【コロナで明暗企業(7)】SGホールディングス~親族間の抗争を勝ち抜いてきた創業家の栗和田会長が社長に復帰(1)
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青いしま模様のユニフォームでおなじみの佐川急便を傘下にもつSGホールディングス。新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり消費が増え、業績が絶好調な同社で衝撃的な人事があった。好業績を花道に引退すると思われていた創業家出身の栗和田榮一会長が社長に復帰する。再々登板だ。親族間の激烈な抗争を勝ち抜いてきた怪物経営者である。
栗和田会長が社長に再々登板
SGホールディングス(株)(以下、SGHD)は5月21日、代表取締役会長・栗和田榮一氏(74)が社長を兼務する人事を発表した。代表取締役社長・荒木秀夫氏(65)は名誉相談役に退く。6月25日の定時株主総会とその後の取締役会で正式決定する。
荒木氏から「成長戦略の実現にめどが立ち、経営の一線を退きたい」との申し出があり、栗和田氏の復帰が決まったとしている。荒木氏は事業会社・佐川急便(株)社長を6年務め、2019年4月にSGHD社長に就いたばかり。わずか2年でお役御免だ。
栗和田氏は6年ぶりの社長復帰となる。しかも、15年に社長を退いており、再々登板だ。17年12月に東証一部上場をはたし、上場後は増収増益。好業績を花道に経営の第一線から退くと思われていた。そのため、驚きをもたらした。
栗和田氏は、親族間の激烈な抗争を繰り広げるなかで、実父である創業者の故・佐川清氏の経営を否定。「普通の会社」になることを目指したが、それなのに創業家による経営は続ける。血は水よりも濃し。創業家の業といえるかもしれない。
コロナ禍の巣ごもり消費拡大で過去最高の業績
SGHDの21年3月期の連結決算は、営業収益、営業利益、当期利益のいずれも過去最高を更新した。売上高にあたる営業収益は1兆3,120億円(前期比11.8%増)、本業のもうけを示す営業利益は1,017億円(同34.8%増)、純利益は743億円(同57.2%増)だ。
新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり消費が拡大。インターネット通販などの取り扱い個数が14億300万個と7%増えた。1時間でこれまでの5倍にあたる10万個を仕分けできる大型物流施設が稼働し、トラックの待機時間やリードタイムが減った。取り扱い個数の増加で人件費や外注費が膨らんだが補った。
22年3月期の連結業績予想は増収減益。営業収益1兆3,250億円(前期比1.0%増)、純利益は740億円(同0.4%減)の見込み。新型コロナ禍による巣ごもり需要でインターネット通販は引き続き拡大を見込む一方、昨年の日立物流株式売却にともなう反動で、純利益は前期の水準を割り込む。コロナ禍で個人向け宅配個数が増えるほか、自治体からのコロナワクチン接種会場への配送受注が増える。
佐川清氏の先妻の子、栗和田氏は父親を知らずに育つ
栗和田氏は1946年10月10日、新潟県上越市生まれ。父は佐川急便創業者の故・佐川清氏。栗和田氏が生後5カ月のときに佐川氏が出奔したため、父を知らず、妻の実家の栗和田家で育つ。新潟県立新井高校を卒業。30代まで国鉄新潟管理局貨物課に勤務した。
佐川清氏は57年、京都で自転車2台による「飛脚便」を始めた。トラック輸送に手を広げて急成長した。
実父である佐川清氏の誘いにより、77年東京佐川急便(現・佐川急便)に入社。入社後、栗和田氏は社員を酷使する佐川急便のやり方に疑問を抱き、父に「このようなやり方では社員は定着しない」と直訴したが、「生意気なことをいうな」と殴られた。86年、大阪佐川急便社長に就任した。
佐川急便はさまざまな事件を起こしたことで有名だ。90年代初めの東京佐川急便事件が最大の転機となった。超ワンマンの佐川清氏は退任。存亡の危機に陥った佐川急便の社長に、急遽、栗和田氏が就いた。
(つづく)
【森村 和男】
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