危機感が漂う韓国経済(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
サムスン電子はメモリ半導体の業績が好調で、21年第2四半期に米国・インテルを追い抜いて、世界一の座に返り咲いた。サムスン電子の業績は今のところ順調で、111兆ウォン(約10兆3,957億円)以上の現金も保有している。しかし、絶好調に見えるサムスン電子にも、さまざまな不安材料がある。
メモリ半導体ピーク説の真相
韓国最大の企業であるサムスン電子の副会長である李在鎔(イ・ジェヨン)氏は8月13日に仮釈放された。李氏は2021年1月に、贈賄罪などで懲役2年6カ月の実刑判決を受けて収監されていたため、およそ7カ月ぶりの社会復帰となった。
サムスン電子は、メモリ半導体の割合が売上高の7割以上を占めており、メモリ半導体への偏重が指摘されていたところ、JPモルガンが「メモリ半導体は今がピークであり、今後は需要が鈍化する」という業界の予想を発表し、サムスン電子の株価を下落させた。加えて、半導体の主戦場である非メモリ分野における台湾、韓国、米国の主要半導体メーカーのシェア争いも激化している。このような状況下で、サムスンの対応はライバルに比べていつも後手に回っているため、業界の関係者はサムスンの将来に懸念を表明している。
メモリ半導体のピーク説が噂されるなか、ファウンドリー事業においても、台湾・TSMCとの競争でシェアが縮まるどころか、むしろその差は広がっている。さらに、半導体の長年の王者であったインテルもファウンドリー事業への本格参入を宣言して、ライバルがさらに増えた。インテルは25年までに2ナノ工程である「インテル20A」を量産し、クアルコムチップを製造すると発表した。TSMCも来年、業界で初めて3ナノ工程の量産体制を築くという計画を発表した。3ナノ工程の主要顧客としてアップルなどを確保したという。
一方、サムスン電子は米国のファウンドリー工場建設に170億ドルを投資することを計画していたが、候補地もまだ決まっていない。このような状況は実績にも反映されており、市場調査会社の台湾・トレンドフォースによると、21年第2四半期のファウンドリー市場の世界シェアはTSMCが55%、サムスン電子が17%となっている。韓国経済は半導体などの輸出に支えられて、現在は堅調に推移しているが、メモリ半導体のピーク説などにより、韓国経済への不安感が高まっている。
(つづく)
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