スペースワールドの閉園と跡地利用(前)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
かつて福岡県北九州市八幡東区には、「スペースワールド」という「宇宙」「宇宙開発」をテーマとしたテーマパークが存在した。
このテーマパークが開業したきっかけは、1980年代後半に米国の本家のユニバーサル・スタジオが日本進出を検討したことに始まる。
最初の候補地として、広大な敷地が確保できる千葉県君津市、北九州市の新日本製鐵(現・日本製鉄)や大阪府堺市の新日本製鐵の所有地が挙がった。新日鐵には、経営の多角化と遊休地の効率的な利活用を図りたいという思いがあった。
北九州市にある新日鐵の遊休地が候補となったのは、北九州市が政令指定都市であるだけでなく、同じく政令指定都市であり、かつ県庁所在地である福岡市からも近いことがある。また、新日鐵の敷地のそばを鹿児島本線が通っており、そこへ駅を設置すれば、さらなる誘客も図れると考えたことが挙げられる。
ユニバーサル・スタジオは、現在の大阪市此花区にUSJをオープンさせる前は、関西国際空港に近い大阪府堺市にある新日鐵の遊休地を候補に考えていた。北九州市の新日鐵の遊休地が候補から外れたことから、新日鐵はテーマパークの運営を行う会社を設立した。そして北九州市の遊休地には、「宇宙」「宇宙開発」をテーマとした「スペースワールド」が90年4月22日に開業している。
開業した当時は、鹿児島本線の枝光駅が最寄り駅であり、そこからバスやタクシーを利用しなければならず、不便であった。そこで99年に鹿児島本線に「スペースワールド駅」が設けられ、最寄り駅から徒歩によるアクセスが可能となり、利便性が向上した。
「スペースワールド」の象徴はスペースシャトルの大きな模型であり、観覧車や絶叫系遊具を備えるなど遊園地としての要素もあったが、「宇宙」「宇宙開発」への動機付けを行うなど科学教育の一端も担っていた。
開業した当初は、新日鐵が設立した運営会社が経営を担っていたが、2005年4月27日には、運営権を新日鐵からリゾート運営会社の加森観光に譲渡する旨が発表された。
とくに晩年は、学校団体向けに宇宙飛行士学習施設「アストレスタ」として宿泊をともなうプログラムが組まれ、宇宙博物館およびスペースシャトルは現存し、「月の石」の展示も継続されるなど、博物館の性格が強くなっていた。
16年12月16日には、運営企業である加森観光系の(株)ジャパンパーク&リゾートは、少子化の進行、北九州市の人口減少、近年のレジャーの多様化、長崎県佐世保市のハウステンボスとの競合、施設の陳腐化などによる経営難を理由に、17年12月末で「スペースワールド」を閉園する旨を発表した。
だが16年12月16日付の日本経済新聞では、地主の新日鐵住金と運営者の加森観光との間で、賃貸借契約の更新交渉が不調に終わったことが原因である旨が述べられている。
(つづく)
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