ユニデンHD、前代未聞の株主総会 独裁者・藤本前会長と決別(後)
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株主総会の参加は役員のみ。新型コロナウイルスから「生命と健康を守るため」として、株主総会への株主の来場を拒否。ネット中継もなく、後日、結果が通知されるだけ。こんな前代未聞の株主総会を開いたのが、無線通信機器メーカーのユニデンホールディングス(東京都中央区、東証一部上場)。1966年の会社設立から2020年の退任まで55年間にわたって独裁者として君臨してきた藤本秀朗・前会長(86)から決別するためだ。
携帯電話、スマホの普及に敗れる
1990年代から2000年代を通じた携帯電話、スマホの普及で、ユニデンの牙城であったコードレス電話市場が消滅。99年にユニデンは103億円の最終赤字に転落した。ここから猛烈なリストラを実施。05年に中国工場で1万7,000人の従業員によるストライキが発生。07年に中国から生産を撤退した。
首切りは役員にもおよんだ。10年から16年の間に、社長を含めて25人が任期中に退任した。14年には、新年会に子会社の社員が出席しなかったことに腹を立てた藤本会長兼社長が、子会社代表を即日解任したうえ、損害賠償訴訟を提起したものの敗訴し、逆に損害賠償するように命じられた。
従業員の大リストラの結果、10年3月期末に1万134人いた連結従業員数は、21年3月期末で833人となり、9割以上の社員がユニデンを去った。98年3月期に1,144億円あった連結売上高は、21年3月期に192億円へと激減した。
現在は、北米やオーストラリアでレーダー探知機やドライブレコーダーを販売しているが、主力は不動産事業に軸足を移した。都心オフィスビルや賃貸マンションの売買で利益を出す経営だ。かつてのコードレス電話で快進撃を続けていた面影はない。
日替わりメニューのように社長を挿げ替え
藤本氏は経営幹部に若手を起用して話題になった時期もあったが、晩年は権力の座にしがみつく独裁者に変貌した。日替わりメニューのように社長の首を次々と挿げ替えた。
12年6月、日本アイ・ビー・エム(株)出身の森英悟氏が社長に就いた。その半年後の12月、森氏は退任。藤本会長が社長を兼務した。16年に藤本氏が会長になり、石井邦尚氏が社長に就いたが、彼は2年で退任。その後任・早崎英二氏は1年で社長を辞めた。
19年6月の株主総会で、ソニー(株)出身でアマゾンジャパン(同)事業本部長を務めた木場和人氏が社長に就いたが、3カ月後の9月20日に辞任した。辞任は「健康上の理由」と素っ気ないものだった。
以来、社長不在という異常事態が続いた。不正会計の責任を取り、藤本会長が引責辞任。その直前の20年9月、空席となっていた社長に西川健之氏が就任したが、彼も半年で退任。 その後を継いだ武藤竜弘氏は、はたしてどのくらいもつのだろうか。
藤本氏、物言う株主とTOBを仕掛けるか?
これから藤本氏の大逆襲が始まる。ユニデンHDは「俺がつくり、俺が育てた俺の会社だ。誰にも渡すものか」という意識は強烈だ。
考えられることは1つ。ユニデンHDのTOB(株式公開買い付け)を実施して、株式を非公開にすること。M&Aとしては、買収先の資産を担保に借金し、その資金を元手に会社を買収するLBOの手法を採るだろう。
ユニデンHDは時価総額が小さく、不動産資産が豊富。投資ファンドと組んでLBOを実施すれば買収は可能だ。見返りが大きければ、物言う株主は藤本氏と手を握る。藤本氏はいつTOBを仕掛けるのか。市場関係者は固唾をのんで見守っている。
(了)
【森村 和男】
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