2024年11月20日( 水 )

菅義偉氏の自業自得

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「自分の政治的利益を最優先する菅義偉氏が、結局は行き詰まるのは自業自得」と訴えた7月7日付の記事を紹介する。

不幸の原因は矛盾にあるといわれる。

菅義偉氏の最大の矛盾は
「国民の命と健康が最優先」
と言いながら
「国民の命と健康を最優先していない」
こと。

決定的な矛盾だ。

国民は命と健康を最優先している。
そのために東京五輪の中止を求めている。
五輪選手に責任はないが、コロナで国民全体が我慢を強いられている。

入学式も卒業式も修学旅行も学芸会も運動会も中止になった。
残念だけれども国民の命と健康には代えられない。
この気持ちで我慢を重ねてきている。

飲食店の営業自粛や時間短縮は死活問題。
生活の糧を奪われている人も多数いる。
しかし、国民の命と健康が最優先だから我慢を重ねている。
しかし、菅義偉氏はその基本を破っている。

五輪開催や五輪有観客開催の強行は国民の命と健康を損ねる。
この現実が動かしがたいものである以上、五輪開催、五輪有観客開催を断念するしかない。
ところが、菅義偉氏が五輪開催、五輪有観客開催をごり押しする姿勢を変えない。

菅義偉氏が五輪開催強行をごり押しする理由は
「自分自身の政治的利益のため」
自分の利益を国民の利益よりも優先している。

この基本姿勢を国民が認識して菅義偉氏にNOの意志を表示している。
このことに菅義偉氏が気付かないとすればあまりに鈍感だ。
気付きながら無視しているならあまりに不遜だ。

菅義偉氏は国民の信任を得ていない。
棚からぼたもちで総理の座に就いただけ。
総理就任後の地方選挙、国政選挙でことごとく敗北している。
日本の主権者は菅義偉氏に対して明確なNOの意思を示している。

菅義偉氏が執着する五輪開催に道はあった。
昨年からの1年4カ月の間に五輪開催に向けて全力を注ぐことは十分可能だった。
「検査と隔離」を徹底してコロナを封印することもできた。
現に、台湾、オーストラリア、ニュージーランドが実行して成功している。

日本には私権を制限する強硬な法的手段がないからできなかったというのは事実に反する。
菅義偉氏は感染収束に全力を挙げたのではなく、感染拡大を推進する施策を主導した。

悪政の代表がGoToトラブル政策。
GoToイートもGoToトラベルもトラブルを拡大させる原因にしかならなかった。

昨年7月22日のGoToトラベル始動も時期尚早だった。
昨年11月21日からの3連休に際してGoToトラベルを野放しにしたことも決定的な失策だった。

いずれも観光業界利権を優先したもの。
すべてに共通するのは「自分自身の利益」である。

12月に英国で変異株が確認された。
直ちに水際対策強化が求められたが、水際対策を骨抜きにしたのが菅義偉氏自身だ。
致命的な失政で二度の緊急事態宣言発出に追い込まれた。

その緊急事態宣言を中途半端に解除する。
その結果として感染拡大の再燃と再度の緊急事態宣言発出に追い込まれる。

この期におよんで菅義偉氏が五輪の有観客開催をごり押しするなら、今度は確実に菅義偉氏の息の根が止められることになるだろう。
天の網は荒いように見えて実は精巧にできている。

国民の命と健康よりも自分自身の政治的利益を優先する菅義偉氏の姿勢に自民党支持者も嫌悪感を持ち始めている。

選挙における自公への投票率は全有権者の25%。
これが自公の岩盤票だ。
この岩盤票を保持する限り、投票率が5割以下の選挙で自公が負けることはない。
投票総数の過半数票を確保するからだ。

現に2014年、17年の衆院総選挙では投票総数の25%の得票で全議席の7割を占有した。
自公が1つにまとまる一方で反自公が分裂するから自公は易々と勝利してしまう。
これが自公の勝利の方程式。

1.自公支持者を必ず選挙に動員する。
2.その他の人々の選挙への関心が低下するように仕向ける。
3.反自公の陣営を2つに分断する。

動員・妨害・分断が自公勝利の基本三戦術になっている。

ところが、21年に実施された地方選挙、国政選挙で、この法則が破綻している。
自公の岩盤票である全有権者25%得票の基本が崩壊している。

自民支持者が菅義偉氏から離反しているのだ。
菅義偉氏は自民党内に強い基盤を有していない。
二階俊博氏が後見役となり、党内力学を巧みに操作して菅義偉氏選出の流れを作った。
しかし、自民党内の主流派はこの采配に不満を蓄積させている。

党内多数勢力の首魁でない二階俊博氏が党運営の実権を握り、その二階氏に担がれた菅義偉氏が自民党を率いる構図に不満を有している。
その菅氏が自分自身の政治的利益だけを追求して国民の信を得る努力を放棄している。

東京都議選で自民党が過去2番目に少ない議席確保に終わったことについて、菅義偉氏は
「謙虚に受け止める」
と発言したが、言葉だけの謙虚さだ。

選挙結果を本当に謙虚に受け止めるなら、五輪の無観客開催を即時に明示できる。

国民は菅義偉氏が「国民の命と健康が最優先」と口で言いながら、「国民の命と健康を最優先」にせず、「自分の政治的利益を最優先」していることに対してNOを突きつけている。
そもそも、この状況下で五輪開催を強行することが間違っている。

日本の感染波動は第5波の拡大過程に移行している。
菅義偉氏はワクチンが切り札と発言したが、ワクチンは切り札にならない。

6月18日までの時点でワクチン接種後急死者が356人も確認されている。
2,200万人が接種した時点で356人のワクチン接種後急死者。

18~19年のシーズンにインフルエンザワクチン接種を受けた5,000万人のワクチン接種後急死者3名と比較して、明らかに異常な数値。
菅内閣とメディアはワクチン接種後急死事例に関する徹底的な情報公開を行う責務を負う。

このような重大事象を周知せずにワクチン接種を推進することに対しては、殺人罪、傷害罪の適用を視野に入れるべきだ。

東京五輪にワクチン接種は間に合わない。
入国した選手や関係者から多数のコロナ陽性者が判明することになるだろう。
連動して国内のスタッフからも多数のコロナ陽性者が出現するだろう。
五輪そのものが崩壊する可能性は低くない。

「国民の命と健康を最優先」せず、「自分の政治的利益を最優先」する菅義偉氏が、結局は行き詰まるのは天の采配であると同時に自業自得。

民主主義国家における為政者の基本は、主権者である国民の声に真摯に耳を傾けること。
この基本を守らぬ菅義偉氏が自滅するのは順当なことだ。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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