業者)で監視委の検査権限がおよぶ。ただ、集めたお金で実際にファンドを運営していたグリーン社には権限がおよばないため、全容解明は難航した。金融庁は借り手企業の名称などを開示できるようにすることを決めた。

マネオなどを相手取り「11億円損害」の集団提訴

 19年3月8日、ネットで高めの利回りをPRして事業資金を募るソーシャルレンディングで最大手のマネオなどを相手取り、個人投資家57人が計11億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告代理人の鈴木英司弁護士によると、ソーシャルレンティング業者への賠償請求訴訟では過去最大という。

 被告はマネオ、ファンド事業会社グリーン社、再生可能エネルギー開発会社JC社など4社と、グリーン社とJC社の中久保社長。

 原告はマネオの勧誘でグリーン社に投資した北海道から沖縄までの会社員ら57人。虚偽説明がなければ出資しなかったとして、投資金全額の支払いを求める。資金の行方は多くは不透明だ。

 相次ぐ不祥事を受け、マネオの瀧本社長は19年9月、マネオ株を売却して経営から退いた。

 グリーン社=JC社事件では、債権者は4,855人にのぼった。ネットを介して小口投資できるという手軽さから、ソーシャルレンディング市場は年々拡大。既存の金融機関から融資を受けられない企業などの有力な資金調達手段になっている。市場拡大にともなって虚偽の説明での投資勧誘や分配金の不払いなどのトラブルが相次ぎ、ほかにも投資家による訴訟が起きている。詐欺の温床と化したソーシャルレンディングという新しいビジネスモデルは、壊れてしまったのだ。

(了)

【森村 和男】

(中)

関連記事