“エセ改革派”河野太郎氏、「脱原発」より総理ポスト優先~本物の脱原発派・山本太郎氏出馬で河野氏と衝突の可能性
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「脱原発」の文言が消え失せた政策パンフレット
河野太郎・行革担当大臣が9月10日の総裁選出馬会見で、持論だった脱原発を封印し続けた。会見場入口に積まれていた政策パンフレットを見ると、「脱原発」の文言が消え失せ、「産業界も安心できる現実的なエネルギー政策をすすめます」としか書かれていなかったのだ。
そこで開始15分前に会場に現れて写真撮影に応じた河野氏に、一段落した時を見計らって声をかけた。
――脱原発が抜けたのは何か理由があるのですか。
河野氏 (無言のまま、背を向ける)。
――政策パンフレットに入っていませんでした。(原発推進の)安倍氏に日和ったのですか。忖度をしたのですか。
河野氏 (一言も発することなく、スタッフに導かれて会場から退出)。
ここで司会者が「午後4時直前から始めますので河野大臣は一回、ここで引かせていただきます」とアナウンスすると、会場内の報道関係者から笑いの声が湧き起こった。
約1時間15分の質疑応答では、手短に答えたことから約40人が質問。同日の産経新聞は「瞬発力の高さを印象づけた」と報じたが、筆者の第一印象は「安倍前首相への忖度が際立った」というものだった。
すでに出馬会見を終えた岸田文雄・元政調会長や高市早苗・前総務大臣と同様、森友問題再調査を「必要ありません」と否定。脱原発についても「安全が確認された原発を当面は再稼働していきます。それが現実的なのだろうと思います」と変節した。隠蔽改竄が横行した安倍政権(首相)の疑惑にメスを入れず、原発推進も菅政権と同じように引き継ぐと宣言したに等しいからだ。
そこで、筆者はこんな質問をした。
「『安倍氏への忖度政権になるのではないか』という疑問から質問をします。森友再調査をしないことと原発再稼働を認めることは明らかに後退で、小泉純一郎元総理は『原発なしでも現実的に電力は不足しない』と訴えていますが、『自民党をぶっ壊す』と言った小泉氏に比べると、(古い自民党を)壊そうという気概が感じられませんが、安倍氏、麻生氏の長老支配を打ち破る考えはあるのですか」。
河野氏はこう答えた。「安倍氏、麻生氏がどうだとか、小泉純一郎氏がどうだということではなくて、河野太郎としてこの日本を引っ張ってまいりたいと思います」。
あまりに抽象的回答のため「原発再稼働は(脱原発から)後退しているのではないですか」と再質問をしたが、司会者が「1人一問でお願いします」と遮り、河野氏は変節の理由を具体的に述べることはなかった。
河野氏は偽物の脱原発派なのか
「原発ゼロ社会の実現」を全国講演行脚で訴え続ける小泉元首相は、原発稼働なしでも電力不足に陥らなかった「現実」をこう説明している。
「2013年9月、日本の原発は運転停止し、原発稼働はゼロになりました。このとき、推進論者のなかには『寒い冬、暑い夏がくれば、電気が足りなくて困る。そうすれば国民は原発の重要性を思い知るだろう』と言っている人もいました。(中略)ところがどうですか。寒い冬も、暑い夏も、東京・大阪を含めて、電力不足になったところは全国どこにもない。足りないどころか、電気が余っちゃった。(中略)13年9月から2015年9月までゼロでやってこれちゃった」。
かつて脱原発派として有名だった河野氏は今や、「原発稼働ゼロでも電力不足にならない」という現実を無視、「再稼働が必要」という虚構(妄想)を口にする原発推進論者へと転向したといえるのだ。“経産内閣”“原子力ムラ内閣”とも呼ばれた安倍氏の支援を得るために忖度したとしか見えないではないか。
総理時代に原発を推進したことへの懺悔から「経産官僚らに騙されました」と暴露する講演を始めた小泉元首相であるが、その定番ネタが「日本は原発ゼロをすでに実現した」である。
「実は、日本が『原発ゼロ』でやってこられたのはこの2年間(2013年9月から2015年9月)だけではないのです。なぜなら、2011年3月11日の福島第一原発事故以降、日本の原発はたった2基しか動いていなかった。その後2013年9月にゼロになってから2年間、2015年までゼロだった。その後、川内原発再稼働が認められて2基になった。たった2基分ならば、原発を動かさなくても、自然エネルギーなどほかのエネルギーが十分ある。実質、原発事故以降の5年以上『原発ゼロ』でも大丈夫だったということを事実が証明しているのです。この間、一度も電力不足にならなかった。江戸時代の生活にも戻っていない。この事実は重いですよ。日本は世界に先駆けて『原発ゼロ』で十分やってきているのですよ」(『黙って寝てはいられない』より)。
01年の自民党総裁選で「自民党をぶっ壊す」と訴えた小泉元首相と河野氏を重ね合わせる見方もあるが、実際は正反対。原発推進など古き自民党政治を守る“エセ改革派”というのが河野氏の実態ではないか。安倍前首相や麻生太郎財務大臣ら長老支配をぶち壊すのではなく、一丁目一番地の政策「脱原発」より総理ポストを優先したのではないか。
そこで出馬会見を終えた河野氏に向かって、「安倍忖度内閣になるのではないですか」「石破氏と組んで自民党をぶっ壊さないのですか。石破氏と組まないのですか」と大声で叫んだが、河野氏は無言のまま立ち去った。
脱原発を貫く山本太郎・れいわ新選組代表
「偽物の脱原発派なのか」という疑問が湧く一方、もう1人の対照的な政治家を思い出した。国会議員になる前から脱原発を貫いてきた山本太郎・れいわ新選組代表のことだ。
2日前の9月8日、次期総選挙に向けた野党共通政策(「原発のない脱炭素社会を追及」など6項目)の合意集会に参加した山本氏は、囲み取材で河野氏の選挙区(神奈川15区)からの出馬に含みをもたせた。野党側から神奈川15区からの出馬を要請されるかもしれないと自ら述べたのだ。
「自民党総裁選は誰がなっても本質は一緒。この地獄をつくるのに加担してきた人たちですから。そういった意味で総裁選がどうこうではないと思います。逆に総裁選で勝った人にあたりに行くこと。河野氏になったとしても無茶苦茶強いから、これは『山本太郎の政治生命を終わらせる』という意味だったら、ありかもしれません。河野氏のところから出ることを野党側から『どうですか』と提案されたりしてね(笑)」。
菅首相の神奈川2区からの出馬には否定的だったが、河野氏との激突については可能性を示唆したことから「十分検討の余地があると」と聞いてみた。
山本代表 どうですか。でも本当に(政治生命が)終わってしまいますよね。
――「強敵と戦った」ということで評価が上がるのではないですか。「本物の脱原発(山本氏)と偽物の脱原発(河野氏)の戦い」などといえば。
山本代表 (評価は)上がらないでしょう。本物の脱原発が負けるのも何かきつい話ではあります。何がどうなるのかわかりませんが・・・。
脱原発封印と森友再調査否定の河野氏の出馬で、安倍前首相にゴマをする三候補の“忖度合戦”の色合いがさらに強まった。もし山本氏が河野氏との激突を決断した場合、神奈川15区は「偽物の脱原発派(“エセ改革派”) 対 本物の脱原発派」という構図になるのは間違いない。と同時に、「古き自民党政治をぶっ壊す野党連合 対 安倍前首相ら長老支配を守る自民党」という全体像を浮き彫りにする象徴的選挙区になるのも確実だろう。
17日告示・29日投開票の総裁選は石破茂・元幹事長が不出馬の場合、団子三兄弟ならぬゴマすり三候補による“忖度合戦” と化し、誰が新総裁になっても古き自民党長老政治が維持されるという躍動感なき凡戦となるのは確実だろう。新しい政治が始まるのか否かは、準決勝の総裁選ではなく、決勝戦の総選挙で政権交代が起きるかにかかっているといえるのだ。
【ジャーナリスト/横田 一】
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