長崎自動車と長崎県交通局、来春から長崎市内の競合バス路線を共同経営
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長崎市の長崎自動車と長崎県交通局は、来年4月をメドに市内の競合路線バスを共同経営に移行するための協議を始めた。独禁法が禁止する路線調整や運賃協定などを認める独禁法特例法の適用が条件となるため、長崎市が8月末までに同市地域公共交通計画を策定し後押しする。
独禁法特例法適用の路線バス共同経営は、熊本市のバス会社5社が4月、市内と近郊を結ぶ4路線に全国で初めて導入。直後に岡山市のバス会社2社が続き、地方中核都市の路線バス存続の“切り札”になりつつある。
長崎市では人口の減少を上回って、路線バス利用者が減っている。市によると、2013年/18年比で人口は4.5%減、路線バス利用者は3倍近い12.0%減だった。市は、路線バス利用者は19年/35年比で50%減、すなわち半減すると推計する。路線バスからマイカーに切り替える高齢者が増え続けているという。
その一方で長崎市は、公共交通の徒歩圏人口カバー率(バス停や駅から徒歩圏内の人口)が80%。全国平均55%を大きく上回り、住民が公共交通機関に容易にアクセスできる街だ。
それでも少子高齢化の進行で路線バスの先行きは厳しい。20年はコロナ禍が追い打ちをかけた。長崎バスは約10億円、県営バスは約6億円の赤字だった。「このまま何もしなければ数年後には路線バス網を維持できなくなる」。長崎市公共交通対策室は危機感を募らせる。
6月、両社は市の仲介で路線バス網の維持を目的に連携協定を結んだ。内容は(1)市が策定する同市地域公共交通計画の基本方針に照らし協力体制をつくる、(2)市と同市公共交通活性化協議会が連携して取り組む、(3)独禁法特例法による共同経営導入を検討する――の3点。
市は同市地域公共交通計画素案(21~25年度)をすでに公開し、8月11日まで素案に対する住民の意見を公募している。
素案では、バスの便数を調整するため、市内3地域に設ける乗り継ぎ拠点(ハブ)を軸に、生活拠点(スポーク)別系統で運行する“ハブ&スポーク型バス網”をつくる。ハブは市東部「東長崎」、市北部「西浦上」、市南西部「土井首・深堀」。現在、都心部に集中している両社のハブを分散させ、競合バス便を調整する。
また計画の実効性を高めるため、始発・終点間のどのバス停間でも乗客は同数という「平均乗車密度」の目標値を25年は11・9人とする。19年の実績は10・1人だった。
市は、素案を成案化した同計画を公共交通事業者や道路管理者などでつくる長崎市公共交通活性化協議会(地域公共交通活性化法に基づく組織)に報告する。その後、両社は共同経営計画案作成に正式着手。12月から来年1月にかけて同協議会の意見を聞き、来年2月中に国交省に共同経営計画の認可申請を行うという段取りだ。
一方、熊本市のバス5社が4月に共同経営を導入した同市と近郊間の4路線と、全路線の比較(4~6月間とコロナ禍前の19年度)では、利用者数は全路線と4路線が同程度の減少率。しかし、実車走行キロの減少率は4路線が全路線を6.0ポイント上回り、減便効果を反映し収益性の改善につながったという。
【南里 秀之】
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