「アジアのなかの九州」として世界に向けた発展を目指す(前)
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(一社)九州経済連合会 会長 倉富 純男 氏
1961年に、九州・山口経済界の一体化を唱えて創立された(一社)九州経済連合会。今年60周年を迎えたのを機に2030年の九州について構想した「九州将来ビジョン2030」を取りまとめるなど、地域経済・社会の活性化に尽力している。「アジアのなかの九州」を掲げ、注力する農林水産物・食品のアジア市場への輸出促進や海外企業誘致などの取り組みについて、6月に会長に就任した倉富純男氏に話をうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)
「アジアのなかの九州」の枠組みで輸出促進
――現在デジタル化が進行していますが、九経連としてこの社会・経済の変革にどう対応していきますか。
倉富純男氏(以下、倉富) 麻生泰前会長が「九州将来ビジョン2030」をしっかりと策定されました。これはビジョン検討特別委員会とワーキンググループを設置して約1年をかけて議論を重ね、事務局主体で取りまとめた将来ビジョンです。諸先輩たちと私たちの向かうベクトル、ビジョンはまったく同じであり、DXへの対応も含めて、このなかに魂を込めることが私たちに託されたと感じています。
――九州の自立のためには、「アジアのなかの九州」という枠組みで輸出市場を開拓する必要があります。ただ、木材などでは日本が他国に競り負けて輸出できず、日本が敬遠される状況が生まれており、懸念しています。魚市場の関係者は、中国・上海に運べば同じ鮮魚をより高価格で販売できると話すほどです。
倉富 高値で販売できること自体は良いことなのですが、将来、九州・福岡の住民が魚を食べることができなくなる時代になる可能性があるということです。鮮魚はそもそも資源自体が豊富にあるわけではないため、海外で受け入れられていくにつれて、国内で食べることができなくなってしまうというジレンマですね。同じようなケースはほかにも多くあります。
しかし、限られたパイを中国などの近隣諸国と取り合うのはよくありません。今後は、本当においしくて質のよいものを地産地消することを基本にしなければいけないと思います。地産地消する流れにおいて、消費者のニーズを満たせるよう、良質なものを生産することが求められます。そして、その良質なものをアジアの人々に知ってもらい、高単価で買ってもらうという流れがあるべき姿だと思います。九州のものをしゃにむにアジアの市場にもって行けばよいということではありません。
ただ、農産物の輸出拡大には農薬、鮮度、一定量の確保などクリアすべき諸問題があります。そこで必要となってくるのは、まずネットワークの構築とルールの策定です。次に農業、漁業、林業などに従事する人々が自立できるようにするためには、国内外に新しいマーケットを創出し、「良いものは高値で」という商流をつくることが重要だと思います。
成長を目指すには外に目を向けるしかありません。そこで自立するための土台をしっかりとつくっておく必要があります。ただ、海外で売れそうだと目に止まったもの、国内で余っているものを販売していくということでは続かないでしょう。良いものを海外で販売していく時代であり、そのために自分たちで良いものへとしっかり磨き上げることが大事になってくると思います。
――農産物ではどのような商品が輸出の候補として考えられますか。
倉富 農産物でアジア向けとなると、鮮度が重要な商品を既存のルートとネットワークで輸出することは容易でありません。検疫の問題についていえば、相手国に応じた農薬の使い方が求められ、環境負荷の少ないものが必要となります。
九経連主導で2015年に設立した地域商社「九州農水産物直販(株)」で、今取り組んでいる商品の1つがサツマイモです。安定的に輸出するためには、質に加えて一定の量を確保する必要があり、病害などの影響で九州だけでは足りないため、東北経済連合会と連携して合わせて輸出しています。
サツマイモの輸出先は香港です。現在のところ、農産物輸出は香港向けが大半であり、その次がシンガポールです。この両地域は市場であると同時に、そこから中国やASEAN諸国との間でものが行き交う基地でもあるためです。直接中国などに輸出するには一定の量が必要なだけでなく、法律上の障壁もあります。本来あるべき日中間貿易の潜在力が十分に発揮されているとは言い難い状況となっています。
香港の背後には中国本土という大きなマーケットがあります。現在香港向けに輸出している商品については今後、中国市場を切り拓いていくことも念頭に置いており、中国で受け入れられるよう育てていく必要があります。このサツマイモは取っ掛かりの1つであり、このようなケースを積み重ねていく必要があります。
そのほか、現在カンボジアとマレーシアのイオン店舗での九州フェア開催などに向けて、「九州の食輸出協議会」(2020年設立)加入の地域商社を通じた九州産品の商談会を実施しています。
また、農産物輸出の重要品目の1つが米であり、品質が向上していて、安全面も含めて海外でも受け入れられるという自負があります。炊飯器の輸出にとどまることなく、一定の量の米を輸出すべきです。ただ、米にも農薬などの輸出上クリアにすべき問題があります。中国のように米の輸入に対して非常に厳しい国もあります。そのため、安全・安心で、みんなが欲しがっているものであることを証明して、風穴を開ける、輸出の諸規制を緩和・撤廃してもらう流れをつくっていくことが大事です。良質で高単価なものを継続的に輸出できるよう風穴を開けていきます。
(つづく)
【文・構成:茅野 雅弘】
<プロフィール>
倉富 純男(くらとみ すみお)
1953年、福岡県うきは市生まれ。78年青山学院大学卒業、西日本鉄道(株)入社。都市開発事業本部商業レジャー事業部長、取締役常務執行役員経営企画本部長などを経て、2013年6月に代表取締役社長就任。21年4月から代表取締役会長。同6月、九州経済連合会会長に就任。福岡県経営者協会会長、九州経営者協会会長も務める。
<ASSOCIATION INFORMATION>
会 長:倉富 純男
所在地:福岡市中央区渡辺通2-1-82
設 立:1961年4月
TEL:092-761-4261
FAX:092-724-2102
URL:https://www.kyukeiren.or.jp法人名
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