山口FG・吉村猛会長、平取締役降格~「田舎芝居」を観覧しての所感(3)
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「川筋男」の身の引き方、谷正明・元ふくおかFG会長兼社長
谷正明氏は近い将来、福岡銀行、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)の「中興の祖」と呼ばれるようになるだろう。福岡銀行も平成初頭のバブルで傷ついており、2000年前後には最大のピンチを迎えていた。
当時、副頭取に就任したばかりの谷氏は、福岡市役所の第三セクター・博多港開発の借金過多に懸念を抱いていた。山崎広太郎市長の時代である。山崎市長に対し、「博多港開発の借金は福岡市が肩代わりしていたただきたい」と強く迫った。山崎市長は「あんなにしつこい債権取り立てをするバンカーは見たことがない」と舌を巻いた。谷氏のように銀行を防衛する執念に燃えるバンカーは稀有な存在だ。
山口FGの吉村氏にはこうお伝えしたい。これは経営者のリスク管理として当然の行為でだと。おそらく、そう考えたことは一度もなかったのではないか。
同じころ、西日本銀行・福岡シティ銀行の合併が行われ、長年誇りとしてきた資金量第1位の地位を失ってしまっていた。しかし、谷副頭取は自ら先頭に立って債権回収に走った。また、同様の第3セクターである博多リバレインの再建にも、福銀別動隊が正面から取り組んだ。この債権回収と企業再生の経験が企業風土を変え、福岡銀行、ふくおかFGは大きく変貌した。
福岡銀行では50年にわたって、日本銀行出身者が頭取として天下りしていた。2005年に谷氏が頭取に就任し、半世紀ぶりに生え抜き頭取が誕生した。谷氏は、頭取として達成すべき目標を明確にしていたと思われる。自身の使命にめどをつけることができたため、現役から潔く退いた。名誉顧問や相談役として居座り、経営に口を挟むことを絶った。潔い「川筋男」の身の引き方である。トップが率先垂範すれば、行員たちの士気も上がる。
ライバル間で格差が付いた理由とは?
西日本シティ銀行に資金量でトップの座を奪われた福岡銀行側はプライドを傷つけられ、行員一同がトップ奪還に燃え上がった。ツキも転がってきた。ライバルの西日本シティ銀行では、久保田体制が強化されて内向きになっていたのだ。行員たちは「トップの座を死守」という闘争心を少しも持ち合わせていなかった。利益面でも3倍以上の差がついた。両行の2021年3月期の税引き前利益を比較すれば、もはやライバル関係とはいえないほどの格差がついている。
銀行のトップ就任とは、企業の経営者になることを意味する。企業経営のすべての責任をもたなければならない。まずは行員たちのモチベーションを高めることが重要となる。しかし、山口FGの吉村氏は、そうした方策を考えたことがなかったのではないだろうか。彼の頭にあったのは、「トップに立って田中耕三のオヤジのように好き放題振る舞う」ことだったのではないかと推察される。
前述のライバル2行の間で、もはや競争が成り立たないほどの大きな格差が付いた理由を検証すると、次のような結論となる。福銀側はトップ自らがもっとも苦労しながら働いた。一方、西日本シティ銀行側は行員が久保田頭取(現会長)の方しか向かない組織体制となり、お客へのサービスが疎かになったからである。現在の若い行員たちが頭取の言動に納得せずに、銀行に忠誠心を尽くすとは考えられない。
吉村氏は、田中氏の覚えがめでたいことから懐に入ることができた。そして、これが世の中の鉄則であると錯覚していたのではなかったかと思われる。
(つづく)
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