2024年12月22日( 日 )

天の網が菅義偉氏を絡め捕る

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「都民ファーストの善戦で、小池知事が『無観客開催』を強く主張することになる。菅義偉氏は最終的に押し切られる可能性が高く、この時点で菅義偉氏の『完敗』が鮮明になる」と訴えた7月5日付の記事を紹介する。

東京都議選が投開票日を迎えた。

定数は127。
過半数は64。

自公が過半数を確保するとの見通しが流布されていた。
しかし、現実はそうならなかった。

自公が圧勝するとの見通しを意図的に流布して人々の行動を誘導する。
こうした情報操作が展開されている。
しかし、自公は過半数議席を確保できなかった。

都民ファーストは壊滅的に敗北するとされたが大善戦した。
自民獲得議席が都民ファーストを1議席上回り、第一党を確保する可能性がある。

投票率は40.8%。
有権者の4割しか選挙に行かなかった。

選挙に行かない理由の第1は「入れたい候補者がいない」。
これに、「誰に入れていいかわからない」「政治家は公約を守らない」が続く。

投票率が下がれば下がるほど、自公には有利になる。
自公支持者は何があっても選挙に行く。
自公支持者は全有権者の25%程度と推定されるが、この支持者を全員選挙に動員することによって自公は政権を維持している。
投票率が4割なら自公が圧勝しておかしくない。

しかし、その自公が過半数議席を確保できなかった。
最大の理由は五輪の有観客開催強行方針に象徴される菅自公政権の横暴・暴走にある。
本ブログ、メルマガで、五輪の有観客開催強行を主導する自公には絶対に投票すべきでないことを訴えてきた。
東京都の有権者の間でも、この声が強まったと考えられる。

菅政治に対する明確なNOの意思表示。
都民ファーストは五輪の無観客化を公約に明示した。
自公の有観客開催よりもはるかに望ましい政策公約。

共産党やれいわ新選組は明確に東京五輪中止を訴えた。
この訴えも主権者から支持を集めたと考えられる。

菅義偉氏は「国民の命と健康を最優先する」と口で言いながら、真逆の行動をゴリ押しする。
人流が拡大し、新規陽性者数が拡大に転じるなかで緊急事態宣言解除を強行。
それだけでない。
五輪の有観客開催を押し通そうとしている。

開会式を2万人規模で開催する方針を示し、鉄道各社に五輪開催期間の終電繰り下げを要請した。
コロナで国民がどれだけ力を注いできたのかをまるで理解していない。

国会議席の多数を占有すれば何をやっても構わないと考えている。
議会制民主主義そのものを冒涜している。
国民の8割が東京五輪の中止または無観客開催を求めている。

その国民意思を無視して有観客開催を強行しようとしている。
民主主義の根幹を踏みにじる菅義偉氏に対して主権者が断罪する日は近い。

菅義偉氏が首相に就任したのは昨年9月。
9カ月が経過したが、菅義偉氏の政策運営に成功は皆無。
失政の連続だ。
最大の失政はコロナ。
菅コロナ大失政は鮮明。

GoToで感染爆発を招いた。
海外で変異株が確認されても迅速な水際対策を取らない。
変異株が容易に流入して感染爆発を引き起こした。

3月には五輪聖火リレー開始に合わせて緊急事態宣言を無理やり解除。

「再び緊急事態宣言を出すことがないように対策をしっかりやるのが私の責務」
と述べながら、わずか1カ月後に緊急事態宣言再発出に追い込まれた。
6月21日の緊急事態宣言解除も誤り。

解除を強行して五輪有観客開催を強行しようとする。
天の網は菅義偉氏を見逃さない。
菅内閣終焉が秒読み態勢に移行した。

菅首相の下で自民は敗北を重ねている。
6月20日投開票の静岡県知事選で自民党推薦の岩井茂樹元国土交通副大臣が現職の野党連合候補である川勝平太氏に大敗。

得票数は川勝氏95.7万票に対して岩井氏62.5万票。
菅自公の惨敗は年初から続いている。

1月17日投開票の沖縄県宮古島市長選では、社民・社大・共産・立民が推薦した前県議の座喜味一幸氏が、4選を目指した自民・公明推薦の下地敏彦氏に勝利。

宮古島では陸上自衛隊が地対艦・地対空ミサイル部隊の弾薬を保管する目的で弾薬庫の建設を進めている。
これに反対する市民が野党候補を支援。

敗北した下地前市長は5月12日に宮古島への陸上自衛隊配備をめぐり、業者に便宜を図った見返りに現金を受領した収賄容疑で逮捕までされた。

1月31日投開票の北九州市議選では自民党現職6名が落選。
自民党の退潮は鮮明。

3月21日投開票の千葉県知事選では自民党県議から出馬した関政幸氏を前千葉市長・熊谷俊人氏が圧倒。
熊谷氏は関氏得票の3倍を超える過去最高の140万票超えの票を得た。

そして、4月25日の国政三選挙で自民党が三敗=惨敗=全敗。
北海道2区衆院補選、長野県参院補選、広島県参院再選挙で野党連合候補が全勝。
その延長線上に実施された東京都議選。
自公が圧勝するのかどうかが焦点だった。

ところが、自公は完全なる伸び悩み。
過半数議席64に遠くおよばない。

小池百合子東京都知事は都民ファーストの苦戦予想が流布されるなかで雲隠れした。
しかし、都民ファーストが五輪無観客を公約に示したことで支持を盛り返していることが報じられると、選挙戦の最終局面で都民ファーストを見かけばかりでも応援した。
計算高い人物だ。

都民ファーストが善戦した最大の要因は「五輪無観客開催」公約にある。
都議選後、この選挙公約が一気にクローズアップされる。

小池百合子氏は退院後最初の記者会見で東京五輪について
「無観客を軸に検討」
と述べた。

都民ファーストが善戦したことを受けて、小池知事が「無観客開催」を強く主張することになる。
菅義偉氏は最終的に押し切られる可能性が高い。
この時点で菅義偉氏の「完敗」が鮮明になる。
次の衆院選を菅義偉氏の顔で戦うことが極めて難しくなる。

東京五輪ではこれから多数のコロナ陽性者が確認されることになる。
インパール作戦の敗走路が白骨街道と化したことが繰り返される。
TOKYOインパール2020
の名が永遠に残されることになるだろう。

日本の主権者は五輪の正体を知ってしまった。
五輪は「利権の祭典」「悪の祭典」、そして「コロナの祭典」。
IOCのバッハ会長、コーツ調整委員長をさげすむ者はいても尊敬する者は皆無になった。

自分の利益のために日本国民の命と健康を踏み台にする人間に誰1人として敬意を払わない。
東京五輪が終わり「五輪終」になる。

次の衆院総選挙で日本刷新を実現する方法がある。
反自公が共産党を含めて結束すること。
野党共闘を破壊するための勢力としての国民民主党の正体を人々が知り始めた。

もはや国民民主党は多数票を獲得できない。
野党共闘構築により2021年政治決戦で一気に政権奪還することが視界に入り始めた。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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