ストラテジーブレティン(283号)米国トリプル高、日本ダブル安の行方(前)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2021年7月5日付の記事を紹介。方向感見えにくくなった国際金融市場
コロナ禍が始まって以降、今年2月までの世界金融市場の趨勢は明快であった。米国をリード役にポストコロナの景気回復を予期して、金利と株価の同時上昇が世界一様に進行した。しかし、昨年8月0.5%で底入れした米国10年国債利回りが1.74%へと急上昇した3月ごろから乱調気味となり、方向感がまるで見えなくなってきた。また背後にある理屈もわかりにくくなっている。
まず、景気回復だから米国金利上昇という当然と思われていたトレンドが、ここ数カ月逆転している。また商品市況は上昇基調持続だが、商品ごとにまちまちで、原油、海運が強く、銅・木材などは高値圏で調整している。さらにドル相場(ドル貿易相手国加重平均指数)はコロナ禍にある米国の空前の金融緩和で下落を続けたが、5月末以降は上昇傾向に転じている。米国長期金利が低下しているのにドルが強くなるのは一見不可解である。
株価の動きも世界でまちまちになってきた。米国株式はダウ、S&P500、ナスダックの3指数とも史上最高値を更新するなど極めて強い。3月以降調整を続けていたナスダックも5月央以降急回復している。しかし、2月以降急伸した欧州株価は6月央以降高値圏で停滞色、日本株式は2月の高値から10%程度の下落を余儀なくされ不振が際立つ。
米国長期金利低下の謎解き、外国人による米国債買いか
一番の疑問は、米国10年国債利回りが6月16日のFOMCミーティングでテーパリング(資産購入の圧縮)と利上げの前倒しが示唆されたことがきっかけになり、1.4%台まで急低下してきたことである。中央銀行による資産(米国国債)購入は国債需給を引き締め、金利の上昇を抑えてきた。その購入額の減額は金利を押し上げる要因と考えられる。にもかかわらず、金利が低下したという謎をどう考えるか。2つの仮説が考えられる。
第1は米国景気見通しに対する悲観説、コロナ対策支援がなくなれば景気失速へというものである。しかし、米国経済見通しは明るく失速は考え難い。たしかにコロナ対策の家計給付金の一巡が予想されるなどのマイナスはあるが、コロナ終息を待つ欲望の堆積と巣ごもりで積み上げられた膨大な貯蓄(購買力)が一気に爆発するというペントアップディマンドは相当大きいはずである。
第2の仮説は好需給、つまり海外からの米国債投資が増加し米国国債需要が高まっているというもの。ここ数年、外国人の米国国債投資を阻んできた為替ヘッジコストが急低下し、日本や欧州の投資家は為替ヘッジをしてもなお1%かそれ以上の金利が得られるようになっている。【図表6】に見るように日本10年国債利回りは0.04%、ドイツ10年国債は−0.24%なので、米国国債投資による超過リターンはかつてなく大きい。この金利差を狙った投資が活発化している可能性がある。
(つづく)
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