2024年12月24日( 火 )

【初盆風情考察】持続不可能な日本(2)

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娘2人が孫4人を連れて里帰り

 福岡市西区の筆者の近隣で子どもの声が聞こえなくなって10年は過ぎた。この地区は1986年~89年にかけて戸建住宅が建てられた新興住宅地であった。世帯主の大半は30代~40代であったと記憶する。どの家にも子どもがいた。

 30年が経ち、この住宅地区は様変わりした。交通面では福岡市地下鉄3号線(七隈線)が開通し、天神まで約24分で行けるようになるなど利便性が大きく向上した。しかし、子どもの姿が見えず、声も聞かれなくなった。周辺の地区を含め、現役から退いた老人が大半を占めるまちへと様変わりしてしまったのだ。故人になる人、老人ホーム・病院に移る人が続出し、1人ひとりといなくなっていく。夫婦2人で生活する世帯が少数派に転落するのは時間の問題だ。あと10年も経てばこの地域は持続不可能になるのではないか。

 拙宅の向かいの世帯の夫婦も定年を迎えた。この夫婦には娘さんが2人いて、大学を卒業後、東京で就職した。2人とも結婚しており、姉には9歳の女の子、6歳の男の子の2人の子どもがいる。妹には双子の子どもがいる。この娘さん2人の家族は毎回期を同じくして盆前に里帰りしており、今年も里帰りしてきた。子どもたちの元気な声が聞こえてくる。ビニール袋にお菓子を入れて渡した。年末に帰省することもあるが、毎回、この孫たちがだんだん成長していっていることを実感する。

結婚もしない子どもたち

独身女性 イメージ 盆の先祖供養に里帰りする光景を目撃できるのはこの拙宅向かいの家族だけである。なぜかというと、ほかの世帯に子どもはいるが、彼らは皆所帯をもっていないのである。

 左隣の世帯には子どもがおらず夫婦2人暮らし。ご主人の趣味は園芸でプロの庭師レベルの腕前だ。羨ましい。ただ夫婦とも元気でいられるのはあと10年が限度であろう。右隣の世帯はご主人が癌で亡くなり、息子2人のうち1人が交通事故で亡くなった。未亡人と息子1人暮らしだ。

 左斜め向かいの世帯のご主人は学校の校長を務めていたが、87歳で人生を全うする。未亡人と娘の2人暮らしであり、息子はいるが、あまり見ず、おそらく一人暮らしをしているのであろう。右斜め前の世帯は70歳手前の夫婦。息子が1人(40歳前後)いて。東京からUターンしてきた際に就職先を紹介したくらいの付合いはある。だが、この息子も結婚した形跡が見られない。間近にある5所帯で家族が続いていく可能性があるのは1つのみであり、単純に言えば20%の可能性しかないのだ。

 3軒先は福岡市役所で局長を務めた方の住処である。3人娘がいるが、まったく見かけることがないので尋ねたところ、ご主人は「娘3人で西新地区のマンションに同居しています。1人では暮らせないそうで、いやぁ、困ったことです」とボヤく。長女が42才、3女が36才であったと記憶する。結婚しようという意識は皆無とか。この家の隣の世帯はご主人が亡くなり未亡人は老人ホームへ入所。娘2人が実家に転がりこんでいて、お隣同様に結婚の意志は無さそうだ。

 先祖供養の盆に接して、近所の今後10年を見通してみると、実例を挙げて示した8所帯(拙宅含む)において、夫婦ともに元気な世帯は1つしかないという現実が横たわっている。未婚の子どもたちが居座るとみられる世帯が4つ、あと3つの住宅は解体・新築されて売りに出されるであろう。

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