2024年09月10日( 火 )

社長請負・玉塚元一氏がロッテHD社長に~骨肉の争いの真っただ中に飛び込んで大丈夫か!?(後)

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 「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングやローソンの社長を務めた玉塚元一氏(59)は、6月にロッテホールディングス(HD)の社長に就任した。菓子業界3位のロッテをはじめ、ファストフードのロッテリア、プロ野球球団の千葉ロッテマリーンズなどを抱えるロッテHDの「顏」となる。ロッテはお家騒動の渦中にある。創業家で会長の重光昭夫氏は、兄で元副会長の重光宏之氏との間で経営権をめぐって係争中だ。玉塚氏は「火中の栗を拾う」ことにならないだろうか。

澤田氏はファミマの社長を辞めた

 玉塚氏がロッテHDの社長に就任するのと入れ替わるように、盟友の澤田氏にも動きがあった。

 コンビニ業界2位のファミリーマートの顏が変わった。3月1日付で、16年から社長を務めてきた澤田貴司氏が副会長となり、親会社の伊藤忠商事からの細見研介氏が社長に就いた。澤田氏は、ディスカウント店「ドン・キホーテ」と提携してファミマの店舗でドンキ風の商品積み上げ陳列の実験をしたが、本格展開には至らなかった。澤田氏が期待されていたファミマの営業力強化は実らなかった。

 「ダイナミックな仕事でワクワクする」と約5年前の社長就任会見で語っていた澤田氏にとって、事実上の更迭人事は無念に違いない。コンビニを舞台にしたファミマの澤田氏とローソンの玉塚氏の盟友対決は、双方とも不本意なかたちで終わった。

澤田氏と玉塚氏が立ち上げたリヴァンプは新規上場のはずだった

 澤田氏と玉塚氏が立ち上げた企業経営支援会社リヴァンプは今年5月25日、東京証券取引所に上場承認され、6月29日ジャスダック(スタンダード)にIPO(新規上場)することが決まった。

 リヴァンプは2005年9月、澤田貴司氏(63)や玉塚元一氏(59)らを中心に設立。16年に、アンダーセン コンサルティング(現・アクセンチュア)出身の湯浅智之氏(44)が代表取締役社長執行役員CEO(最高経営責任者)に就任して現在に至る。

 同社グループは、同社と連結子会社4社、持ち分法適用会社4社で構成。21年3月期の連結決算は、売上高が前期比10.7%増の76億円、純利益が34.3%減の8億円だった。売上高の25.8%が良品計画向け。カルチュア・コンビニエンス・クラブが議決権の20%超を保有する。従業員は連結で268名。

 IPO募集株の内訳は公募株28万株に対して、売り出し株100万株で売り出し比率は3.5倍。売り出し放出人は、リヴァンプの創業者である澤田貴司氏。所有株数126万株を保有し、所有比率15.46%の第3位の大株主。うち100万株を売り出すことから、イグジット(出口)の色彩が濃い。

 公開規模はIPO想定価格(2,710円)ベースでオーバーアロットメントを含め39.8億円。

リヴァンプの主要株主

リヴァンプの上場承認取り消し、なぜだ!

 東京証券取引所は6月14日、29日にジャスダック市場への上場を予定していたリヴァンプの新規上場承認を取り消すと発表した。会社側からの申し出に基づくという。

 リヴァンプは同日、自己株式の処分ならびに株式売り出しについて、内部統制の有効性に関して確認すべき事項が見つかったと発表した。同社は、確認に時間を要すると判断し、東証への上場申請を取り下げた。上場手続きの再開時期は確認結果を踏まえ、状況を見極めたうえで総合的に判断するという。

 どんな問題があったかなど、具体的な内容は開示されていない。澤田氏のイグジットのために上場するのか、と批判されたことと関係があるのだろうか。澤田氏はリヴァンプの株式上場にともなう保有株式の売り出しで得る資金で、新たな投資会社を立ち上げることになると取り沙汰されていた。

 玉塚氏と澤田氏は経営者としての実績よりも、去就が話題になる人物だ。玉塚氏は、骨肉の争いの渦中にあるロッテHDの社長となり、「火中の栗」を拾った。澤田氏がどこに活路を求めるかに注目だ。

(了)

【森村 和男】

(中)

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