2024年11月24日( 日 )

菅総理総裁選不出馬「ポスト投げ出し」を野党トップが批判

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立憲民主党・枝野代表、「総裁選先送り・解散総選挙先行論」を訴える

立憲民主党・枝野幸男代表
立憲民主党・枝野幸男代表

 菅義偉首相が3日午前の臨時役員会で総裁選不出馬を表明したが、これを受けて野党トップは相次いで記者会見を開き、突然の総理ポスト投げ出しを厳しく批判した。

 午後0時半からは 立憲民主党・枝野幸男代表がコロナ対策の野党合同ヒアリングが開かれていた部屋で緊急会見に臨み、次のように切り出した。

 「国民生活は今、コロナウィルスの感染爆発と医療崩壊という状況にあります。医療従事者、飲食店に止まらず、本当に事業継続の瀬戸際にあるさまざまな事業者の皆さん、困窮の極みにある困窮者の皆さん。本当に政治は一刻を争うコロナへの対応が求められる状況にあります。

 国民生活への喫緊の対応が求められるなかで、こうしたことへの見通しもないまま、そうした事態(菅政権のレームダック状態)に至ったことには、甚だ怒りをもって受け止めています。総理も無責任ですし、こうした状況をつくった自民党全体にもはや政権を運営する資格はないと言わざるを得ない。自民党内の権力闘争ではなく、速やかに新しい政権を発足させる準備が我々にはすでに十分に整っていると思っています」。

 続く質疑応答では、新総裁・総理誕生で総選挙の日程が後ろ倒しになることの質問が相次いだが、枝野代表は2カ月の政治空白をつくることを次のように問題視した。

「(衆議院議員任期の)10月21日までに総選挙を行ったとしても、レームダックになっている菅内閣を考えると2カ月の政治空白が生じます。後ろ倒しにするならば、それがさらに長くなっていく。その事態を招いているのは自民党の責任です。2カ月を党内権力闘争に当てていいのでしょうか。自民党として責任をもって対応をしてほしいと強く思っています」

 この回答を受けるかたちで、「総裁選をせずに解散・総選挙をした方がいいと考えているのですか」との質問が出たが、枝野代表はこう答えた。

「想定をしていない異常事態を招いた自民党がどうやったら政治空白を最短にして、国民の命と暮らしを守るための政治状況をつくれるのでしょうか。まず自民党が責任をもって結果を示してもらわないといけません。それも示せない政党なのかが問われていると思います」

 ここで筆者は、菅首相がコロナ対策への集中を不出馬の理由としていたため「政治休戦をして臨時国会を開いてコロナ対策に集中することを想定しているのですか」と聞くと、枝野代表は次のように答えた。

「レームダックの内閣で本当に実りあることができるのでしょうか。我々は『大規模な予備費で(コロナ対策を)やろうではないか』という具体的な提案をしてきていますが、大胆な対策と予備費の執行がレームダック内閣でできるのでしょうか。こういうことを含めて、まずは無責任な状況をつくり上げた自民党として、しっかりと整理をしてほしいと思います」

 自民党に責任ある対応を求めたうえで、枝野代表は「総裁選先送り・解散総選挙先行論」を訴えた。

「我々としてはすぐにでも解散をして、菅内閣の次は枝野内閣をつくっていただければ、しっかりと責任をもって、これを最短で収束させます」

 総裁選で党内権力闘争に2カ月もかけるのではなく、即座に解散・総選挙を実施して「自民党政権か枝野政権か」の審判を先にする代替案を示し、政権交代によって政治空白の最短化とコロナの早期収束が可能になると枝野代表は訴えたのだ。

共産党・志位委員長が臨時会見で訴え

共産党・志位和夫委員長
共産党・志位和夫委員長

 政権交代の必要性については、共産党の志位和夫委員長も午後1時半からの臨時会見で次のように訴えた。

 「菅首相の政権投げ出しという事態となりました。この政権の投げ出しは、『こんな政治はもう我慢ならない』という、国民の世論と運動に追い詰められた結果だと思います。まず何よりも、コロナ対応における無為無策、そしてオリンピック・パラリンピックの開催によって感染を広めた逆行、この無為無策と逆行によって、感染爆発と医療崩壊を招きました。このことに対する批判がいま大きく、広がっています。

 それから強権政治という点で、沖縄の辺野古新基地建設の強行。日本学術会議に対する違憲違法な人事介入など、無法な強権を振るったことへの批判も広がっています。

 さらに腐敗という点でいうと、この政権のもとで数々の政治と金をめぐる事件が連続しているわけですが、ただの1つも解明責任を果たさず、ただの1つも反省もありません。

 コロナの問題、強権政治、そして腐敗政治に対する国民の『こんな政治は我慢ならない』という世論と運動に追い詰められた結果としての政権投げ出しと思います。

 同時に強調したいのは、これは菅首相1人の問題ではないことです。9年間にわたる安倍・菅政治が破綻したということだと思います。その安倍・菅政治を、自民党と公明党をあげて支えてきました。そのため、自公政治そのものの破綻が今起こっています。自公全体が共同責任を負っていると思います。

 今、自民党の総裁選が行われようとしていますが、この総裁選によって誰が新しい総裁になったとしても、そこから新しいものは生まれてきません。破綻した自民党政治、この枠内で、コップのなかで顔を入れ替えたとしても、新しいものは出てきません。現状を打開する展望は、まったく見えてこないだろうと思います。

 だから今求められているのは、政権交代。自公政治そのものを退場させ、野党が結束して、新しい政権をつくるだということを強く言いたい。

 本気の市民と野党の共闘の体制を速やかにつくり上げ、来るべき総選挙で政権交代を実現し、新しい政権をつくるために全力を尽くしたいです」。

 質疑応答に入ったところで筆者は「岸田氏が総裁総理になって解散に突入する可能性が出てきたと思いますが、岸田氏に対する見方、どのあたりを批判して違いを打ち出すのかを聞かせてください」と尋ねると、志位委員長はこう答えた。

「総裁選に立候補する個々の政治家に対するコメントは控えたい。先ほど言ったように、いま名前を挙げられた方を含めて、みんなで安倍・菅政治を支えてきたではないですか。共同責任があります。そういう枠のなかで誰に変わろうと、新しいものは生まれてこないことはハッキリしています」

政権交代実現に欠かせない野党共闘の課題

 続いて政権交代実現に欠かせない野党共闘(選挙協力)の課題についても聞いてみた。

 ――立民との選挙協力の進展がいま1つ進んでいないような気もしますが、横浜市長選でも共産党嫌いの連合に配慮して共産党に(新市長となった山中竹春候補への)推薦要請を出さないなど、立民の連合への配慮しすぎの姿勢もマイナス要因になる恐れもあります。

 志位委員長 私は野党がこの局面で、野党も政治姿勢が問われると思います。これだけ政権が追い詰められています。そして、国民のなかからも「政権交代」という声がこれだけ出ています。そのときに本気の共闘をやるのかどうかが問われています。政権を取って新しい政治をつくるという旗を政策でも掲げます。そして、選挙協力をしっかりやります。これを野党の側でもやらないと、国民の信頼、期待に応えることになりません。これは野党の側も問われています。ただ全体は、国民の世論と運動が追い詰めた結果だと捉えています。そこをみんなで確信をもちながら、さらに進めていくことが大切だと思っています。

   枝野代表が提唱している、政治空白を最短化する「総裁選先送り・解散総選挙先行論」が受け入れられなければ、自民党内の権力闘争が9月末まで続くことになるが、メデイアの関心を同程度に引き寄せるためには野党側が新しい政治をつくる共通政策を打ち出し、さらなる選挙協力を強化することが不可欠だ。菅首相退陣が決まった以上、今秋の総選挙は政権交代(枝野政権誕生)のメリットや現実味をどこまで広められるのか、にかかっているといえるのだ。

【横田 一】

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