2024年11月22日( 金 )

行動抑制求める前に大運動会中止

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「緊急事態宣言下での五輪開催強行。この行動が人々の行動抑制意志を破壊した」と訴えた8月2日付の記事を紹介する。

五輪開催と日本の感染拡大には強い因果関係がある。「関係ない」というのは単なる責任回避。五輪開催強行で人々の行動抑制のたがが外れた(「五輪強行で行動抑制のたがが外れた」)。

卒業式がなくなり、入学式がなくなり、修学旅行がなくなり、運動会がなくなった。友人たちとの会食もなくなった。日本の市民が我慢に我慢を重ねてきている。願いはただ1つ。感染を早く収束させたいから。

7月12日に菅内閣は昨年来、4度目になる緊急事態宣言を発出した。コロナ感染が急拡大してしまった。感染拡大をもたらしているのはL452R変異株。3月にインドで確認された。この変異株を日本に流入させてはならなかった。しかし、菅義偉氏の「後手後手・小出し」対応でL452Rはあっという間に国内に流入した。その感染拡大が始動した。

菅義偉氏が緊急事態宣言を解除した6月21日には人流が再拡大に転じていた。安易な解除が感染再拡大をもたらす。

しかし、菅義偉氏は東京五輪開催を強行するため、そして、東京五輪を有観客にするために緊急事態宣言解除を強行した。その結果、感染が急拡大し、7月12日に四たび緊急事態宣言を発出する事態に追い込まれた。

感染急拡大で緊急事態宣言発出が必要になったのであるから、五輪開催を断念せざるを得ない。「国民の命と健康」を優先するなら、これ以外に選択肢はなかった。ところが、菅義偉氏は五輪開催強行に突き進んだ。IOCバッハ会長、コーツ副会長は緊急事態宣言が発出されても五輪開催を強行する姿勢を示してきた。

日本の主権者からバッシングを受けた姿勢。IOC幹部(患部)と菅義偉氏が五輪開催強行に突き進んだ理由は自分自身の利益追求のため。国民の命と健康を犠牲にして自分の利益を優先する。この行動ですべての日本国民が行動抑制をやめた。行動抑制の意志が破壊された。

緊急事態宣言下での五輪開催強行。この行動が人々の行動抑制意志を破壊した。結果として日本でコロナ感染が爆発した。五輪開催強行が日本のコロナ感染爆発の主因。「関係ない」は醜い責任回避の言葉でしかない。

7月22日からの4連休。民族大移動が発生した。感染が拡大している大都市圏から日本全国に大量の人の移動が発生。8月に入り、日本全国で感染が爆発する。4連休の人の移動について菅内閣は何も手立てを講じなかった。民族大移動を放置。観光業利権を優先した結果だ。

8月2日から緊急事態宣言の適用地域が拡大され、新たにまん延防止等重点措置の適用地域も拡大された。全国知事会が都道府県境を越える人の移動を制限すべきとの主張を示すが、実効性のある措置が取られなければまったく効果を発揮しない。

緊急事態宣言適用地域拡大にともない、酒類提供停止要請が拡大するが、もはや酒類提供停止要請は何の意味ももたない。飲食事業者が酒類提供停止、時短要請に従うのを辞めた。要請を無視して通常営業を続ける事業者が空前の好決算を示している。結局、正直者が馬鹿を見る結果が生まれている。誰もいうことを聞かなくなった。

自粛を要請する菅内閣が五輪開催を強行し、不要不急のパーティーに参加して楽しんでいる。五輪開催強行で感染が爆発した。事態収束の見通しがまったく立たない状況に至った。

菅義偉氏の引責辞任=国民による解任を急がねばならない。菅義偉氏が首相に就任してから評価すべき実績は皆無。常に強気で自分の考えを押し通してきた。政治は結果責任を負う。その結果で全敗の状況。

菅氏が最初に突き進んだのが学術会議会員任命拒否。この問題すら、まだ解決できていない。学術会議法制定時の国会審議で会員任命の方法が具体的に定められた。学術会議が推薦した者を形式的に首相が任命する。正当な事由なく首相は任命を拒否できない。しかし、菅義偉氏は任命を拒否した。

学術会議法違反の行為。戦争法制定を強行する政府の姿勢を批判していた学者が狙い撃ちにされた。憲法が保障する学問の自由を侵害する憲法違反行為だった。

コロナ大失政の罪も深い。菅コロナ三原則は「後手後手・小出し・右往左往」。東京五輪延期が決定されたのは昨年3月24日。東京五輪開催まで1年4カ月もの時間があった。この1年4カ月の期間に感染抑止にひたむきに取り組んできたなら状況は違っただろう。

ところが、菅義偉氏が取った行動は真逆のもの。GoToトラブル政策を全面推進。GoToトラブル始動を強行したのが昨年7月22日。GoToトラブル事業が感染拡大の主因になったことは明白。

菅氏は「GoToトラベルが感染拡大の主要な原因になったというエビデンスは存在しない」と言い張ったが、GoToトラブルが感染拡大の主要な原因になったことは明白だ。昨年11月21日からの3連休前にGoToトラブル事業を完全停止する必要があったが、菅氏がGoToトラブルを止めたのは12月29日。

感染拡大推進策を実施して感染が拡大すると緊急事態宣言を発出する。感染が減少し始めると、すぐに警戒を緩めて感染拡大推進策に転じる。「右往左往」を繰り返して問題を長期化させ、事態を一段と深刻化させる。

コロナで最大の警戒を払うべきは変異株を流入させないこと。昨年12月中旬に英国でN501Y変異株が確認された。直ちに水際対策厳格化が必要だったが、菅義偉氏は年明け後の1月13日まで抜本対応を妨害した。

本年3月中旬にインドでL452R変異株が確認された。直ちに水際対策厳格化が必要だったが、菅義偉氏が対応を始動させたのは5月に入ってから。このL452Rが今、感染第五波を著しく拡大させている。

五輪開催強行で警戒されるのは新たな変異株の流入。南アメリカでF490S変異株が確認されている。この変異株が東京五輪とともに国内に流入したと考えられる。ほかの変異株も流入しているだろう。

新種の変異株はワクチン有効性を引き下げる。五輪開催に連動して日本の感染爆発が加速し、深刻な事態がもたらされる。

日本国民は一秒でも早く、菅失政内閣を退場させる必要がある。夏休みの都道府県境を越える移動を規制すべきとの知事会の意見表明について、加藤官房長官は「できるだけ避けてほしい」と述べたが、お話にならない。国民の誰1人、この言葉に従う者はいない。この言葉を掲げるなら、その前に大運動会を中止すべきだ。

無能な政府の下で国民の災厄拡大はとどまるところを知らない。


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植草一秀の『知られざる真実』

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