2024年11月23日( 土 )

コンテンツ事業で海外展開を加速するネイバー(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国企業は、画面をスクロールしながら楽しむ電子コミック「ウェブトゥーン」を開拓し、この分野で世界市場をリードするという驚異的なことを成し遂げている。コミックやアニメはもともと日本のお家芸であり、筆者も幼いころに日本のアニメを見て育ったが、デジタル化の波はコミックの世界にも押し寄せている。今回はモバイルで配信される電子コミック、ウェブトゥーンの市場動向を取り上げる。

ネイバーの快進撃の原因はウェブトゥーン

 メッセンジャーアプリのLINEなしには生活は成り立たないといってもよいほどに、LINEは日本人の日常生活に深く浸透している。カカオとともに韓国を代表するIT企業である、LINEの韓国本社であるネイバーも、コンテンツビジネスに力を入れている。

 なかでもネイバーが尽力しているのがウェブトゥーン事業であり、海外収益のおよそ半分はウェブトゥーンで占められているほどだ。ネイバーのウェブトゥーンサービスは、2020年8月基準で1日の売上高が30億ウォン(約3億円)を上回るようになったという。

 ウェブトゥーンビジネスはネイバーグループの「ネイバーウェブトゥーン」という企業が担当しているが、ネイバーウェブトゥーンの影響力は全世界におよび、日本以外では絶対的なものとなっている。同社のサービスはすでに100カ国で利用されており、20年第4四半期の月間アクティブユーザー数(MAU)は6,000万人を超えた。北米地域の月間アクティブユーザー数も1,000万人を上回るようになり、北米でのこれからの成長が期待されている。

 ネイバーグループのウェブトゥーン事業では、米国法人が本社のような役割をはたす司令塔となり、その下に韓国、日本、中国の支社がある。ネイバーのウェブトゥーン事業は「ウェブトゥーン分野のYouTube」といわれるほど、全世界の人々に愛されている。ネイバーは世界各国の自国語でつくられたウェブトゥーンを、各国の言語にそれぞれ翻訳して公開している。

ウェブ小説の世界ナンバーワンを買収

電子コンテンツ イメージ ネイバーは21年1月にはカナダのウェブ小説フラットフォーム企業であるワットパッドを買収した。買収金額は6億ドルで、自己資本の10%に達するほどの大きなM&A案件であった。

 ワットパッドは06年にカナダに設立された、ウェブ小説分野で首位の企業であり、毎月500万人の若手小説家が10億以上のストーリーを投稿するという。代表的なウェブ小説としては、ロマンチック小説の『キスから始まるものがたり』があり、ネットフリックスによってドラマ化された作品としても有名だ。

 ワットパッドのユーザーは米国とヨーロッパが中心で、ユーザー数は9,000万人に上る。そのため、ネイバーはワットパッドを買収することで米国とヨーロッパのユーザー9,000万人を囲い込むと同時に、ウェブ小説の分野でも世界を制覇して、コンテンツビジネス事業の拡大を狙う。

 さらに、ネイバーはインドネシアの最大手メディア企業に1億5,000万ドル(約164億円相当)を戦略的に投資している。同メディア企業の時価総額は103億ドル(1兆1,286億円相当)であり、インドネシア1,2位を争う地上波チャンネルをもつという。

 ネイバーは、韓国のドラマ制作の最大手であるスタジオドラゴンとも株式交換することで提携している。コンテンツ制作にまで事業の幅を拡げていることから、コンテンツビジネスにいかに力を入れているかがわかる。

 「これからはフラットフォーム時代だ」と言われて久しいが、ネイバーは世界的なコンテンツフラットフォーム企業を目指して、歩みを進めている。ネイバーは、コンテンツビジネスの柱として捉えているウェブトゥーン事業に注力しているが、韓国ではカカオトークがライバルであり、多くの漫画コンテンツをもつ日本の企業も無視できない競争相手である。将来、この市場はどのような展開となるのか、今後の行方に興味が尽きない。

(了)

(前)

関連キーワード

関連記事