日本の主権者に差し迫る明白な危険
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NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、安倍政権によって日本の主権者の意思に反する方向へ導かれている現状を危惧した、3月18日付の記事を紹介する。
首相経験者、現職国会議員、ならびに有識者と懇談した。日本政治の刷新を実現するためである。すべての出席者が現状を危機と捉えている。
安倍政権は憲法解釈を変更し、その解釈変更に伴い、安保関連法制を変更しようとしている。憲法改定の手続きを経ずに、憲法の規定とは異なる現実を強引に生み出そうとしている。憲法破壊行為と言わざるを得ない。憲法は絶対の存在ではない。憲法には憲法改定の手続きが定められており、正規の手続きを経れば、憲法を改定することができることとされている。したがって、憲法改定が必要であるなら、憲法改定を実現することは可能である。安倍晋三氏が憲法改定が必要だと考えるなら、憲法の規定に則って、正規の手続きを経て憲法改定を行うべきである。
安倍晋三氏自身、2012年の総選挙の際には、憲法改定の構想を提示していた。
しかし、選挙結果を通じて、憲法改定を実現できる環境が早期には整わないと判断して路線が転換された。それが「解釈改憲」の道である。憲法改定の手続きを経ずに、憲法の内容を改変してしまうという手法だ。子供じみた対応である。だだをこねて、道端で大の字になって暴れているわがままな子供のような対応だ。日本国憲法は集団的自衛権の行使を禁止している。「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定されているから、集団的自衛権の行使は憲法解釈上認められない。政府の憲法解釈で、このことは明示されてきた。自衛権の行使は一定の要件の下で認められるが、集団的自衛権の行使はできない。このことがこれまでの政府見解で明示されてきているのだ。
ところが、安倍晋三氏はこれを変更して集団的自衛権の行使を合憲であると憲法解釈を変えた。傍若無人、言語道断、極悪非道の暴挙と言うよりない。国の基本法である憲法の内容を、正規の手続きを経ずに改変してしまうのである。「法の支配」を根底から踏みにじる暴挙である。「法治国家」を根本から否定する行為である。
日本の民主主義が危機に陥っている、もうひとつの重大な側面は、日本の言論空間が歪み、汚染されていることだ。政治権力の暴走に対して、異論を唱えることを許さない空気が作られている。
クリミアがロシアに帰属することになったのは、クリミアに住む人々の判断によるものである。クリミアがこのような意思決定を行った背景は、ウクライナという国においてクーデターが挙行されたことにある。ウクライナ政府がクーデターによって転覆された。クーデター政権は新政権の正統性を主張するが、このクーデター政権の正統性を認めないと考える勢力も存在する。イスラム国が正統性を主張するのに対して、イスラム国の正統性を認めないという勢力が存在するのと同じである。
クリミアはウクライナのクーデター政権の正統性を認めず、クリミアがロシアに帰属することを宣言した。その正統性については両論あるというのが現状である。
米国はクリミアのロシア帰属を認めず、ウクライナのクーデター政権の正統性を認める。これに対して、ロシアはウクライナのクーデター政権の正統性を認めず、クリミアのロシア帰属を正統なものとしている。
依って立つ立場によって、判断は正反対になる。主張としてはどちらの主張もあり得るわけだ。安倍政権が安倍政権の主張を示すことは許されるが、他の主張の存在を認めないというのは、表現の自由、思想及び良心の自由に反するものである。そして、この安倍政権がNHKを私物化する行動を示している。日本の言論空間は歪み、そして、深刻に汚染されているのである。現状を憂い、日本政治を刷新しなければならないと、心ある多くの主権者が考えるのは当然のことである。
安全性を確保できていない原発を再稼働させる。日本の国家主権を喪失するTPPに参加してしまう。庶民の生存権を破壊する消費税大増税を推進する。沖縄県民が総意として認めない辺野古の米軍基地建設を強行する。労働法制を改変して、底辺の労働者の処遇、雇用不安定性をさらに強化する。
こうした方向に日本政治が誘導されている。いずれも、日本の主権者の意思に反するものである。これらの施策によって、日本の主権者の、「生命、自由、および幸福を追求する権利が根底から覆される明白な危険」が差し迫っている。主権者は、我が身を守るために、自衛のための行動を取る権利を有する。※続きは3月18日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1104号「政界再編・政権交代実現の具体的手順」で。
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