消費減税の共通政策化で山本太郎氏が野党共闘に復帰~河野太郎氏に衆院選で切り込みか
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行革担当大臣就任で、脱原発を封印した河野太郎氏
自民党総裁選で先行する河野太郎・行革担当大臣と2011年3月の福島第一原発事故後には「脱原発」で意気投合、ツーショットの写真撮影と対談もしていた山本太郎・れいわ新選組代表が9月8日に野党共闘に復帰、“敵”の大将に斬り込む役割をする可能性が出てきた。野党4党が共通政策で合意した後の囲み取材で、河野氏の選挙区(神奈川15区)からの出馬を全否定しない発言をしたからだ(9月13日の本サイト記事「“エセ改革派”河野太郎氏、『脱原発』より総理ポスト優先」で紹介)。
名前は同じ太郎で、脱原発で一致した時期もあったが、その後の足取りは対照的。福島第一原発事故の約半年後の特別対談「河野太郎(自民党前幹事長代理)×山本太郎(俳優)『原発に買われた政界と芸能界』」(11年9月30日の現代ビジネス)では、「原子力行政と東京電力のウソを告発し、干された政治家と俳優」として2人の太郎が登場。原発を推進する電力会社や経産省や自民党から成る“原子力ムラ”とともに闘う姿勢を見せ、それぞれが「脱原発」「立ち上がれ」と書いた色紙をもったツーショット写真も撮っていたのだ。
しかし7年後の18年7月、フライデーの記者がこの「脱原発」明記の色紙をもって河野氏を直撃、「この気持ちはまだ忘れていない?」と聞くと、「うん」と答えたものの、「実現はいつ?」との問いには無言のままだったというのだ。
このやり取りを冒頭で紹介した18年07月13日のフライデー、「河野太郎を直撃! かつて主張していた『脱原発』はどうなったのか 『次の総理』とおだてられ、反骨の志を捨ててしまったの?」は、政治アナリストの伊藤淳夫氏のコメント「実際に総裁選が始まったときに『脱原発』という志を表に出すのかどうか」を紹介した後、こう結んでいた。
「河野氏が総裁選に打って出れば、原発についての思いをしつこく問われるのは間違いない。そのとき、答えに窮しないためにも、いまこそ、『脱原発』を語るべきなのではないだろうか」
しかし河野氏は15年10月に行革担当大臣に抜擢されて以降、脱原発を封印、今回の総裁選出馬でも「反骨の志」を表に出すことはしなかったのだ。冒頭の本サイト記事で紹介した通り、山本氏に河野氏の選挙区(神奈川15区)からの出馬について筆者が聞いたのは「本物の脱原発派の山本氏 対 偽物の脱原発派(“エセ改革派”)の河野氏」という構図になると考えたからだ。
もし実現すれば、全国が注目する選挙区となるのは確実だが、実現しなくても山本氏が「脱原発(反骨)の志を捨てた総理ポスト優先の河野氏」などと暴露する“全国街宣行脚”をすれば、「古き自民党政治をぶっ壊す野党連合 対 安倍前首相ら長老支配を守る自民党」という総選挙の全体像を浮彫りにする役割をはたすことになることだろう。
消費税減税の野党合意で、れいわ新撰組が野党共闘に復帰
かつて脱原発で意気投合した河野氏を「変節漢」と一刀両断にできる山本氏が、野党共闘に復帰したことは政権交代の可能性を高める働きをするのは間違いない。戦闘力抜群の“斬り込み隊長”が現れたに等しいように見えるからだ。
19年の参院選で2議席を獲得して以降、山本氏率いるれいわ新選組は消費税5%減税が旗印にならない限り、野党共闘(選挙協力)には加わらないと明言してきた。しかし9月8日に合意した野党共通政策のなかに消費税減税が盛り込まれており、4野党で連携することを決めたのだ。
合意集会には4野党のトップが駆け付け、4人でガッツポーズをする写真も撮影。冒頭の挨拶では、立憲民主党の枝野幸男代表と共産党の志位和夫委員長と社民党の福島みずほ党首に続いて、マイクを握った山本氏は次のように述べた。
「私は19年の参議院選挙が終わった時から『消費税5%減税を旗印にしてほしい。ここが各党で進まないならば、選挙共闘はしない』という、ある意味、勝手ではありますが、必要と思い、『必要だ』ということを言い続けました。ありがたいことに、私たちの75倍以上の規模を持つ立憲民主党など、非常に多様な意見があるなかで取りまとめていくのは大変なことだったと思いますが、それもしっかりとかたちにしたうえで、このような、私たちが受けざるを得ないというのは何ですが、『みんなでまとまって行ける』というスタートラインに立てることができました。心より感謝をしたいと思います。
とにかく、この地獄を終わらせたいです。このコロナ禍において本当に、この1年半、どれだけ、この国に生きる人々の力をお借りしながら、本来ならば収束、もちろん根絶は無理ですけれども、コロナをコントロール下に置くということを実現できていなければならなかったのに、事実上のノーガード戦法で人の命を危険にさらしながら今も継続しています。これを一刻も早く終わらせないといけません。
そして先ほどからお話があった通り、市民連合の政策にもあります。すべて必要、至急です。何1つ、異論はありません。逆にいえば、こういった提言をしなければならない政治が存在していること自体が、本当に恥ずかしいです。政治の場にいる人間として、この国に生きる人に申し訳ない思いでいっぱいです。何よりも野党が塊になって戦っていくスタートラインを市民の皆さまにセットアップしていただいたことは、私たち野党各政党にボールが渡ったことだと思います。次の選挙でしっかりと(政権)交代をしていけることを私たちが全力でやっていく番だと思っています(以下略)」。
政権交代に向けて、急速に整いつつある野党陣営の選挙態勢
集会に参加した後、山本氏が囲み取材に応じた。
――前々から消費税減税を旗印に野党共闘ということを仰っていたため、大きな関門を超えてハードルをクリアし、これから野党共闘が一気に進むと捉えていいのでしょうか。
山本代表 そうですね。足りない、十分とはいえない、足りないということを言い出したらキリがない部分だと思います。私だけで過半数を取れる勢いがあれば、それはこだわりをもって、やるべきことをすべて、こういうかたちでやっていく進め方もあると思います。現実を考えるのならば、野党が塊にならなければ政権交代は起こりません。目標は何かというと、この地獄を終わらせるということですね。そのためにも、やはり第一歩を踏み出すものとして私たちが合意できる部分は、消費税減税です。
――小選挙区で競合する部分はかなりの部分、調整して降ろす場合もあり得るということですか。
山本代表 そもそも私たちの候補者数は少ないですから、これら全部を調整したら誰も残りません。
――ギブアンドテイクなのでしょうけれども。
山本代表 当然、残念ながら私たちは政党という立場をいただいているため、もちろん自分たちの最低限の議席確定をさせていけるようなバランスは取らないといけません。慈善活動ではないので。私たちの勢力が一定担保される、拡大されることによって与野党の対する影響は必ずありますから、それを考えるのだったら――。もちろん事前に引くところは引くというところはやっていく必要があり、もうその準備の目途もつけてはいます。
――(安倍前首相の選挙区である)山口4区を含めて、れいわが野党統一候補になるところと、降ろすところと(バーターをすると)。
山本代表 こっちが欲張るということは抑えた方がいいだろうという考えです。そうではないと、(ほかの野党の)現職を落としてしまうということが多くなってしまうと困りますので。譲れない部分もありますが、譲る部分もしっかりとつくっていきながら前に進めていこうと考えています。
――(他社)これまでの会見で、消費税5%で野党共闘が成立しなかった場合は、30人くらいはすぐに出せられる人がいることを言っていましたが、いま、そういう人たちを立てる考えはないのですか。
山本代表 以前は、「自分のお金で出たい」という人が30人くらい、いましたが、この状況になったら10人くらいになってしまうのではないでしょうか。いま、この集まりに出て、10人を(小選挙区に)ぶち当てていく話はちょっと支離滅裂というか無茶苦茶という感じもしますから、まずは今の状況のなかで(野党で)塊になっていくことについて、私たちとしても最大限の努力をします。だから、そういうこと(10人を小選挙区に出すこと)は控えるべきだと考えています。
選挙協力(選挙区調整)に現実的で前向きの姿勢を示した山本氏が、こう言って囲み取材を締めた。
「とにかくまずは(野党を)ちゃんと塊にしていけるように、私たち自身も調整できる部分は調整していくということになります」
テレビや新聞などの大メディアは連日、自民党総裁選の“実況中継”に熱心だが、次期総選挙での政権交代に向けた野党陣営の選挙態勢も急速に整いつつあるのだ。今後の与野党の攻防から目が離せない。
【ジャーナリスト/横田 一】
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