【IR福岡誘致開発特別連載52】IR長崎審査、県行政による出来レースが表面化
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IR長崎の最終審査の不正報道
世界的著名なカジノ情報誌(Inside Asian Gaming)が19日、「長崎IRプロセスがカオス状態に―RFPは茶番だったのか?」と報道した。当事者である長崎県行政では、この不正報道を受け、その言い訳に躍起となり、大きな混乱が起こっている。
筆者は、前々号「【IR福岡誘致開発特別連載50】IR長崎にはカジノ・オーストリアしか選択肢はなかった」において、民間事業者の公募RFP(事業者選定に関わる提案書提出)の最終審査過程では、「IR長崎の選択肢はカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンしかなかった」とすでに説明している。
以前から、中国企業のオシドリ・インターナショナル・ホールディングス(以下、オシドリ)とニキチャウフー・グループ(以下、ニキチャウフー)には、ファーウェイ問題などでの米中覇権争いや日米経済安全保障などの理由により、IR長崎に参加するチャンスは一切ないと明言してきた。
すべての中国系IR投資企業は、IR横浜やIR和歌山から表向きは“撤退”したことになっているが、事実上は外されたのである。ただし、今回は「お上」である長崎県行政が直接手を下して、そのことを実行したことが大問題になっているのだ。
IR長崎は、安倍前政権の「安倍・トランプ密約」から始まった米国企業を対象とするIR関連法に基づいているが、公には公開入札という「公募」方式になっている。今回の結果は、中国系企業のオシドリとニキチャウフーの2社はこのことを認識しておらず、振り回されたことによるものだ。ただし、今回の件で長崎県行政に不正の証拠が見つかるならば完全な法律違反であり、以前から予想していた通り、IR長崎誘致開発事業は崩壊するだろう。
IR大阪やIR横浜では、管轄する行政が正式に立候補する前に、本件IRの主体となる優秀な民間オーナー企業が水面下で組織を組成し、公募後に表に出る戦略をとってきた(IR横浜は市長選の結果、崩壊したが)。その点で、北海道、長崎、和歌山におけるIR誘致開発では、行政・企業ともすべての能力において最初から無理があり、愚かな結果となった後にそのことに気が付いたという始末だ。
北海道の人口は528万人であり、福岡県の人口511万人とほぼ同じだ。和歌山県の人口は94万人、長崎県の人口は五島、壱岐、対馬など島嶼部を含めて131万人だ。それぞれの都市圏の後背地人口は福岡都市圏とは比較にならないため、本件IR誘致開発事業を行うことには最初から無理があり、実現は困難である。今回のコロナ禍によりこの弱点が露呈している。
オシドリもニキチャウフーも、今回の審査結果のおかげで“命拾い”をしたと考えて、素直に撤退することが良策である。長崎県行政が作成した、年間約600~900万人以上をIRに集客する計画は実現不可能だと考えている。候補地であるハウステンボスの年間集客実績で過去最高であったのは310万人(2014年)であるが、現状は前年比46%減の138万人(20年)である。今回の落札者であるカジノ・オーストリアが集客に注力して、来場人数が2~3割増えることはあっても、ハウステンボスが現状で集客している人数とそれほど変わらないと考えられる。
本件 IR誘致開発事業の対象候補地は、大阪市中心の関西都市圏、福岡市中心の北部九州都市圏、横浜市市長選挙後の東京関東都市圏のいずれかの場所でなければ、採算は合わないだろう。
【青木 義彦】
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